詩の部屋 22 (2023年1月10日投稿)

  ○ 64

椅子に座ってジュースを飲みながら庭木を眺める
太い木 細い木 分厚い葉 薄い葉
名前を知らないと全てを「木」と呼ぶが
それらは幹を振り上げ葉を突き出し
それぞれの違いを見せつけてくる
一つ一つにあだ名をつけようと思うと
みな、しかめっ面をして向こうを向いてしまう

  ○ 65

キッチンの勝手口から室内に戻る
猫も後ろをついてきたので
扉を開けてお先に、と手招きする
いつも通りにお礼もなく彼は入って
私も続いて入るとドアのホワイトボードに
「カギをかけて!」と一言書いてある
そこに「鍵」と書くと何かがカチリと閉まった感じがする

  ○ 66

キッチンでもう一度手を洗う
食器棚に並んだ別の柄のコップに視線がいく
うっすらと大きな花と大きな犬が透けて見える
犬は花の下に寝転がって鼻唄を歌っている
聞いたことのない曲を次々に歌って
私が手に取っているのもおかまいなし
コップに水を入れると鼻唄が心持ち大きくなる

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