詩の部屋 19 (2023年1月6日投稿)

  ○ 55

猫はコーヒーを飲みながら
何か考えごとをしている
私は考えることが何もない
だから彼の様子をずっと見ている
独り言をぶつぶつ言っているのは聞こえないふり
それでも気に入らないのか黙って向こうへ行ってしまう
またひとりになったので猫の帰りを待っている

  ○ 56

すっかりやることがなくなったので
キッチンへ行ってみる
よく見ると裏へ出る勝手口がある
ドアにはホワイトボードがぶら下がっていて
上の方に書かれている小さな文字
「鍵を開けるためには何か一文字書くこと」
意味が分からないので手が動かない

  ○ 57

何も思いつかないので
ホワイトボードに「空」と書く
今の頭の中のそのまんま
すると鍵が開いて外へ出られる
そこにある履き物を履いて
庭へと向かう
たぶんどんな文字でも開いたんだろうけど

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?