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食糧危機について真剣に考えてみる

当社・伊豆川飼料株式会社は飼料や肥料を作る会社です。仕入れ先やお客さんは「食べるもの」に関わる業界がほとんどで、食にまつわる話を色々聞くことが多々あります。最近新聞やニュースなどで時々耳にするものの、あまり実感のない「食糧危機」について、ちょっと真剣に考えたいと思います。

食糧危機とは?

まず、世界的に食糧が足りていないという現状はご存知でしょうか。

紛争、経済ショック、気候危機、そして肥料の価格高騰が重なり、かつてないほどの前例のない食料危機を引き起こしています。世界では最大7億8300万人の人びとが飢餓に苦しんでいます。

国連WFP

日本に暮らしていると「食べ物がない」ということで困っている話を聞くことはあまりないと思いますが、世界(特に途上国)では食料不足に直面している方が多くいます。2023年の世界人口は約80億人と言われているので人類の10%弱が食料不足の危機にあります。

更には世界の人口は途上国を中心に2050年には97億人まで増えると推定されており、この先の未来では食糧危機はもっと深刻になることが考えられます。

実は今現在も、食料確保にまつわる世界的な動きが活発で、インドではコメの輸出を制限したり、中国が世界中から飼料原料を買い集めたりしています。

食糧危機の原因

ではなぜ食糧危機が起こるのでしょうか。原因は沢山あります。

紛争は依然として飢餓の最大の要因で、世界の飢餓に苦しむ人びとの約70%は戦争や暴力の影響を受けた地域に住んでいます。ウクライナでの危機は紛争がいかに飢餓を引き起こし、避難民を発生させ、収入源を断ってしまうかということを示しました。

気候危機は世界的な飢餓の急増の要因の一つです。気候ショックは命を奪い、作物や生活を破壊し、人びとが食べ物を確保するのを困難にします。世界が気候危機に対する緊急の行動を取らなければ、飢餓を止めることはできません。

国連WFP

なかなか個人の力だけでは解決するのが難しそうな要因です。

日本における食糧問題

日本にいると食糧危機をあまり実感しないのはなぜでしょうか。令和4年度の日本の食料自給率はカロリーベースで38%です。先進国の中では低い割合です。国土が狭かったり、農業従事者の減少などにより、国内で沢山の食べ物を作ることができないので、半分以上の食料を海外からの輸入で補っているということです。今の世界ではお金があれば海外から食料を買うことができて食料が足りないという状況はなくなります。

農林水産省より
農林水産省より

我々伊豆川飼料は飼料の会社なので、普段みなさんが食べている肉類を生産している畜産業の話がとても身近です。畜産物の自給率は令和3年度統計では牛肉45%、豚肉49%、鶏肉65%、鶏卵96%、牛乳・乳製品63%と思ったよりも高く感るかも知れません。しかし、畜産物はエサ(飼料)がないと育ちません。そのエサはどこから持ってきているかというと、国内で生産されている飼料は26%、残りはこれも海外からの輸入です。エサの輸入ができなかったとして計算すると牛肉12%、豚肉6%、鶏肉8%、鶏卵13%、牛乳・乳製品27%と激減してしまいます。(飼料の自給率は令和3年統計では25%だそうです)

農林水産省より

お米や野菜も自給率はとても高いですが、農産物の栄養である肥料についても飼料と同様のことが言えて、肥料の三大要素の窒素、りん酸、加里を補給するための化学肥料資材のほとんどが海外からの輸入です。(有機肥料の国内生産割合は比較的高いと思いますが、使用割合が化学肥料に比べて圧倒的に少ないです。後日調べます。)

農林水産省より
農林水産省より

つまり、食料の自給率は38%だけど、実はそれを作るための飼料や肥料の自給率を考えるともっと低い数字になるということです。今は豊富にあるように感じる食べ物も、ほとんどが海外の輸入品に頼ってしまっている現状だということです。もし世界的な食糧危機がもっと深刻になって輸出してくれなくなったら一体どうなるんでしょう?円安がもっと進んで安く輸入できなくなったらどうするんでしょう?他にも燃料とか資材のことも考えだしたらキリがありません。

日本の食糧問題の矛盾

私が感じている日本の食糧問題の矛盾はいくつかあって、一つは一度は聞いたことがあるであろう「フードロス」の問題です。国内では毎年約612万トンの食品が廃棄されています。

農林水産省より

人口当たりの廃棄量も主要国の中でも少なくはありませんが、6割以上の食料を輸入しているにも関わらず沢山廃棄しているというのはもったいないし、なにかが違う気がします。

農林水産省より

それでも、近年のフードロスを減らす取り組みの動きやコロナ禍による外食産業の縮小などによりフードロスの量は減っています。このあたりはテクノロジーの力を使って需要と供給の予測精度を上げてもっと推進していけるような気がしています。我々消費者の目線でできることは無駄なく買い物して使いきることでしょうか。

環境省より

ちなみに伊豆川飼料の飼料や肥料の原料となる食品残渣(食品を製造する過程で発生する非可食部分など)はフードロスには該当せず、こういった統計にはカウントされていません。何十年も前から「廃棄」せずに当たり前にやってきたことなのです。

食料の矛盾、私が一番感じているのはやはり消費者の消費行動です。

消費者の意識を変えたい

ここまで長い文章を読んでいただいて、あれ?日本の食べ物これから大丈夫?って感じた方は何人かいらっしゃると思います。でも、この現状を知らない方はとても多いです。食べることに困っていないので、どこか自分ごとではないような印象ではないですか?

今、日本の食糧自給率38%を支えているのは、農業や畜産業、水産業の生産者、食品の製造をしている方々です。世界的に燃料や飼料肥料などのコストや人件費が高騰している中で、皆様苦労してギリギリの状態で生産や製造を続けています。スーパーで「こっちのほうが安いから」で安易に輸入品の安いものを選ぶという選択の積み重ねで国内の生産者やメーカーが無くなってしまうことだってあります。一度なくなってしまうと元に戻ることはほとんどありません。我々の関わっているツナ缶の現状も下記のような状況です。輸入品の割合が2011年を境に増えています。

缶詰時報から

当社のお客さんの農家さんが言っていました

政府は人件費を上げろというけど、我々百姓の人件費を上げたら農作物の値段も上がることになる。でもそれは市場(消費者)が受け入れてくれない。燃料代や肥料代も上がっているのに自分たちで売る値段を決めることができないのが今の日本の農業だ。

静岡の茶農家、心の叫び

値上げしたら「買わない」「代わりの安い方を買う」、販売終了を発表した途端に「好きだったのに」「無くなる前に沢山買おう」こういった行動がジワジワと生産者や食品メーカーのダメージになります。この先の未来、今まであたりまえのように食べているものがあたりまえに手に入らなくなるリスクが沢山あります。食糧危機をきっかけにこの事実を知ってもらい、どんな行動ができるのか考えてみてはいかがでしょうか。何したらいいか分からないという方、まずは普段買っている食べ物の産地を気にしてみることをお薦めします。

私は国産ツナ缶を食べたり、静岡で加工されたマグロを食べて応援する #マグ活を個人的にやっています。農林水産省は #食べるぜニッポン!を推進しています。

農林水産省の #食べるぜニッポン


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