【'18/19 🇮🇹セリエA1女子】 RS② Filottrano vs Firenze

こんにちは。戸隠です。
今年度もあと少し。卒業シーズン、そして新生活が始まるシーズンでもありますね。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。

今回もまた🇮🇹イタリアセリエA1女子。🇯🇵冨永こよみ選手所属の🇮🇹Lardini Filottranoの試合レビューです。

対戦相手はIl Bisonte Firenze(フィレンツェ)。
有名どころの選手としては、🇳🇱オランダの正セッター・ダイケマ、🇩🇪ドイツの大砲・リップマン、控えではありましたが2018世界選手権優勝メンバー🇷🇸セルビアのマレシェビッチといった面々。またチームシステムとしても、形を問わずに4枚攻撃が揃う場面が多い・サーブが強い・ずば抜けてるとは言えないかもしれないがよく拾うし繋ぐ、といったカラーのあるチーム。
強豪とは言えないかもしれませんが、強くなる要素はすでに揃っている＝システム自体は整っているのでこれからどんどん強くなっていきそう、という印象のチームです。(あと美人さんが多いです🌟←)

※🇮🇹Firenzeのチーム公式HP ⇨  http://www.azzurravolleysancasciano.it/groups/281276415634/giocatrici

あ、１つ。
🇮🇹Serie Aでも試合のスタッツがリーグのHPで公開されているので、今後ここでもリンクを貼っていこうと思います。ぜひ併せてご覧ください。

▼ Filottrano vs Firenze戦　スタッツリンク
http://www.legavolleyfemminile.it/?page_id=47322&idgara=720979

というわけで試合の振り返りを。まずはスタメン。

🇮🇹Firenze S6スタート　(L #10 🇮🇹パルロチアーレ)

#7 🇮🇹デグラディ　      　 #14 🇳🇱ダイケマ　　 #2 🇮🇹アルベルティ
#15 🇷🇸M.ポポビッチ　　 #1 🇮🇹ソロカイテ　　 #9 🇳🇱ダルデロップ
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#14 🇺🇸ウィットニー　　 #3 🇮🇹ガルツァロ　　　 #4 🇮🇹パルテニオ
#1 🇬🇷ｳﾞｧｼﾞﾗﾝﾄﾅｷ　　　 #13 🇮🇹コリアンドロ　　　　 #7 🇯🇵冨永

🇮🇹Filottrano S1スタート　(L #10 🇮🇹カルドゥッロ)

これ帳票の第1setの記載とは異なるのですが、試合の映像では↑このサーブ順になっていたので、多分帳票の方が間違っています。(第2set以降は問題なし)
試合はFirenzeの🇮🇹デグラディのサーブから。

《第１set》

結果から先に言ってしまいますがこのset26-24でFilottranoが取ります。
とは言えなんか最終盤でFirenzeがバタバタしてミス連発してたので敵失色がめっちゃあるんですが...。

Filottranoが何かすごいことをしたという印象が特になかったんですよね...このset。ブロードにはレフトが大体コミットしてたし、相手の同時多発位置差攻撃時は大体サイドブロック間に合ってなかったし。前のMonza戦のようにサーブがガンガン走って主導権を握ったとかはなく、むしろゆるふわなサーブが多くて綺麗に相手にレセプションを返されてしまっていました。間を狙う正確さもなく、嫌なところにスピードのあるボールをぶつけるでもなく...強いて言えばLの前に落とすサーブが数回あったくらいかな〜。

一方でFirenzeのサーブは終始徹底して1番の🇬🇷ヴァジラントナキだったんですね。ジャンプサーブでもジャンフロでもLと彼女の間、もしくは彼女を左右に揺さぶるサーブを連発。彼女が狙われていることからFilottrano側が隣のLや🇮🇹パルテニオのカバー範囲を広げて彼女の守備範囲を極端に狭くしてもなお🇬🇷ヴァジラントナキを正確に突いてくる。そのカバーに当たった🇮🇹パルテニオからエースも取ってました。
そして🇬🇷ヴァジラントナキが狙われまくった結果、FilottranoはCパスを量産してしまい、🇯🇵冨永があっちこっちへ走り回されてなかなかインシステムの攻撃ができません。

そうなると、序盤からクイック主体で攻めて終盤にかけて火力に優れるサイドに回していくという無難な組み立てを淡々と実行してる。かつブロック力でも上回るFirenzeに軍配が上がる......はずなんですが、終盤になって気が緩んだのかなんなのか、19-23で行った🇳🇱ダイケマ/🇮🇹ソロカイテ⇨🇮🇹ボンチアーニ/🇩🇪リップマンの2枚替えで一気にチームが崩れてしまった感がありました。

それまでの試合展開と見比べてみるとわかるんですが、とにかくブロックがめちゃくちゃ。ほんとバラバラ。
21-23で🇩🇪リップマンは🇯🇵冨永のネットギリギリのセットに騙されたのかレシーブ体勢に入ろうとするし、22-23なんてそれまでのバンチシフトを忘れ去ったかのようにスプレッドシフトになるし...

名指しするのもアレかもですが、このSを🇮🇹ボンチアーニに替える采配、必要だったのかなぁ...って疑問が残りますね。🇩🇪リップマンにブロックと前衛での攻撃力を求めるのはいいんですが、🇮🇹ボンチアーニの投入で崩れた感は否めないんですよね〜。トスが伸びなかったのもさることながら、気になったのが24-23でのFilottranoのSPの場面。

★FirenzeのS6のレセプションアタックでB⇨Aの11クイックを仕掛けますが、これがFilottranoのブロッカーにワンチかけられてラリー続行。🇮🇹ボンチアーニはこの直後、後衛であるにも関わらずすぐに下がらずにその場でぼーっとステイしてからトボトボと後ろ歩きでバックゾーンに戻っています。その結果、C1への助走に入った後にすぐにバンチシフトを敷こう(スロA付近のブロックの定位置に戻ろう)としていた🇩🇪リップマンの動線を邪魔してしまったのです。結果的にこのラリーは、この邪魔によって自陣ライト側にステイすることになった(自らが守れるゾーンを狭められた)おかげで🇩🇪リップマンのドシャットによって一応失点を免れましたが、これもし冨永がバックトスでブロードに上げていたら、Firenzeのレフトブロック1枚＆Z1周り担当のSがすぐに定位置に戻らないからコート中央のフロアディフェンスがガバガバになって失点＝setを失っていたでしょう。
setを取られるかジュースに持ち込めるかの争いをしている場面で、こういう、後衛のSが転倒とかもしてないのに前衛のブロッカーの邪魔をしてしまうというプレーが出るのは少々残念でしたね...。最後も🇮🇹ボンチアーニのキャッチで26-24でしたし...ちょっとすっきりしない取られ方でした。
まあ今後の糧にしていただければですが。

《第２・３set》

Firenzeはセットを落としたことで、OPに🇩🇪リップマンがスタメン復帰。OPに入っていた🇮🇹ソロカイテをOHにしていつものシフトに戻しました。

やっぱり🇩🇪リップマンは頼もしいですね〜。
攻守の切り替えが意識的にも身体能力的にも早いし、とにかくサボらず真面目なプレーするし、攻撃も力強い。(あとはしゃぎ方が可愛い♡)   リーグ中盤まで、一番大事なところで吹かしたりしてフルセットの試合を落とすなんてこともあったんですが、最近は結構ミスも少なくなりました。スパイク助走の調整の小刻みなステップがうまいのから見てもきっと脚の筋力が強いんでしょうね〜。
これからもっともっと伸びていくOPだと思いますが、課題として欲しいのは、ライト攻撃でスロットBあたりから助走開始してスロットCで打つといった外に開いて打つスパイク(NECの🇯🇵山内とか日立がやるようなやつ)のコントロールですね。あれを結構アウトにしてしまう場面を見かけました。それからノーブロックなのにレシーバーのいるクロス方向にバカ打ちしてしまうところかな。ストレートに切れば間違いなく決まるであろうところでそういう打ち方をしてしまってラリーにされちゃうことが多い気がします。案外スト打ち苦手なのかな？　男子の🇧🇷ウォレスや🇫🇷ボワイエなんかだと空中で体をひねるどころかねじるようにしてストレートに切って入れたりするので、筋力強化も兼ねて彼らを目指して欲しいなと。
🇳🇱ダイケマのトスに泣かされて軟打するしかない場面でもこれができると結構大きいはずだし、対角線コースにスライドしていくジャンプサーブを打つのにも都合がよくなるのではないかなと思います。🇩🇪リップマン、個人的に好きな選手なので応援に熱入っちゃいます🌟

試合展開に話を戻すと、２set目はFilottranoのサーブが入らなくなってきた＆Firenzeのブロックが冴えてきた。３set目は２set目の流れのままFirenzeサーブが走り始め、さらにブロックがほぼ完成してきてしまったという印象でした。

★印象的だったのが第2set、7-8の場面。
Filottranoは🇯🇵冨永サーブのS1。FirenzeはS6のレセプションアタックで🇩🇪リップマンのC1がブロック裏にフェイント。Z5を守っていたLが突っ込んできてなんとか上げ、AL上のスロット2に上がったボールをZ1から走ってきた冨永がアンダートスで高くレフトの🇮🇹パルテニオに上げます。
一方この時、スパイク動作から降りたリップマンは相手が繋いだとわかるとすぐさま自陣のスロットB〜Cあたりにステイ。3人のブロッカーがややライト側に寄っている＆ライトブロッカーは極端にライトに寄っているというシフトを完成させます(写真参照)。
結果🇮🇹パルテニオのスパイクは🇩🇪リップマンの左腕で見事にドシャットされてしまいます。

これ、もしや？と思ってこれより前のも見直してみたのですが、この試合ずっとFirenzeは、相手のレフトには必ず1枚つくように、ラリー中は自陣ライト側ブロッカーが他2人からややスプレッドするような配置を敷いていました。選手で言えば🇩🇪リップマンと🇳🇱ダイケマです。
おそらく「ラリーになったらPosition 4(前衛レフト)」というのがFilottranoの事前のデータとしてインプットされていたために、ベンチからそうするよう指示が出ていたのでしょう。そしてFilottranoはその通りにレフトに2段トスを上げて相手ブロッカー2枚が万全で構えてるところにズドン＆ドシャット...。これが何回もあったものですから、そりゃ被ドシャット本数増えるし、ブレイク取られちゃうよな〜と。　(これ考慮するとさっき書いた第1set最後のアレも意味合いが変わるかもなんですが、Sが全然動かなかったのは事実なのでここでは置いときます)

でもですよ。
レフトがマークされたからもうなすすべはないのか。そんなことはないですよね。少なくともコート上には必ず6人いるんだからLとSと前衛レフトを除いてもあと3人。1人がフェイントカバーかなんかでコート中央で転んでたとしたって、まだバックアタックという選択だってあるし、ローテによってはブロード攻撃だって可能です。
ここで疑問というか一番歯がゆかったのが、バックセンターを守っている選手がトランジションでライト側に回ってBAを打とうとしない/助走の入る位置（スロット）を変える素振りすら見せないことですね。コート真ん中に落とされてそれに走りこんできた選手がいたので中央からのBAの動線は完全に塞がれてしまった。だったら空いているところ（＝相手のマークも薄くなっているところ）に回り込んでそこから攻撃しようとなぜならないのか。

ここにまたFilottranoの大きな課題があると思っていて、コート真ん中にボールを落とされ、かつ前衛ライト側のブロッカーがつなぎに動員されてしまった時に使えるのが前衛選手はレフトのみで基本ライト側はないんですね。せいぜい使っても苦し紛れのブロードだけ(実際第1setはこういう場面を何回かブロードで切り抜けていましたが)。でも相手のライト攻撃にMBがブロック跳んでしまえばもうブロードに入り直すことはしません。
ここでもし後衛のOHがぐるりとライト側まで回ってC1なんかを打ちに入ってこれば選択肢も広がるのですが、しないんですよね、これを。🇹🇷ワクフバンクや🇮🇹Imocoをはじめ、女子のトップチームはどこもそういう臨機応変なことを必ず実践しています。それも流れるような自然さで。たとえ全く自分には上がらなかったとしても、です。
Filottranoがやらないのか、できないのかと言えば、多分"まだできない"の方だと思います。🇯🇵冨永がFilottranoでバックライトへの高いトスを上げられない/合わないということはなく、むしろそれができている試合でFirenze以上の強豪とも競っていることもありました。しかしラリーになった時は使えていない。かなり相手を惑わすことにも効果がありそうなのに。
事実、似たような場面でFirenzeはFilottranoのライト攻撃を全くマークしていませんでした。第3set 6-9の場面がわかりやすいですが、S2のトランジションで思いっきりバックライトに開いているOPがいるのに、そっちを全く見もしない＆2ndが上がる前の段階でオフブロックしようとしています。これはつまりFilottrano側がライト攻撃をしてこない/ライトには上げないとわかっているからそうしているわけですから、逆にそこからバックライトにあげたりすればFirienzeの裏をかけたわけですね。Firenzeはブロックのシフトを修正しなけらばならない？と思い始めるかもしれないし、🇯🇵冨永にだって他に選択肢があるという精神的な余裕も生めるはず。ところが、こういうレフト攻撃が最終的に決まってしまうからどんどん頼りたくなる、と。この場面こそ切り抜けましたが、以降はまた頻繁にワンチを取られ、相手に切り返されるの連続になってしまいました。

ローテごとの定石/予め想定していた入り方ができないとなると一番安易な方法＝前衛レフト偏重を選択して、それが相手にもバレていてやがて封じ込められる。これはチームレベルがまだまだという証拠なのではないかとも思います。

粘って＆粘って前衛レフトに託しまくってればいつか相手は根負けする/必ず勝てるという神話を信じ込んでいるのはアジアの弱小クラブか、サオリン大作戦が大好きすぎていまだに"日本のレフトが世界を打ち破る！"とかいう感動()シーンに夢を見続けてる時代遅れの🇯🇵日本代表くらいしかいません。
🇨🇳李盈莹のようなハイパースパイカーがいるならまた話は別ですが、真っ向から勝負しても勝てないのなら、最大火力で挑むことにさらに加えて『工夫』が必要になるわけですよ。それがない＝ベンチが発想できない/選手にはできないのならば、もう相手の敵失がない限りは勝てる要素がないわけで。
そういう意味でFilottranoというチームはまだその段階のチームなのかなと。思わされた瞬間でしたね。

《第４set》

被ドシャットが増え、サーブがミス続きでブレイクが取れず、あとがなくなったFilottrano。
やはりローテを１つ回してきました。🇮🇹パルテニオのサーブから始まるようにしてきたんですね。多分マッチアップを考えてだと思いますが。
まあ何か変えないといけないということで動いたんだと思いますが、このset、もう１つ大きく変わったことがありました。🇯🇵冨永が序盤からクイックを連発したんですね。ラリーを切るにもレセプションアタックでもAパスきたらとにかくクイックし、Filottranoがリードを奪います。

これは良かった。序盤にクイックを連発しておけば相手はそこに意識を向けざるを得なくなりますし、それを利用して速いレフト平行やBAを絡めていけるか、と思いました。が......レセプションがまずかった...。
Firenzeも3setの勢いそのままにサーブは衰えませんでした。ミスったのが🇩🇪リップマンと🇮🇹ソロカイテだけかな。加えて🇷🇸ポポビッチが頻繁にワンタッチをかけるようになり、Firenzeにチャンスボールが返ることが増えて火力自慢のサイドでズドン！　BAは少なめでしたがそれでもジリ貧になるといったことはなく、Firenzeが押し切ってという感じでした。

《総じて》

試合結果
🇮🇹Lardini Filottrano １　-　３　🇮🇹Il Bisonte Firenze

Filottranoが負けはしたものの、悲観するような負けでもなかったかなと思いました。前よりのつなぎの精度は上がっているし、お見合いも減りましたのでね。BAが突破口にできない中で、やれることはやった感はありました。ただ勝てない相手ではなかったものの、Monza戦で見せたような徹底した攻めサーブがない＆ワンポイントブロッカー采配をしない＆レフト偏重作戦ではやはり勝ってはいけないかなと。バレーはチーム力こそ重視されますが、個の力がなくてもまた通用しないものですからね。

FirenzeとFilottranoの大きな違いは、

・先ほど出たBAに対する参加意識も含めた、アタッカーの対応力/機転
・ブロッカーの実力差
・同時多発位置差攻撃のシンクロ率
・1stタッチの高さ（Firenze ＞＞＞ Filottrano）

かなって思います。特に４つ目ですね。🇯🇵冨永がレフトにサッっと上げたくなるのもライトが焦ったように入ってくるのも1stタッチが低いのが影響してると感じました。これはもう🇯🇵冨永だけではどうしようもないので、各選手に自覚してもらうしかない。🇨🇺ヴァルガスや🇸🇪ハーク(19歳)を見習ってくださいです。

一方Firenze。🇩🇪リップマンに少々おや？っと思うところはありましたが、無事RS完走できて良かったです。12勝12敗で7位。お疲れ様でした。
Play Offは、去年と同じく、2位の確定した🇮🇹Novaraと。
まだMBのクイックとトランジションでの決定力、それからサイドブロッカーの相手のローテを把握して即座に情報を整理してブロック跳ぶという能力の点で修正点はあるかと思いますが、攻撃面ではまとまりが出てきていると思うので🇳🇱ダイケマがテンパらなければいい線いけるのではないかなと期待しています。

最後に🇯🇵冨永。この試合ではライト側へのバックトスが冴えていました。特にブロードですね。アンテナギリギリまで伸ばしていてMBがブロックアウトを取りやすいセットになっていたと思います。困った時のレフト偏重はやはりもうちょっとどうにかしたいところですが、最終戦、またライトバックへのふんわりやさし〜トスが復活してくれるかな？
最終戦は3/31 4:30〜　vs🇮🇹Chieli戦。最後、勝って日本に帰ってきてほしいですね。

それでは、今回はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました！

〜　とがくしメモ　Vol.3   〜

🇳🇱ダイケマ、以前🇯🇵古賀紗理那がどこかのインタビューで「あんまりブロックが上手くない」と言ってましたが、確かにそんなに上手じゃないですね。
アンテナとの間をボール1個分は空けてしまうし、スイングブロックでクロス側に手を出した時も内側の手がしっかり前に出てない＆支えられてなくてその内側の手に当てられてブロックアウトを取られる場面が散見されました。
🇳🇱オランダはもともと上背のある選手が多いですが、Sのブロックが穴であるというのを放置してるとね。メダルは無理ですね。頑張れラウラ。

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