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頭の中に箱を作る作業

通訳をしていると、専門用語を覚えるの大変ですよね?とよく訊かれます。
確かに、例えば医療関連、化学関連の用語には音節が多い言葉が多いため、発音しにくかったり、頭に入りにくかったりすることもあります。

しかし、通訳の成否は、一つ一つの言葉を暗記する作業でなく、話し手のロジックを理解するための頑丈かつスケーラブルな箱をいかに短時間で準備できるかにかかっていると思います。その箱を可視化するために、私はアンチョコを作る際に、表やツリー状のチャートを作成します。

具体的には、単語帳を作成する際は、エクセル表や紙を用います。アイウエオ順ではなく、企業の場合、セグメント(事業)名を一番左に書いて、その隣に製品名、サービス名を記載、その隣に特徴やキーワード(市場のホットワード)等を記しておきます。器用な通訳者の中には、マインドマップを作っている方もいらっしゃいます。

また、アンチョコには、会議中に追加的な用語を耳にした時のために、余白も設けておきます。聞いた瞬間、どの余白にそのワードを書き込めばよいかが判れば、だいぶ話が理解できている証拠とも言えます。
もしそのワードが所属する場所がわからない場合、欄外に書いておいて、時間ができた際にそれをまた既存の箱と紐づける作業を行います。

今週は半導体関連の会議が多かったので、少し緊張気味でした。半導体は電気を半分通す物質の総称で、製造工程も長く、材料も製造装置も用途も様々なので、準備すべき箱がやたらと大きく、今までとらえどころがなく苦手な分野の一つでした。が、なせばなる!今やらなきゃいつやるの?ということで、今回本腰を入れて、初心者向けの書籍で勉強しなおしました。

以下の写真にある本は大変わかりやすく、箱を作る作業はある程度成功したような気がしています。実際、お客様のお話を聞いているときに、今話しているのは製造工程のここの部分だとか、素材の違いの話をされているとか、話の骨組みが手に取るように理解でき、情報の吸収率が以前よりも向上しているのを実感しました。

一つ一つの言葉に振り回されることなく、まずこの箱作りを行うことは、これからも継続していきます。

このアプローチは、私が呼ぶところの、通訳のミニマリズムに根ざしています。ミニマリズム=さぼるということでなく、この箱作りは、話の本質を理解する作業に他ならないというのが、今日の結論です。

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