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「オビ=ワン・ケノービ」1〜3話の展開を振り返り

ディズニープラスで配信中の「スター・ウォーズ」のドラマシリーズ「オビ=ワン・ケノービ」前半3話の展開を振り返ります。記事は視聴済みの方に向けた内容となっています。またドラマの性質上、映画作品のエピソード1〜6 視聴済前提にもなっています。あらすじは「さわりだけ」を意識してなるべくサプライズ要素や結末は書かないよう心がけていますが、完全なネタバレ回避にはなっていませんので映画作品も含めて、未視聴の方はくれぐれもご注意下さい。

ベイルは最も目を付けられやすい状況にはある。

ドラマ「オビ=ワン・ケノービ」を予習』での予想通り、本ドラマシリーズは「エピソード3 シスの復讐」の続編的作品の色が濃いものとなるようです。

第1話冒頭にプリクエルのあらすじがまとめられていますが、今一度映画の結末を振り返ったのが上図となります。アナキンはパドメと共に子供が死んだと認識していて、オビ=ワン・ケノービもジェダイ大粛清で生死不明という状況です。今回のドラマでオビ=ワンもアナキンは10年前に死んだものと思っていました。(レジェンズ作品では数ヶ月後に生存を知る展開でした。)

オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーを中心としたジェダイの師弟関係です。ヨーダはマスターとして数多のジェダイを育成してきましたが、二人もシス卿を生んでしまったことを悔いてか、大粛清の後はダゴバに引きこもります。

同様にオビ=ワン・ケノービもまた、クワイ=ガン・ジンに「彼はフォースにバランスをもたらす者。彼を育てろ。」と託されながらもシスにしてしまい、ムスタファーで見殺しにした事で自分を責め続けた10年後、という所から物語が始まります。

特に(「スター・ウォーズ ビジョンズ」にも言えますが)日本人はジェダイを単純なヒーロー/正義の味方として見ている方が多い印象です。
ジェダイが格好良く戦った「エピソード1〜3」の映画作品+「クローン・ウォーズ」で描かれたのは、共和国末期の彼らは掟に縛られ機能不全に陥っていたことと、シスにその隙を突かれて兵士として利用された挙げ句に没落を招いたことです。このことを踏まえているかどうかで大分ドラマの印象が変わると思います。


PART I

オーウェンのキャラクターにも厚みが増し、エピソード4視聴がまた辛くなりそう。

クローン戦争の頃の勇猛なケノービ将軍は見る影も無く、目立たぬよう静かに生きるオビ=ワン・ケノービの惨めな姿がショッキングでした。フォースを使うのを躊躇ったり、助けを求めた生き残りジェダイも追い払います。一方で遠くからルークを見守り、いずれ彼が(ヨーダに)訓練されるべきと言う発言からは彼がいまだ(シス打倒の)任務に囚われていることが感じられます。

レイアの登場はファンに予想されていた事の一つですが、物語の初期からオルデランの様子も含めて描かれることは驚きでした。C3POの右脚がこの時点で銀色になっている事が確認できます。由来については明確化されていませんでしたが、ベイルが記憶を消去した事に加えて別個体の偽装とも取れます。

幼いレイア・オーガナは、台詞や行動、演じたヴィヴィアン・ライラ・ブレアの芝居も含めて完璧にあのレイア姫だと感じました。

親族との会合では、レイアが従兄弟からベイルの実の娘では無い事を指摘されますが、親族とはいえ実子ではない事実が外に漏れている事が大きな伏線になるのでは無いかと個人的に考えています。

そしてレイアが誘拐され物語が動き始めます。
誘拐犯ヴェクトを演じたのは、キャスリーン・ケネディ製作総指揮のBTTF2でニードルズを演じたRed Hot Chili Peppersのベーシスト フリーです。

食べ物の扱い方でキャラクターを表現する、俗に「フード理論」というものがありますが、スター・ウォーズの場合はドロイドとの関わり方でキャラクターが表現されがちです。


PART II

機能が不明瞭な玩具型ドロイドは初登場。ビジョンズの影響?

舞台はダイユーへ。
インチキジェダイのハジャ・エストリーの登場とそのくだりは程よいコメディリリーフでした。キャラクター自体も魅力的でしたし、反乱者との繋がりも気になります。吹替えの杉田智和さんもベストな配役だと思います。
今後も活躍の場を与えられる事を期待したいです。

物語はレイアとの逃避行へ変化していきます。
最近のアニメやドラマシリーズでは年長者と子供という組合せが続いていますが、これは「エピソード4 新たなる希望」や「エピソード1 ファントム・メナス」に倣っての導入のスタイルという事なのでしょう。神話やおとぎ話の話型であり「スター・ウォーズ」らしさと言えます。各作品はその形に様々な工夫が見られます。

オビ=ワンを追って尋問官も登場。
気になるのはサード・シスターことリーヴァの身の上です。どうやら大尋問官がスカウトしたフォース感知者のようですが、彼女が見せるオビ=ワンへの激しい執着は単に昇進のためなのか?という部分はファンの間で様々な憶測を呼んでいます。

またこの誘拐がオビ=ワンとベイルの関係からサード・シスターが仕組んだ罠だったこと、そして彼女が「ベイダー=アナキン」の事実を知っている事も明らかに。彼女が単にオビ=ワンの戦友の娘として攫ったのか、あるいはアナキンの娘である事実さえも握っているのか今後も注目です。

誘拐が容易だったことについては、オルデランが治安の良い銀河のコア・ワールドにあり、平和主義を掲げる非武装の惑星国家であること、誘拐犯の背後に帝国軍が居たという事で説明がつきます。レイアが言う「お父様の軍隊」は元老院の下にある帝国軍を指していると思われます。

ちなみに「エピソード6 ジェダイの帰還」吹替版での、ルークに語りかける瀕死のアナキンの台詞「娘に伝えてくれ、愛していたと。」は泣けますが誤訳です。

You already have,Luke. You were right. You were right about me.
Tell your sister...you were right.
(ルークがシャトルまで重傷の父を運び、助けると伝えるが)
お前はもう私を助けてくれたよ、ルーク。お前は正しかった。お前は私(に残る善の心)を解っていた。
妹に伝えてくれ・・・お前(ルーク)が正しかったと。

字幕版のほうがニュアンスとしては正しい翻訳になっています。アナキン=ベイダーはルークの心を読むまで娘の存在は関知していなかったと考えるのが自然です。

オビ=ワンがダイユーに到着後、レイアを捜す際に声を掛けてきたスパイスの売り子はユアン・マクレガーの娘クララ・マクレガーです。
また、物乞いをしてきた兵士はクローントルーパーです。帝国は徴兵制のストームトルーパーに切り替えていったためクローンは不要な存在となっています。彼らは「ボバ・フェット」と同じジャンゴ・フェットのクローンであり、演じるのはジャンゴ・フェットとボバ・フェットと同じテムエラ・モリソンです。現在の3つのドラマシリーズに出演したことになります。


PART III

オビ=ワンとアナキンが対決した火山の惑星にベイダーの城があります。「エピソード5 帝国の逆襲」のコンセプトアートに由来しますが、映像作品に初登場したのは2016年の「ローグ・ワン」でした。以来、コミックなどで描かれ今回ドラマシリーズでは初めて登場となりました。

マプーゾは帝国の入植地になっています。占領によって資源を根こそぎ奪われ、元の自然が破壊されてゆきます。
ゲーム作品「ジェダイ:フォールン・オーダー」ではウーキーたちの緑豊かな故郷キャッシークにも巨大な樹液精製施設が建設されていました。なお同ゲーム作品からは今回初めて「ナー」の尋問官の要塞が映像作品初登場となりました。

セーフハウスの壁にオビ=ワンが見つけた「クインラン」の名前は、「クローン・ウォーズ」でオビ=ワンと共にキャド・ベインと戦ったジェダイで、その生存が明らかになりました。スピンオフ発のキャラクターとしては歴史が古く1998年に登場し、実は「エピソード1」のモス・エスパのシーン(ジャー・ジャーがセブルバに殴りかかられるシーン)で彼らしきキャラクターがいます。
2015年には彼とアサージ・ヴェントレスを主役にした小説「Dark Disciple」が出版されています。(未翻訳につき私は未読です)

クライマックスについてですが、個人的に日本人にとっては日曜日の朝に見慣れすぎた採石場というロケーションは安っぽく見えてしまうなぁと感じました。日本ではこのシーンについて意見が二分しているようですが、それ以外は特に気になる要素はありませんでした。彼のセリフにあるようにこれは始まりに過ぎず、これからオビ=ワンは更にジワジワと苦痛を味あわされる事になるかもしれません。

第3話からは「ウィロー」新作にも参加しているハンナ・フリードマンが脚本に参加。
これまでのドラマシリーズはジョン・ファブローがほぼ一人で書いていましたが、初めて異なる体制で製作されています。それでもパブロ・イダルゴらルーカスフィルム・ストーリーグループの監修を受けて超マニアックな小ネタも多数盛り込まれていますし、デボラ・チョウが製作に際してデイブ・フィローニに相談していることも公言していました。(クレジットには「Special Thanks to Dave Filoni」!)

なお、IMDbの情報によると第5話と第6話の脚本には「トイ・ストーリー」をはじめとする多くのピクサー作品で原案・脚本・監督と務めたアンドリュー・スタントンの名前が挙がっています。
どんな展開が待っているのか今から楽しみでなりません。


「エピソード4 新たなる希望」への影響

ドラマ企画が発表されて以降、ファンの間で話題になっていたのはアナキンとオビ=ワンの再会が、ムスタファーの対決以来では無くなってしまうという事でした。

ターキンの台詞をより元のニュアンスに近く訂正(6/23)
ドラマはきっと後悔と失意の状態から、この境地に至るまでのお話か?

「エピソード4新たなる希望」での二人のやりとりです。台詞はブルーレイや配信中の吹替え/字幕はいまだ誤訳があるので、最近の設定も反映して私がなるべく本来の意図に忠実であることを心がけて翻訳を試みたものです。

この問題でポイントとなるのはまず「気配を忘れるほどの時間経過」だと思います。「〜新たなる希望」のルークが19歳なので同じ期間とされていました。
それが今回のドラマで約半分の9年になります。これを短いとする意見は解らなくも無いですが、ベイダーはデス・スターが完成するまで組織内での足の引っ張り合いや激化する反乱同盟との戦いに身を投じる事になりますので、(生き残りジェダイも意外と多いし尋問官は使えないし仕事は多い)「オビ=ワンが死亡したと帝国軍が認識している」という点からも、オビ=ワンがしっかり死亡する(完璧に死を偽装する)展開が描かれるのだとしたら、忘れていても変ではないかなと思います。

こうした時間経過の設定変更については「エピソード1〜3」の時点でもアナキンが若すぎるであるとか、クローン戦争勃発が遅すぎるなど色々と物議を醸した部分ではありました。そこは人の作ったファンタジーですし時代で色々変わるものとして、あまり真面目に考えるのも野暮だなとは当時も今も個人的に感じています。

紹介した台詞の中で、オビ=ワンはベイダーのことを「ダース」と呼んでいますがこれは「新たなる希望」製作時点で設定が固まっていなかった名残です。(字幕/吹き替えでは省略されてます。)「ベイダー」と呼ぶようになるのは「帝国の逆襲(1980)」、「シスの称号」という設定が固まったのは「エピソード1 ファントム・メナス(1999)」以降でした。
例えばシスに対する侮蔑の意味で「ダース」とオビ=ワンが言うくだりが今回のドラマで出て来たら面白いなとは思います。

この段階ではまだベン爺を演じている。
まさかレイアからの救援要請があるとは思っていないが久々にR2に会い興味を感じている。
(と、今では取ることもできる)

ルークとオビ=ワンの邂逅の場面です。これもオビ=ワンの名を使っていた時期が今回のドラマで10年繰り上がった形になりますが、表立ってオビ=ワンと自称していた時期という意味なら19年前に変わり無いのではと思います。今回のドラマでも繰り返して自分はベンであると主張しています。

レイアがR2に託したメッセージです。
今回のドラマでは、まだレイアは自分を助けてくれた人物の本当の名前を知りません。レイアがいつ彼の本当の名前を知るのか、今後ドラマの展開によってはこのメッセージの最後の一節の重みがかなり増すのではないかと予想しています。


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