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「創作の極意と掟」筒井康隆/著 読書感想

 筒井康隆が記した創作の極意と掟。『時をかける少女』で有名な著者だが、純文学からエンタメ、果てはライトノベルまで書いてのける大作家。
 規定の枠組みにとらわれず小説の面白さを追求する、作家としての在り方が実にカッコイイ。憧れの存在だ。
 著者いわく小説作法の類ではなく、エッセイ。筒井康隆氏本人の遺言であり囲炉裏端の繰り言であるらしい。
 筒井康隆ファンをはじめ、著名な作品群を引用して解説されるので、読書家のかたも楽しく読めるのではないだろうか。

 タイトルの「創作」とは「小説」のこと。つまり小説書きに向けた読み物であって、内容は興味深いものであった。
 文章表現において重要であると考える31項目からなっている。
 項目によっては同感できる部分もあったし、そうではなかった項目もあった。しかしそのどれもが、半世紀以上小説家として、小説のことを考え抜いたゆえの金言である。

 まだ自分には理解できない部分も、いずれ理解できる日が来るのだろうか。それはわからないが、素直に、自分の中で理解できた項目を実践していこうと感じた。
 本書は小説の書き方、的なものとは読み味がまるで違う。と、思う。
 思う。というのも、実際のところ小説の書き方なる本を見下している節があって読まない。世間で評価されている小説作品を読んで分析したほうが、血肉になると思っていたけれど、この本を読んで、考えを改める必要があるかもしれないと思った。反省したい。

 文章表現の技術的なことが書かれている項目もあるが、項目によっては「薬物」「電話」「実験」のように、技術とは関係ないことも書かれている。
 やはり著者がエッセイと主張している所以だろう。指南書ではない。
 しかしそこから得られる情報は、指南書では決して書かれることのない、筒井康隆の流儀のようなものを感じられ、物書きとしての思考法のようなものが得られた。

 ずばり著者のメッセージを、僕はこう受け止めた。
「小説は自由。作法なんてそこそこでよかろう。ただし面白さには作法というか、条件があって、その条件は多岐にわたる。それら条件を自らの掟として定義しておいたほうが良い。だから、おれが思う条件、特に指南書ではあまり語られないことをここに記す。ところでお前らは、ありふれた小説を書きたいのか? おれは違うから色々書いた。お前らにも面白い小説を書いてほしいし、未知の可能性を見出してほしい。だからおれは本書を書いた。あと、このエッセイの内容が正しいとは限らない。ほな、おもろいもん頑張ってかけな。小説書きって、ええもんやで」
 と。

 恐れ多くも、著者に背中をポンと押してもらった感覚にもなれて、物書き諸氏におすすめしたい一冊。
 僕は電子書籍で読んだ。項目が分かれているので隙間時間に細々読めるのがグッドでした。

 本の購入先リンクは置かず、刊行記念インタビューYouTubeリンクでも置いておきます。

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