オィディプスとアンジェラ Ⅴ
港に着き 船頭を雇い最初の島へと向かう船中にてディプは再び微睡む
スフィンクス ディプ目覚めよ
ディプ 夢の裡で私を呼ぶのは誰じゃ?
スフ 私だ
ディプ おお 君か・・・しかし私がまた呼んだのか?
スフ いや 君は私を呼んではいない
ディプ と言うと・・・君の意志で逢いに来たのか?
スフ そう その通り 私の立場をもう一度誤解無きよう説明する
必要があるように想われて・・・来てしまった
ディプ それはそれは御丁寧なことだ・・・ありがとう
スフ 君もまた噂で私が旅人を死に至らしめたと思っているだろうが
・・・ほんとうは違う・・・迂回を選んだ旅人には何もしなか
ったし 謎を解けぬままに道を進もうとした数人の旅人を仕方
なく・・・・・・私に課されたことは謎を解かれて一度姿を隠
す必要があったのだ
ディプ わかりにくい論理だな・・・ほんとうに必要なこととは・・・
<神話>になること・・・違うか?
スフ さすがは知性の王だな その通りだ もう少し丁寧に述べるなら
ば・・・私のような<神人>は死して初めて永遠のいのちを与
えられる存在なのだ
<神話>になって初めてほんとうの不死を獲得することになる
のだ 故に 今の今 私は<神霊>的な存在となり これより
以後「門」を守る守護霊となるのだ
私がそのようになれるきっかけを与えてくれた君にそのことを
伝えておきたかった・・・つまり感謝の気持ちを君に・・・
それにしても 君の行為は傑出している すべての人間の営みを
コケにするそれ以上のものだ・・・しかし君はそれが目的では
ない・・・なんとその負い目を逆手にとって生きようというの
だ・・・これはほんとうに拍手喝采だ
私は君が好きになった
王よ 何もしてやれぬがいつもお前を見守っている
だから思う存分生きろ! 生ききるのだ!
ディプはスフィンクスの最後の言葉を噛みしめながら・・・夢視
の渚に辿り着いた 波の音と光の陰影が谺し島々の境を進んでい
いくのがわかった
Ⅵに続く
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