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「ブルバスター」 1話〜3話を復習

2023年10月から好評放送中のテレビアニメ「ブルバスター」について、関係者の私ではありますが個人的にnoteで趣味として作っているスター・ウォーズ紹介記事の体で見所を紹介してみたいと思います。

アニメはそれ向けにテンポとドラマを優先している関係で原作小説の細かい描写や設定要素が省略・改修されています。本記事ではアニメをより楽しめる補足情報を中心に序盤の3つのエピソードについて解説します。

結末については見てのお楽しみ、という形であらすじの一部を紹介していますが設定解説含めネタバレ回避にはなっていませんので未視聴の方はご注意下さい

また、筆者は関係者ですがプリプロ初期に原作情報を元にデザイン提供したのみで脚本など関知していませんので、記事中の内容はあくまで原作小説の情報を参考とした個人的な分析・考察です。公式な見解・設定情報ではありません。(なお本記事作成についてはPICSより了承取得済です)

より細かな物語の描写・展開、正確な内容を知りたい方はぜひ原作小説の購入をご検討下さい。

龍眼島のモデルは北九州市の藍島(あいのしま)


第1話

舞台は少しだけ未来の日本

冒頭は早朝の龍眼島、武藤がブルローバーで巨獣と交戦。しかし追い詰められています。日頃ブルローバーのメンテ費用をケチっていたツケと、巨獣が更に巨大化したことによりブルローバーでは太刀打ちできなくなってしまったという所から物語が始まります。武藤は脱出して社に戻ります。

この危機的状況に救世主として納入されたのがブルバスターです。
ブルバスターは沖野自身が作ったというよりはプロジェクトのリーダーを任されていたという事になります。同じく蟹江技研製品のブルローバーに共通パーツが使われているように、ブルバスターはゼロから設計されたわけではなく元々蟹江技研の製品にひな形となるモデルのロボット建機があります。

巨大化していることも含めて波止工業から発注に際して害獣の詳細については伏せられていたわけですが、その理由は3話で明かされます。

片足立ちはオートバランサーのなせる技
沖野がテンションあがって意味不明に叫んだと思うと面白い
状況にあわせて出力の初期値を補正する音声コマンドということで!

ブルバスターの腕は本来格闘用ではなく死骸の運搬や瓦礫・建材の荷役作業用であり攻撃は遠〜中距離射撃が前提でしたが、巨獣の巨大化に伴い格闘戦も強いられる形に。密閉構造はガス対策のため。オートバランサーはバックグラウンドで常時動作しているシステムなので改めて起動するのはちょっと変でしたね。
コロナ禍でのリモート会議ではメカや設定説明・バトルより人間ドラマに注力して欲しいとリクエストさせていただいていたのでメカSF的な演出は最低限だと思います。(のでここで補足させていただいております。)

AR(拡張現実)技術はカメラからの映像に外部情報やAIが生成した情報をオーバーレイします。ブルバスターでは荒廃した島の進行可能なルート解析とナビゲーションなどが初期の主な用途です。昨今は現実の建機でもAR技術が利用されています。原作ではARディスプレイという言い方をしていますが企画初期の設定が曖昧だった頃の名残です。正しくはLEDウォールです。アニメに際して用語を修正しています。

誰が警報を鳴らしているのか

突如巨獣が出現し警報が鳴りますが、事務所の管制室には島を監視しているカメラやセンサーからの情報をAIが解析・検知するシステムが導入済みです。現代でもAIを使った防犯システムがありますがその応用技術的なものです。警報と連動してパイロットにも知らせが届きます。アル美は夜勤明けで通知はオフでしたが、武藤の船舶免許が失効していたため急遽田島が電話で直接呼び出したという流れです。

3D出力された流体経路内蔵フレームを採用しており露出する油圧ホース類は無い

かくして沖野はブルバスターで巨獣と対峙、その必殺武器は「スタンショット」です。対象物に電撃を与える誘導弾を発射します。原作小説では出撃時は既にフルチャージで、巨獣とは距離を保った状態で発射して撃退します。(「マトが大きい〜」の台詞は本来それに掛かっていたのでした)

アニメでは戦闘中にチャージ、格闘戦に持ち込んでゼロ距離射撃(本来は自機にも影響あるので危険行為ですが・・・)という形で緊張感と迫力ある戦いにアレンジされていました。



第2話

実際の.MP社のウェブサイトはこちら
原作の漁船がタグボートに変わっているは改修点の一つ
代わりとなるプレジャーボートも別の形に改修しています

倒した巨獣の正体を探るため、波止工業は出資元である大手の塩田化学傘下のシオタバイオに死骸を移送して調査を依頼しています。
第1話の巨獣で6体目(2ヶ月に1体のペースで出現)ですが依然として正体は不明。シオタバイオの怠慢なのかどうなのか。

地元建設組合のあらぬ噂のせいで窮地に追い込まれた田島は、赴任早々沖野が提案した「ブランド化計画」に活路を求めます。

アニメではブルローバーの修理費が9万5千円とドットエムピーのブランディング費用が10万円という身近な価格の範囲でしたが、原作では最終的に前者が約84万円、後者は約53万円でした。ジリ貧の波止工業の状況で片岡がムキになるもの頷けます。原作小説では他にもパイロットスーツ関連費やブルバスターの1回の出撃費用などが内訳込みで紹介されています。


第3話

第3話冒頭の時点で沖野赴任から3週間近く経過している。

様々な秘密が明らかになるエピソードでした。

沖野の失態は技術者らしからぬものですが、原作では一連の出来事で浮かれて調子に乗ったがための凡ミスだった経緯が描かれています。私も若いときに大きな仕事を任されて結構なミスをやらかし、冷や汗をかいたことを思い出して読んでいてドキドキしました。

ところで若干誤解が生じる画でしたが沖野の機密漏洩で目の下に隈を作りながら火消しを担っていたのは、塩田化学の危機管理室ではなくドットエムピーの方々です。沖野のためということで尽力してくれたようです。

過去にイベントで販売された波止工業「機密漏洩セット」
新聞の切り抜きにある被害者は二階堂さん一家
写真は6体目なので矛盾あり(なにぶんプロモ用グッズにつき)

出向者だった沖野には伏せられていた「行政や自治体や自衛隊が本件に干渉しない理由」も明らかに。巨獣がまだ小さかったこともあり警察がクマとして処理した事を逆手に取り、早期の復興と帰島を願う島民のため内々で処理すべく謎の生物である可能性が隠されていました。

第1話で武藤が「大ごとでは無い」と語っていたのも沖野に隠すための下手な嘘だったのです。(原作より)

島民はガス発生ですぐ避難したため害獣を実際に見ていない
アニメ版はハイテンポで「龍眼島伝説」のくだりは触れにくかったかも?

今回アニメ版では省略された事情の一つとして、島民が巨獣バケモノを隠したい理由には彼ら(特に年寄り世代)が信仰し畏れる「龍眼島伝説」という地元の伝承の存在もあります。民俗学的な描写は「タイムスクープハンター」の中尾浩之さんらしいアイデアと言えるかもしれません。

そして数年前に龍眼島に建設された『海水淡水化プラント』の存在です。
田島は数年前に塩田化学の営業社員としてこのプロジェクトに携わっており、元々反対していた島民を説得しプラントを建設し稼働。離島の水不足問題を解消して絆を育みました。島民と田島が互いに厚い信頼を寄せているのはそうした経緯があります。

プラント建造を請け負った島の建設会社こそが波止工業でしたが、その社員は害獣の最初の被害者となります。田島は塩田化学を辞職して彼らの会社を継ぎ、本土で復興事業と害獣駆除を業務として再開したというわけです。

海水淡水化プラント計画を機に島民との強い絆で結ばれた田島が彼らに深く寄り添っている、という事に加えて害獣駆除事業での利潤を考える出資元の大企業 塩田化学の期待という二つの背景が隠蔽の裏にあります。

お金にうるさい片岡さんの事情も徐々に判明

装備&設備運用のため塩田化学から多額の出資を得られているのは片岡の功績ですが、実はハッタリであり巨獣が利潤に繋がる根拠はありません。
なお、市からは年間1000万円の助成を受けていますがそれでも厳しい。

地元に戻り巨獣解明の手がかりとして田島が受け取ったシオタバイオからのメール=ガスの解析結果には「未知の成分」との表記が。

成分分析の場面も含めて島民への謝罪のくだりも原作とアニメでは大分異なっているので比べてみるのも面白いと思います。

窒素=67%
二酸化炭素=18%
酸素=9%
二酸化硫黄=5%
その他=1%未満

「ブルバスター」第1巻より

物語は序盤のクライマックスへ

様々な登場人物たちの想いと組織の思惑が交錯するなか、物語は最初の佳境に突入します。巨獣の正体は何なのか。どこから現れるのか。ロボットの移送手段はどうなるのか。何よりお金(経営)は大丈夫なのか!

注目の第4話は10月25日(水)放送です。ぜひご覧下さい。

マンガ版も連載開始!