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「キャシアン・アンドー」8〜10話を振り返り

ディズニープラスで配信中の「スター・ウォーズ」のドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」第8話から第10話の展開を振り返ります。記事は視聴済みの方に向けた内容となっています。またドラマの性質上、映画作品のエピソード1〜6 と「ローグ・ワン」の視聴済前提にもなっています。あらすじは「さわりだけ」を意識してなるべくサプライズ要素や結末は書かないよう心がけていますが、完全なネタバレ回避にはなっていませんので映画作品も含めて、未視聴の方はくれぐれもご注意下さい。

第8話 ナーキーナ・ファイブ

身元を隠したままナーキーナ5へ移送されるキャシアン。連行先は監獄ではなく工場施設でした。労働力とみなされ拘留期間中は重労働を強いられます。
「ローグ・ワン」からメルシが再登場。彼との出会いの経緯が明らかに。

そのビジュアルからルーカスのデビュー作「THX 1138」やその原案となった「1984」「メトロポリス」の類似・テーマ踏襲を指摘するレビューもありますが個人的には第7話の法改正と逮捕の段階から(米国の)「警察の権力乱用」、「三振法」や「監獄ビジネス」を皮肉っているという意見に賛同です。

階数表記と図面は第10話の司令室のモニターを参考。
居住区はブリッジが結ぶ外郭部。

モスマとペリンとテイ・コルマ

議員宿舎のモスマ邸では票集めのパーティが催され、テイ・コルマが顔を出しています。他の参加者との歓談の場でペリンとモスマが15歳で結婚した事が語られますが、ペリンの「伝統でね」という言葉からはシャンドリラが保守的な国家であり、二人の婚姻は家同士のそれであり恋愛結婚ではなかった事を匂わせます。もしそうなら「ローグ・ワン」の小説で語られたモスマのロマンスの相手はリーダの揶揄通りにやはりテイ・コルマ?

フェリックスではキャシアンの暗殺を命じられたヴェルがシンタと潜伏。ヴェルの「何に化ける?」という問いに対する「家族から逃げている金持ちの娘」というシンタの「当てつけ」は次のエピソードで真意が明らかに。

ソウ・ゲレラのアジト

ソウ・ゲレラが登場。特徴的なパルチザンの黒いXウイングやトグナスの兵士、モロフらしい者の姿も見え「ローグ・ワン」の時と似た構成に見えますが、ソウ・ゲレラ自体の肉体にはまだ大きな損傷が無く、疑い深さは相変わらずながら映画の時のような不安定さは感じられません。ジン・アーソを戦場に置き去りにした時期にあたりますが、ジンらしい人物の姿は見当たりません。

ジンとソウの離別の詳細は「Rebel Rising」に。(未邦訳)

ルーセンはソウに帝国への攻撃を計画中のアント・クリーガーを助けるよう求めますが拒否されます。ソウによればクリーガーは分離主義者。これが独立星系連合の残党を指すのであればソウにとっては仇敵であり、またキャシアンの故郷ケナーリでの出来事にも関係があるかもしれません。

既にベイル・オーガナも惑星クレイトで独自に組織を結成しているかも。


第9話 誰も聞いちゃいない!

題名「Nobody's Listening!」は「ローグ・ワン」終盤の「誰か聞いてるかな(Do you think anybody's listening?)」という台詞(吹替/字幕では「データ、誰か受け取ったかな」)に、あるいはその言葉が象徴するディスコミュニケーションがテーマとしてエピソード全体に掛かっているのがポイントのよう。

原住民の悲鳴

デドラはビックスに聴覚的な拷問を加えます。精神に害を及ぼすその音の元となったのは帝国軍施設の建設に反対した原住民を虐殺したときの悲鳴。原住民の反対の声は無視し、死に際の哀願の声は拷問の道具としてしか認識されていません。

このシーンのラストカットが「エピソード4新たなる希望」でレイアに自白剤による拷問を加えるシーンのラストカットをオマージュしており、ファンの間で話題になりました。

モスマの訴え

一方、帝国元老院ではモスマが再犯令に異議を唱えますが、多くの議員は彼女の声に耳を貸すことなく退席してしまいます。

キャシアンの叫び

キャシアンは作業室のトイレの壁の配管を細工したり人員補充の様子に隙を探すなど脱走の意志を固めています。キノからフロアの護衛の人数を聞き出そうとしますが、おとなしく刑期を過ごし家族のもとに帰ることを望むキノはキャシアンの話を聞こうとはしません。

ヴェルとモスマの関係

モスマがテイ・コルマに語った「秘密を知っている3人」の1人という事であり、結婚を逃れるため裕福な家庭から距離を取り、反乱活動に手を染めるようになった事が判ります。モスマとはシンタの存在にも関わる私的な秘密も共有しているように見えました。ただしアルダーニ要塞襲撃のことは伏せられ、ルーセンの話を聞く事も許されず(第4話での「彼の話は一切しないこと」というルールは二人の間にもありそう)モスマの孤独な戦いは続きます。

シリル・カーンの心情

過保護・過干渉で見返りを求めるシリルの毒親イーディは、昇進の話に態度を変えますがプライドの高い彼女が気にしているのは世間体です。イーディはシリルの心の声に耳を傾けるつもりは無いようです。二人の会話は噛み合っていません。

シリルはISB本部前でデドラを待ち伏せて再度自分を売り込むという一線を越えた行動に出ますが、その熱意と言葉はまたも届くことなくデドラからは「また同じ事をしたらアウター・リム(銀河外縁部)の監獄にぶち込む」と恫喝されます。

ISBの罠

スティアガード付近の抜き打ち検査で盗品が見つかり、逮捕された船のパイロットはアント・クリーガー派(分離主義者)であることが判明。第8話でルーセンがソウ・ゲレラに協力を求めた(そして断られた)クリーガーの計画を帝国が把握。ISBはアント・クリーガーのグループを捕らえる罠を仕掛けます。

もし彼らがケナーリの分離主義者の船に関係があるのであれば、この追跡劇の先であの回想シーンの謎も明らかになってくるのかもしれません。


第10話 道はひとつ

結末や重大なネタバレ/サプライズ要素は省略しています。

今回のエピソードは吹き替えでの視聴が解りやすかったのですが、題名の「One Way Out」が台詞(かけ声)として出る場面では吹き替えでは「この道を進め」になっています。(字幕では邦題と同じ「道はひとつ」)

アンディ・サーキス演じるキノが司令室で行うスピーチに「反乱者たち」シーズン1の第12話「反乱の呼びかけ」を想起したファンも多いのでは。

エズラ「みんな聞いてくれたかな?」
ヘラ「ええ、聞いてたはずよ」

モスマとダヴォのやりとりによれば、やはりモスマとペリンの結婚が本人の意志に関係無く行われたもので、急場を凌ぐため娘にもそれを強いる選択を迫られてしまうという展開はなかなかの追い込まれ方でした。寓話的だった「クローン・ウォーズ」の彼女と違ってキャラクターの肉付けも非常に生々しくシリアスです。

(追記)
娘の存在については1991〜92年のコミック「ダーク・エンパイア」の資料本「〜ソースブック」が初出です。設定考証は80年代のテーブルトークRPGでお馴染みのWEST END GAMES社のマイケル・アレン・ホールによるもので、2002年の新版「エッセンシャル・ガイド・トゥ・キャラクターズ」のモスマの項目にその名前が登場しました。ただしドラマの設定はその本の内容からは更新されているようです。
(追記ここまで)

一方デドラのドラマは当初は男社会・縦割り社会で不遇な立場にあった女性将校が認められ成り上がっていく痛快さがありましたが、得た立場が彼女の本性を顕わにしてしまったのか恐ろしいキャラクターに変貌。

第10話とここまでの感想

アルダーニ編の最終話と同じく私のSNSタイムラインでは賞賛の声が多く見られました。映像作品よりもコミックや小説のスピンオフ作品を楽しんでいるファンからは特に高い支持を得ているように感じます。

私の感想ですが、ややご都合的でインスタントな脱出劇に見えてしまったり従来の「スター・ウォーズ」作品との差も大きくて、スパイ・脱出・政治・犯罪ものの別の作品あるいはそういう映画のひな形や大ヒットドラマ風の何かに「スター・ウォーズ」のガワを着せているだけ感が否めず素直に楽しめなかったところも。
俳優陣の演技に加え本作でもILMの視覚効果は素晴らしいのですが・・・。

キャシアンは行き当たりばったり(に見えるほど描写が雑)、デドラはあっさりと典型的な帝国の将校になってしまい、のちに反乱同盟軍最高指導者になるモスマについてはパドメあるいはレイアのような覚悟と行動力も、ベイルのような強さと知略も無くただ狼狽えるだけ。シリルの不遇や奇行もつい面白がってしまいますけど彼の視点は一体何なのか。

3話、6話、そして10話で大きな事件は起きますが基本的に同じような展開(ヤバイ状況に追い込まれて脱出)の繰り返しで肝心の物語がほとんど進まず。相変わらずシリアスになるほどエイリアン種族&言語も投入しづらく人間だけに。世界観や映像の外で起きている出来事(反乱分子の活動や帝国の締め付け)も台詞での説明ばかりで、それでいて設定はここで解説しているように複雑なので世間一般の評価が気になります。

製作総指揮のトニー・ギルロイはドラマ配信期間中に取材でこれらの説明不足や妥協点を解説していますが、それもどうなのかなと。

本来の「スター・ウォーズ」の、子供にも解るように政治・戦争・男女格差・社会規範・善悪の境界線を描くドラマを作るほうが難しく意義があるように思います。

とはいえこの作品から「スター・ウォーズ」に興味を持っていただける方も多いと思うので引き続きガイダンスを作っていきます。

ちなみに私がいま一番期待しているのは2023年配信予定の「スケルトン・クルー」です。主演はジュード・ロウ、プロデューサーは「マンダロリアン」のジョン・ファブローとデイブ・フィローニ、監督は「スパイダーマン ホームトリロジー」のジョン・ワッツです。

描かれる時代からも非常に挑戦的な作品になりそう。


「キャシアン・アンドー」シーズン1は残すところフィナーレの2話です。次回は最終回の後に。
久々の超傑作「テイルズ・オブ・ジェダイ」も振り返り考察記事を作成予定です。監督デイブ・フィローニが来日していたことと、ジブリとのコラボも発表されてアニメの「スター・ウォーズ」もますます盛り上がって行きそう。


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