詩の部屋 12 (2022年12月28日投稿)

  ○ 34

最後に残ったレタスがうっとりとした目で
私の顔をずっと見ている
恥ずかしくなって器に残ったドレッシングを
その顔へとかけるともっと美しくなって
更になまめかしく私を見る
ここにいるものは皆、自己主張が強い
そう思いながら急いでレタスを口に運ぶ

  ○ 35

詩の部屋にあるソファに座ると
言葉が何も浮かんでこない
陽が傾いてきてカラスが何羽も
鳴きながら家の上を飛んでいく
古い場面やもう会えない人の顔が見えても
それを語るにはあまりにぼやけていて
私は足元に散らばった言葉を何となく見ている

  ○ 36

詩の部屋のキッチンにある冷蔵庫を開く
中にビニールと紙に包まれた肉の塊
取り出して何枚か薄く切るたびに違う景色が浮かぶ
花の散るところ、雨が降っている川、
そして、雪の積もっている町
肉を焼くとき風景に合わせて
一枚ずつ異なる味付けにする

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