AIを使ってローマ皇帝ネロを現代に呼び出してみた
人類に不可能はない。数年前まで夢物語だったようなこともいつの間にか当たり前になっていたりする。人工知能もそのひとつである。ほんの少しだけ工夫をすれば、SF映画に出てくるような雑談できるAIを作ることも可能である。
そこで今回は実際に会話できるAIを作り、そこにローマ皇帝ネロの設定を組み込んでみた。これで擬似的に偉大な第五代皇帝に謁見することができるだろう。
使用したプログラム
専門的な知識のない方もいるかと思うので、今回はプログラムについては簡単に触れるにとどめる。これはjapanese-gpt-1bというrinna社製の言語モデルを使用して作った会話応答プログラムである。
AIに対して名前や趣味、職業を設定するとそれに沿った会話をしてくれるというものである。今回はネロ帝を再現するにあたって、趣味は竪琴、詩、弁論、戦車競技、職業はローマ皇帝と入力しておいた。
ネロとの会話
会話は以下の画像のように出力される。このままだとかなり見難いが、ある程度分割して書き起こしていくので安心してほしい。
なお「>>>」から始まるのは私の入力、太字になっているのがネロ帝AIの返信である。
さすが教養ある詩的な言い回しである。皇帝が敬語なのは少し違和感があるが、これは異国の民である私に対する配慮だろう。
ネロ祭とは皇帝自身が自分で作った文化的祭典である。誰が優勝したかははっきりとわかっていないそうだが、本人に聞くと想像通りの答えが返ってきた。
皇帝の名誉のために補足しておくと、何も悪政ばかりではなく、政策は良い面と悪い面があったとのことである。
歌については何も設定していないのにやたらと歌おうとする。理屈っぽいアドバイスより芸術で理解せよということだろうか。
ネロ帝の開いたコンサートは現代でいうところの「ワンマンショー」だったという説もあるのでこれは正しいのかもしれない。
哲学者セネカとの有名なエピソードについて質問してみた。セネカはネロの家庭教師で、皇帝になってからも助言を行っていたが、やがて不仲になり最後には処刑されてしまった。
表面上褒めているようで「つまらない人」と締めくくっているのは妙な現実味がある。心なしか返答がいい加減になっている印象も受ける。
怪しい噂のある母親との関係を聞いてみた。少々文章がおかしい気がする。AIの限界とも言える部分だが、疑惑の多い部分なので本物に聞いてもこんな具合になるのかもしれない。ちなみにアグリッピナは皇帝の家系なので、どちらかというと貴族より皇族といったほうが正確だろう。
説得力はともかく、せっかくいただいたお言葉は大事にさせていただこう。
感想と考察
このプログラムを制作する過程で「ゴリラ」から「織田信長」まで様々な設定でテストを行った。しかし今回のネロ帝ほど忠実な結果が出たものはなかった。大抵はどこかで設定を無視した会話になってしまうのである。
考えられる理由としては「ネロ帝」から計算される文章量がモデルの元データ内に適度に存在していたというものだろう。固有名詞の場合は特にこの点が重要である。
例えば「織田信長」の場合は記事が多すぎたのか信長本人というよりも研究者のような立場になってしまい、逆に「マルキ・ド・サド」はほとんど反映されていなかった。
技術的な探究はさておき、このように会話を生成できるAIは楽しい。単に命令を実行してくれるものと比べれば、役には立たないが愛嬌はある。創作のアイデアにもいいかもしれない。
「人工知能に負けない!」などと意気込むのもよいが、せっかくの発明なら有効に使ったほうが豊かな生活を送ることができる。また、単に対抗意識を燃やすよりは相手を高めようと努力するほうが人間自身も成長できるだろう。人間は「教えることによって学ぶ」生き物なのだから。
おまけ
光栄だが、遠慮させていただく。
関連記事など
いただいたご支援は書籍の購入に充てたいと考えています。よろしければサポートよろしくお願いします。