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通訳者を最大限に活用するコツ

今日は、現在、あるいは将来通訳者を活用される際に、お客様となる皆様が最大のリターンを得る(=通訳者が介在する会議を成功に終わらせる)ための記事を書きます。

私があるエージェントと契約を結び、会議通訳の仕事を始めてから11年ほどが経ちます。その前は12年、社内通訳者・翻訳者として、小売、IT、金融、自動車業界等で稼働していました。

合算20年強、通訳という仕事を行ってきて、大変整った環境でお仕事をさせていただき、そのおかげでパフォーマンスが150%になったお仕事、逆に諸々の理由でほとんどお役に立つことが難しかったケース、色々とございました。通訳料金は決して安くはありません。エージェントによって多少の差はあるかもしれませんが、例えば半日(4時間)のお仕事でもエージェントの手数料を含めて、5万円以上するケースも多々あるはずです。

少し前に、私は通訳者にかけてAQ(逆境指数)に関する投稿をしました。その中で通訳者はいちいち逆境に心が折れていては務まらないと申し上げました。しかし、逆境にあった通訳者のパフォーマンスは確実に落ちますし、通訳者がうまく機能しないことによるビジネスへの負の影響を感じた時に、私は大変歯がゆい思いをします

そこで、今日は通訳者を使う立場の皆様に向けて、通訳者を使い倒すための主なポイントのみをお伝えします。また、この記事は、これから社内通訳者として稼働し始める方にも役に立つ内容になることを願って書きます。

【会議の想定条件】(ありがちなパターン)
社内で10人ほど(半数が英語話者)が集まって会議を1.5時間(うち休憩10分)行い、少し専門的な内容を話すために、外部の通訳者を単発で1名雇います。英語から日本語は逐次通訳(話し手が区切って通訳者と交互に話す)、日本語から英語はパナガイドという簡易同時通訳機器を使うものとします。参加者の中には遠隔からウェブ会議で参加する人も含まれます。

【通訳者を手配する時におススメのアクション】
通訳者の集合時間を会議開始30分前に設定する
電車が遅れても遅刻する通訳者は少ないはずですが、バッファーを見ておいた方が安全ですし、挨拶や名刺交換をしたり、通訳者から質問を受けたりする余裕もできます。逆に30分より前に集合させると、通訳者の緊張が切れたり、拘束時間が長くなるため無駄が生じるリスクが生じます。

【会議を行う1週間前~3日前までに行うおススメのアクション】

① 通訳者に会議の情報・資料を共有
参加者リスト(役職や部署名、大勢の場合、メインスピーカーに〇がついていると通訳者は深堀りしてその方々のプロフィールを調べられます)
会議の目的と最終的に達成したい姿(目的だけでも分れば、通訳者は話の展開を予測しやすくなり、言い淀みが減ります)
会議の議題(アジェンダ)(各項目の分数目安、休憩タイミングも記載)
プレゼン資料(片方の言語だけでも良いですが、両言語あれば尚可)
・プレゼン資料のスクリプト(読み上げる場合、通常の話し方やペースと異なるため、通訳者は同じスクリプトを持っていないと情報抜けのリスク大)
想定される論点(特に参加者の利害が衝突するポイント等)

ベストな音声環境を確保する
・会場が広ければ、参加者がマイクで発言できるように、十分なマイクの本数を準備
横長の机で椅子と椅子の間に距離があり、マイク無の場合、通訳者を真ん中に置いても端に座っている参加者の声が伝わらないリスクが大きくなります。特にマイクなし、アンプなしで同時通訳をするのは困難を極めます。
通訳者分のマイクも確保しておく(通訳者が逐次通訳のメモを取れるよう、ハンドマイクの場合、マイクスタンドも準備。ピンマイクも可。

通訳者に対応する担当者と会議の準備を行う担当者を別に用意する
通訳者を迎えに行ったり、お手洗いの場所を教えたり、質問に応えることも想定すると、例えばプロジェクターの準備をしたり、電話会議の設定を行ったり、参加者からの質問に応えたりしながら回すのは至難の業です。

【会議が始まる前(当日)に行うことがお勧めなアクション】

パナガイドが充電されているかチェック
通訳者が通訳をしている最中に、参加者が「電池が切れた」と司会者や通訳者に話しかけ、会議が中断することを避けるためにおススメです。

通訳者をメインスピーカー(or司会者)の隣か視野の範囲に配置し、通訳者に簡単な席次表を共有する。通訳者がメモを取れるスペースも用意する。

通訳者をメインスピーカーに紹介し、1分ほど会話をさせる
メインスピーカーがノンネイティブの英語話者である場合など、通訳者が話者の特徴をつかむのに1分ほどは必要と思われます。

【会議が始まった後に行うことがお勧めなアクション】
司会者が会議を始める際参加者に少しずつ切って簡潔に普段よりゆっくりはっきりと発言するよう注意を促す

通訳が不要な箇所が出てきた場合、「ここからは不要、ここから通訳が必要だからメモを取るように」と通訳者に都度指示を出す
たまに英語だけで行ったり来たりで会話が完結する場面もあり、数分会話が続いた後に突然通訳者にふられても通訳者はどこから通訳すればよいか判断ができず、結果「最初から話して下さい」と会議が中断することになります。

敢えて通訳してほしくない会話は始める前に通訳者に「ここからは訳さないでいい」と指示を出すか、そのような会話は会議では避ける
通訳者は社内事情が分からないため、よほどわかりやすく相手を罵倒するなどしない限り、訳してまずいことなどは知る由がありません。また本来訳されてはまずい会話は会議の外で行うのが理想です。日本語が少しでもわかる、あるいは勘の良い英語話者に不信感を与えるリスクがあるからです。

以上、本当に基礎的なポイントのみまとめた投稿となったため、正直沢山抜けがあるかと思います。疑問があれば、ぜひ通訳会社、通訳エージェントの営業やコーディネーターにお訊きになってみてください。また、すべてを実行に移すことがいろんな事情で難しいことがあるかもしれません。

それでも通訳者に難しい条件を飲んでもらいたい場合は、「ベストエフォートで」と伝えてあげてください。通訳業界の「ベストエフォート」とは「今回は条件を整えることが難しいので、すべてを完璧に伝えなくてもよいので、できる範囲で頑張って下さいね」という意味合いです。「ベストエフォート」は私も大好物です(笑)

しかし、「ベストエフォート」という名の妥協を許さないためにも、通訳者にしっかりと仕事をしてもらうためにも、やはり出来るだけの条件を整えられることをお勧めして、この記事を締めくくります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




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