見出し画像

【週間レビューNo.303】だから上場会社のM&Aは座学ではムリなんです。

※来週は今月のリアルイベント28日(土)オンラインのみをリリースいたします。

今週の週間レビューです。

今週は8月末にリリースされた経産省の「企業買収における行動指針」をお話しています。

これはリアルイベントの文字起こしなので、口語体になっています。

同意なき買収に対する、ニトリの場合は合意しましたけれども、例えば今回のコスモと村上ファンドみたいなっていうのは、こういった状況の中で、同意なき買収に対する 取締役の対応方針を検討して考えます、賛同を得ないままTOBがあることもありますっていうところの中で、このチャートは割とよくできています。

後半の交渉っていうのは、割といろんな制約で出てきているんですけれども、一番重要というかあまり出てこないんだけども、世の中的には、一番重要なのが一番左の「買収提案の受領から取締役会への報告」までです。

買収提案を受けてからいわゆる取締役会に報告すべきというやつなんですけど、普通に考えればオーナー企業の方が分かりやすいと思うんですが、一応オーナー社長が、同業の上場オーナー者社長と、あるタイミングで、「一緒にやっていかないか」みたいな話があるわけじゃないですか。

で、それをどういったレベルまでその 社長としてホールドしとくのかっていうのが、結構悩ましい。かなり。本人の本心や会社のことを考えたり、高齢の社長だと、インサイダー規制に無頓着だったりするので。

ここはやっぱり僕の時も、一番そのタイミングで悩むのってここだったし、これなんで悩むかっていうと、どこからが交渉経緯だったかっていうのを公開買付届出書に日付入れで書かないといけないんですね。初めて提案を受けたのはどこからなのかっていうのが、ここのどこ、どの話なんですか、電話でしたものも含むんですか含まれないんですかとか、っていうところ結構出てくるわけです。

書面で来たなら確実に付議、もしくは取締役会に報告じゃないですか。ただ書面で来る場合って、だいたいもう遅いです。当たり前ですが、先方の印鑑押してあるわけじゃないですか。っていうことはもう向こうの正式な文章ですよね。こんなもんもらってから、言われても、経営企画担当取締役はそれこそアワ吹いて倒れるレベルです。

例えばオーナー社長が、こういう相談を受けてっていうのは どのレベルまでで解像度(立ち話、電話、メール、二人だけの会食など)を高くした段階までホールドしているかっていうのはすごく重要です。

こうやってゴニョゴニョってやりだすんですが、だけど実際のその提案で、すぐに取締役に上がると情報が漏れるんで、というか、騒ぐんで、さっき言った株主利益に大きく変わらない人たちが、利益争反する人たちが騒ぎだします。騒ぐというか大きな何かを言うんじゃなくて、裏工作を始めたりするんですね、だから実は見ているよりも ここの段階がかなり長い。取締役会に上げるまで3ヶ月ぐらいかかります。

基本的にFAが入る時ってこの段階なんですよ。わたしの時は最初のアテンドは3ヶ月前でした。だからこの段階でゴニョニョって言われた時に田中さん、今回FAとして入ってくんない?そしたらじゃあどうチーム組みます?って言ったら、じゃあリーガルここ使いましょうみたいなところで、まずその中で弁護士含めて5人くらいでゴニョニョってやるわけですよ。

最初はどういう話がありましたか、何時どこでどういう話しましたか、っていうのを全部メモして、この段階では先方から値段の話は一切ありません。一応100%買収でいきますみたいな、一緒にやっていきましょうみたいな、当然その事業に全部雇用をちゃんとしますみたいなところまでです。

だけど、この段階ではオーナー企業同士了解だったらもう答え出てるんですよ。

やるやるから上に上げるっていうところで オーナー企業を突っ跳ねるんだったらここまで行かないんですわ。

ここで断ってるのが大半なんですよ。昔は。

だから、取締役会の報告するまで、先方接触の時系列、論点整理、オーナー社長の気持ち、PMIの方向性を確認したうえで、FA、リーガルアドバイザーとして、正式にアドバイザリー契約締結となります。ここまで3ヶ月です。

今はこの行動指針が出た関係で、オーナー社長が嫌がったとしてもオーナーも株主じゃないですか、株主利益の尊重とか株主自身の尊重とかあるじゃないですか、だけどここに利益相反してるじゃないですか、オーナー社長って取締役会には参加するけれども発言権がないとかね。そこの運用ってすごく難しくて、ローファームが一番気にしたのがそこです。

リーガルとして、要は違法にならないような形をどうやって問うのかというところで、それは状況によっては書かないといけないんで、公平担保措置のところの文章の中に 参加はしましたけど議決権はないようにしてもともと一番には参加してませんってのは

現実的にはなかなか難しいんですよ。

直接言われたオーナー社長に会議に参加させないで、こっちで株価を決めていくっていうのは、どのくらい現実的に難しいか、多分オーナー社長の下で働いてる人はってわかると思います。 まあ、仕組みとしてはこうなんだけども、一番難しいのはここですって話をしてるんですね。 これ実際現場をやってみないとわからないことなんですね。

だから上場会社のM&Aは座学ではムリなんです。

【サロンonly】
10/10 買収提案の検討フロー
10/10 ファーストコンタクトの認識の難しさ
10/11 買収の真摯な提案とは
10/12 取締役会が買収に応じる方針を決定する場合
10/12 社外取締役の担保
10/13 DDの対応
10/13 特別委員会やメールの頻度


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?