長編小説 『蓮 月』 終章
菊月十八日、お昼過ぎ二人は北山の唯の家の食卓で、静一が買って来た弁当を食べ始めていた。手毬寿司に季節の野菜の酢の物・煮物・天麩羅等が入った弁当は色彩が豊かで、唯を喜ばせた。 昨日に届いた和紙(五・七判152×212糎)は、重しをつけて平面に延ばされていた。
又静一の月が描き易いように、薄く蓮の華の下絵も描かれていた。
「用意万端だね・・・」「はい、個展の作品も全て出来上がっているし、昨日は時間を持て余しまして困りましたわ」「二時から始めて六時までに終わるようにしましょうか?