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映画化された伊坂幸太郎「チルドレン」

坂口憲二さんが電撃復帰というニュースを見て、この作品を思い出した。坂口憲二さんはクールなイメージの役が多かったけど、実は善良そうな人や人畜無害そうな人の役がとても上手い俳優さんで、私が好きな彼が演じた役はI.W.G.P.の山井以外は善良な人の役ばかりだ。


その中でも特に良かった、ハマり役だと思ったのが伊坂幸太郎原作の「チルドレン」の映画化作品だった。私はWOWOWでドラマとして放送されたのを観たことがある。

最初にドラマを観て、それから何年も経って原作の「チルドレン」、そして続編の「サブマリン」を読んだ。



遊び半分で非行に走り、家裁に来た途端に、「親が悪い。親の愛がない」と言い出す子も中にはいた。ただ、正直なところ、僕はそういう子供たちについては楽観視している。そもそも彼らは一人きりでいる時は問題がなくとも、集団になると歪むのだ。陣内さんは、「子供のことを英語でチャイルドと言うけれど、複数になるとチャイルズじゃなくて、チルドレンだろ。別物になるんだよ」とよく言った。そういう性質なのだ、と。

「「チルドレン」伊坂幸太郎

この一節を読んだ時に「あ、WOWOWで観たドラマの原作だ」と気付いた。ドラマ視聴当時は原作者が誰だとか、チェックしてても結構忘れてしまう。でもこの、大森南朋さん演じる陣内のセリフは心に残っていた。

「チルドレン」も「サブマリン」も、物語の主軸は適当そうに見えてちゃんとしてる家裁調査官の陣内だが、物語の語り手はその同僚というか部下の武藤であり、武藤視点で語られて行く。「破天荒な主人公とそれに振り回されるちょっとダメな若手」みたいなステレオティピカルな設定ではなく、適当そうに見える陣内さんも続編の「サブマリン」では昇進試験に合格して出世してるし、武藤も元々しっかりしてない若手でもなく、ちゃんとしててなおかつ適当そうな陣内さんにダメ出しもする。言うべきことはきちんと言うし、非行少年たちに向き合う姿勢も独り善がりなところがなく、好感が持てる。

家裁送致される非行少年たちと、彼らに向き合う家裁調査官たちのやりとりはユーモアを交えて、だけど大人の私たちに投げかけるべき疑問はどんどん投げかけられて行く、そんな小説だった。

映画「チルドレン」で武藤を演じているのは坂口憲二さんだ。観た当時は原作を知らないまま観ていたけど、原作を読んでみると武藤という登場人物に坂口憲二さんがどれだけピッタリとハマっていたか実感した。見直したいんだけどどこからも配信されていない。WOWOWオンデマンドでも観られない、残念ながら。WOWOWさん配信してください。

「チルドレン」は短編集なのだが続編の「サブマリン」は長編の1冊で、「サブマリン」は伊坂幸太郎作品の中でも私が好きなトップ3には入る。是非、坂口憲二さんと大森南朋さんで続編の「サブマリン」も映画化してほしい。

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