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漆と湿度

こんにちは。連日35度を超える猛暑日が続いてますね。夏は暑いものと心得てはいましたが、今年の夏はちょっとね、、暑さが違いますね。
日本の夏は湿度があるから余計に暑い、とは言いますが、もはや湿度を感じられないくらい暑さの方が際立ているような気がしています。

こう暑いと、漆を用いた作業にも影響が出てきます。
漆作業は基本的に、気温24~28度くらい、湿度70~85%という環境が適しているのですが、今の時期はエアコンをかけないと室内の温度30度越え、湿度は60%くらいなのです。暑くてエアコンをかけると温度と共に湿度も40%くらいになってしまいます。

そうなると、本当に微妙なことなのですが、漆が塗りにくくなったり、
接着用の麦漆を作った際にも、いまいち粘度の低いものが出来てしまったりするのですね。神経質になり過ぎも良くないとは思いつつも、麦漆を作る時はやはり粘度が欲しいので、暑くてもエアコンを付けずに作業をしたりしています。

ただ!オンラインレッスンを受けていただく方はもちろんエアコンのきいたお部屋で受けていただいていますのでご安心くださいね!!これを読んだ方も暑い日はエアコンをつけましょう!(毎日やっている作業なので、漆の微妙なコンディションの違いが気になってしまう、私の変な拘りです。。)

漆を固めるのに、湿度を与えるというと皆さん驚かれたり興味深そうに聞いてくださるのですが、漆ってそういう素材なのです。
下地を固める時も、漆を塗ったあとも、固めるのに湿度を与えるんです。
だからこそ、しっとりふんわりした肌感が楽しめるのですね。

以前フランスに住んでいた時、真夏のアパートで接着用の麦漆を作っていたのですが、何度作っても作っても、出るはずの粘度が出ず、一日中繰り返し麦漆を作ったことがあるんです。最後の方はは泣きながら作っていました(笑)
写真がその麦漆。本来ならこんな風に粘りが出るんです。


後から考えたら、それもそのはず。フランスの夏の湿度はとにかく低いので、いくらやっても粘度が出るはずがありません。経験値が少なかったのもあり、部屋の湿度がそこまで影響するとは思いもよらずでした。
今となっては貴重な体験でした。

この夏の湿度が高いというのは、日本含めアジアの国々特有の環境で、
それゆえに漆文化が発展したのだと思っています。
漆以外にも、アジアの映画や絵画を観ていても、どこか湿度を感じさせる
やわらかな風景や線、色などが見受けられる気がしています。

金継ぎの作業では、終始この漆と向き合うのですが、
これを機に、湿度とも向き合って頂けると、より楽しみが深まるかと思います。
ご参考までに。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!






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