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下田最前線⑪地域コミュニティが発信力の源泉

 NPO法人伊豆in賀茂6の事務所は、3年半前に設立した当初から、事務所の半分をお店&ギャラリーとして活用してきた。
 販売は、ビジネスとして成り立たないので縮小したが、ギャラリーは、画家いけみかなこのギャラリーとして、彼女の水彩画を常設し、また彼女が主宰するスケッチクラブやぬりえサロンで利用している。
 ぬりえサロンに参加するのは近所の女性たち10名ほどで、月に一回、いけみが描いた下絵に、色鉛筆で色を塗っていく。
 先週は、そのぬりえサロンの発表会で、生徒さんたちの友人たちを中心に、連日お客でにぎわった。
 留守番で生徒さんも来るので、話が途切れることはない。笑い声が沸き起こり、中には妻の愚痴を吐き出しに来た男性や、翌日にはその妻が、夫の愚痴を滔々と語りに来た方もいた。
 僕も店にいれば、そんな人たちの話に耳を傾ける。
「だって、肉が食べたいっていうから、付け合わせにお野菜もだしたら、要らないから捨ててくれって…。失礼しちゃうでしょ!」
「今日は、食事をつくらないから勝手に済ませてとか、言うんだよ。だからこれから弁当を買いに行くんだ。結婚した時には、この人を大切にしようと心に決めたのに…」
「この人を大切にしようですって?そんな話、聞いたことないわ」
 と怒った風に言いながら妻は、少し微笑むのであった。
 展示会の最終日には、みんなで紅茶を飲みながら、いただきものの文明堂のカステラを頂戴する。
 にぎやかに笑って、わかれて、また来月である。
 15分ほどして所用で外に出ると、生徒さんの何人かは、極寒の中、まだ20メートルも進んでおらず、立ち話をしている。
 空き家バンクや移住促進事業、民泊経営、清掃事業とNPOの活動は年々必要とされるところに広がっている。
 そんなNPOの発信力の源泉は、実は地域コミュニティとしてのインプットが支えているのではないか。
 店に集まるみなさんのエネルギーは、可笑しいくらいに溌溂とし、十分すぎるくらいに大きい。
 いつまでも立ち話に興じる彼女たちを見て、ふとそんな気がした。

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