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乳歯のむし歯

今週は乳歯のむし歯についてご紹介します。
永久歯はお母さんのお腹の中の胎児の頃から作られ始め5年以上もの長い年月をかけて出来上がったうえでようやく生え始めてきます。一方、乳歯は永久歯へのつなぎ役として胎児期から乳児期(1歳頃)の短期間で作られます。そのため、歯の外側のエナメル質も内側の象牙質も永久歯の半分程度の厚さしかありません。
さらに、成長に伴って変化する噛み合わせに対応できるように永久歯よりも軟らかく擦り減りやすい構造になっています。この様な事情から乳歯はむし歯になりやすかったり、歯が欠けたりしやすくなっています。
また、乳歯はむし歯になりやすいだけではありません。エナメル質も象牙質も薄いためむし歯になってしまうと永久歯よりも歯の神経(歯髄)にむし歯が達しやすいという特徴があります。乳歯の期間は歯科医院で歯ブラシ指導を受けて正しい歯磨きを行えるようにして、またご自宅などでも保護者の方がしっかりと歯ブラシのチェックをしてむし歯にならないように気を付けてあげてください。
次に、乳歯はむし歯になりやすく、進行しやすいですが、乳歯のむし歯は「乳歯だし、生え替るから大丈夫」と思われている保護者の方はいらっしゃいませんか?
むし歯の大きさやむし歯のできた時期によっては乳歯の下で育つ永久歯の形成不全を引き起こしてしまう原因になることがあります。
また、乳歯のむし歯のある口腔内環境に永久歯が生えてくると、生えてきた永久歯もむし歯になりやすくなってしまいます。特に生えたての永久歯は永久歯といえどもむし歯になりやすいのが実情です。
さらに、むし歯でよく噛めなかったり、発音しにくかったりすると食べる、話すという重要な機能の発達の妨げになってしまうおそれもあります。
乳歯は永久歯が正しい位置に生えるように導く先導役となるので、早期に乳歯を失った場合、永久歯の歯並びにも影響が出てきてしまうおそれがあります。
むし歯の治療で神経を抜く治療がありますが、乳歯の神経を抜いても永久歯とは別の神経なので乳歯だけを治療できるのでご安心ください。
それでも、むし歯になってしまう前に予防する、つまりむし歯にならせないことが最善の策です。むし歯は家族から感染してしまうことが多いので、小さなお子様の内から、ご家族で定期的な歯科健診を受診してむし歯の無い口腔内環境を維持できるように努めていきましょう。
最後に乳歯のむし歯の治療についてご紹介します。
乳歯のむし歯は進行が速く、歯髄へも到達しやすいと先にご紹介しました。乳歯でも大きな穴が開いたり、大きく欠けたり、あるいは神経を取らなければならないようなむし歯になってしまったら被せ物を被せる治療を行います。永久歯でも同じような治療を行いますが、乳歯の場合は「乳歯冠」という金属の被せ物で削った歯全体を覆うことがあります。
乳歯のむし歯は進行しやすいわりに痛みを感じにくく、痛みを感じた時にはむし歯が歯髄に達していて神経を取らなければならないことがあります。神経を取ってしまった歯は神経の残っている歯と比べると強度が弱く割れやすくなってしまうため、乳歯冠で歯全体を覆うことで割れるのを予防します。また、歯全体を覆うことで再度むし歯になる可能性が減り、取れてしまっても付け直しがしやすくなります。
この乳歯冠ですが、歯全体を覆うので永久歯への生え替わりに影響しないか?という保護者の方のご心配があるそうですが、永久歯への影響はありません。乳歯冠は噛む部分にかぶせてあるだけなので、成長に伴い乳歯の根が吸収されると自然に抜けます。
ただし、生え替わるまではかかりつけ歯科医院で乳歯の下の永久歯の状態を定期的にチェックしてもらって、生え替わりのトラブルを未然に防ぐようにしましょう。
乳歯冠は永久歯の被せ物と異なってできるだけ歯を削らずにあらかじめ作られた被せ物の中からその子の乳歯に合った物を選んで調整します。型取りが不要なので、なかなかじっとしていられない小さなお子様でも治療が受けやすくなっています。
お子様が歯を痛がったらまずは歯科医院を受診してください。ただ、できればむし歯になる前から定期的に歯科健診を受けて、万が一むし歯になってしまっても虫歯が進行する前に早期発見、早期治療が可能な生活スタイルを推奨します。

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