詩の部屋 9 (2022年12月23日投稿)

  ○ 25

詩の部屋の床を撫ぜてみる
古い床板の木目から
何か細かいものが湧き上がってくる
それは小さな文字のような声のような
弱々しいような力強いような
詩の部屋の愚痴なのかもっと深遠なものなのか
何もわからないままもう一度床を撫ぜる

  ○ 26

詩の部屋の隣にあるキッチンには
見たこともない道具が並んでいる
何かを切るためなのか混ぜるためなのか
みじん切りにするためなのか多面体にするためなのか
金属やガラスでできた道具の表面は美しく磨かれ
それぞれ思い思いに光を反射して
無言のおしゃべりをずっと続けている

  ○ 27

台所にあるまな板でキュウリを切る
切るたびに文字が転がり出す
アルファベット キリル文字 漢字
何の脈絡もなく現れて
床に落ちるとピリンピリンと小さな音がする
トマトも切ってレタスをちぎる
サラダを運ぶ足元で小さな音が止まらない

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