見出し画像

Spotify、AppleMusic、AmazonMusicを比較(音声サービス)

11/1のAmazonMusic Primeの刷新の際「聴ける楽曲数が200万曲から1億曲に!」と同時にフィーチャーされていたのがポッドキャストの充実だった。Spotifyのポッドキャスト番組が好調なのを横目に見てきたAmazonMusicがこれもやっとかないとと急いで整備した感じ?でもSpotifyは音声サービスはポッドキャストだけじゃなくて既にオーディオブックまで触手を伸ばしているよう。とはいえ、オーディオブックは(ナレーターなどの制作費が載るので)未だ価格が電子書籍や紙の書籍より高い価格で販売されているし、細部の諸々がまだクリアになってないのだろう、Spotifyで聴き放題に入ってるのではなく、ポッドキャストの番組でオーディオブックを紹介するチャンネルがあって、オーディオブックを推してるという状況。



作品フルで聴けるオーディオブックは全て、青空文庫に入ってるパブリック・ドメインの作品のみ。パブリック・ドメインの小説を人気声優やナレーターが朗読している音源を集めたプレイリストなどがある。


ポッドキャストはAppleの場合AppleMusic以前の、iTunes Storeの頃から既にiTunes Storeを通じて無料のポッドキャスト、有料ポッドキャスト、ビデオポッドキャスト(無料/有料)を配信していた。当時は有料版の方は音声、映像共に苦戦している様子だった。ちなみに私はその当時無料版のビデオ・ポッドキャストを不定期配信していたのだが(主に来日アーティストのオフショット的なネタ)、映像の権利問題が複雑だった当時はビデオポッドキャストに手を出すエンタメ系の人が少なく、競合が見当たらなかったせいもあって配信すると無料版ビデオポッドキャスト・チャートでiTunes Storeのトップ10にすぐに入るようになり、最高位は7位だった(UKインディー・ロック・バンドThe Viewのオフショットを数分撮影した回)。

音声版の無料ポッドキャストは当時からラジオ番組の制作が一強という状態だったが、00年代はまだオンデマンド視聴というのがそれほど浸透していなかったのもあって、一部のマニアがダウンロード視聴するに留まっていた。そこから段々と、動画配信などを通じてオンデマンド視聴が浸透してきて、ラジオの楽しみ方がオンデマンドに広がったのと同時に、ストリーミング配信サービスという、ダウンロードの必要性もなくストリーミングでオンデマンド視聴するポッドキャストのシェアが拡大したようだ。

しかし私があんまり音声メディアに親しんでいないせいか、Spotifyがそんなにポッドキャストやオーディオブックなどの音声メディアに力を入れているとは知らなかった。Appleはそれこそ、iTunes Storeで本を売り始めた当時からいち早く、オーディオブックの普及に尽力してきていたのに、今2022年時点ではAppleMusic、iTunesStore、AppleBooks、AppleNewsといった手持ちのインフラ(販路)をうまく活かしきれていないように見える。

得に音声メディアの需要は日米の比較だけでも随分違っていて、米国のオーディオブック需要は車通勤が主流の米国で通勤中の読書に朗読を聞くというシンプルな形態の「聴く読書」の需要があった。その結果、作家たちが新作の出版で書店でイベントを開く際には、日本ならサイン会となるところだが、米国では朗読会になることが多い。著者本人が新作を朗読して、引用箇所について話す講演会的なパフォーマンスで、朗読が上手い作家の朗読会は人気があるという。

なおかつ、元々米国にはスポークン・ワードという、楽曲と一緒に演説やメッセージを音源にしてリリースする文化が70年代には既にあった。そしてポエトリー・リーディングという、詩の朗読もひとつの音声表現として文化が確立されている。ラップとの近接ジャンルと言えるポエトリー・リーディングは、ライブハウスでもよくライブが開催されていて、身体表現まで入ったパフォーマンス全体で「ポエトリー・リーディング」として構成されたりする。

00年代にはルー・リードがエドガー・アラン・ポーの詩をモチーフにアルバム制作をして、ハリウッドの個性派俳優などが朗読で参加していたりするのだが、それもポエトリー・リーディングというスタイルを音声メディア化したひとつの形と言えたと思う。振り返って考えると現在の形まで進化したオーディオブックに近いスタイルなので、ルー・リードの千里眼には毎度毎度畏れ入る。

しかし日本の場合はどちらかというと声優の起用などで人気が高まり、声優ファンなどの間で需要が広がっている様子だ。ニワトリタマゴな話になるが、活字作品をどう表現するか、それとも声を職業にする人たちにとって活字作品が素材となっているのか、それによって制作のコンセプトも変わってくるはずだが日本では声優推しのファン層が他国と比較すると厚いのでその層にアピールするものは今後も増えていくと予測できる。それとやはり根強いラジオファンの需要。海外ではラップの近接ジャンルとしてのポエトリー・リーディングがあると先述したが日本にも落語を聴く文化がある。古くはカセットテープや、その後はCDで、落語をフィジカルで購入する層は一定数いたし、そうした音声メディアに慣れ親しんだ層はラジオとの親和性も高い。そこが日本のポッドキャストやオーディオブックなどの音声サービスを支えていくシェアだと思うが、Appleが手持ちのインフラをどう活かしていくのかに注目していきたい。

今日の1曲


今日のパンが食べられます。