見出し画像

吉祥寺で出会った女の子がくれた魔法

ショッピングモールで聞く子供の泣き声をうるさいと感じなくなった。いつからかそれも自然の音としてとらえるようになった。


昔、わたしはとにかく子供の声が苦手だった。

上京する前、近所に小さな子供を持つ家族が住んでいた。その家の子供が騒がしくて夜まで自室まで聞こえることがあった。わたしはもっと静かな場所に引っ越したいと内心思っていた。

外出していても、特にショッピングモールの中では子供が泣いている場面によく遭遇する。わたしはそれが嫌で店内にいるときもいつもイヤホンをしていた。

そんなわたしがある日を境にほとんど気に留めることがなくなった。
このことに気が付いたときに自分でとても驚いた。

あれほど苦手としてた子供の声をすんなりと受け入れていた自分がいたからである。

なぜそうなったのかは未だに自分でも理解できていない。しかし、思い当たる出来事がある。


とある休日、わたしが吉祥寺の井の頭公園を旅した時に、後ろから小さな女の子が走ってきた。

そのとき一緒に走っていた母親が「あの人(わたし)を追いかけてるの?」と女の子に聞いていた。

そこでわたしは、その子の遊びに付き合うことにして少し小走りで離れすぎないように橋の終点まで一緒に走った。

橋の終点まで着くと、女の子の両親も追いついてきて「娘の遊びに付き合って下さりありがとうございました」と嬉しそうにお礼を言ってくれた。

「楽しそうで何よりでしたよ」とわたしは応えた。

「楽しかった?」と女の子にしゃがんで聞いてみたが、照れてしまったのか母親の脚の裏にしがみついてしまった。

最終的にその女の子はわたしにタッチすることはなかったけれども、去り際に手を振ってこれまた嬉しそうな表情を見せてくれた。

もちろんお互いの名前も知らないし、今後もおそらく再会することはないだろう。

しかし、あの時の体験は、不思議と私の心を作り替えていくような感覚を覚えさせてくるのだった。


きっとこれがきっかけで子供の声に対する考え方が変わったのかもしれない

わたしはそう感じている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?