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認識していないことを言語化させよう

人には“問われてはじめて意識する”ことや、“問われて改めて考える”ことが存在します。1人称の問いでは、リサーチクエスチョンなどの探究の問いがこれに当たるでしょう。

ここからは、情報という観点で整理したうちの、自分は知っているが、相手は知らない領域と、自分・相手のどちらも知らない領域の問いの領域に入っていきましょう。

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まず、自分は知っているが、相手は知らない領域については、問いを使わずにあなたが情報を伝える“指摘”でもよいはずです。それでは、この領域で問いを使うメリットは何でしょうか?

相手が知らないことを問う3つのメリット

1つは、“自分は知っている”と思っていることが間違っていた場合に、修正できるということです。
思い込みで指摘してしまって、もしそれが間違っていたら、お互いに不幸なことになるでしょう。

2つ目は、相手に考えたり、思い出す機会を与えたりすることができるということです。これは次のメリットにつながります。

3つ目は、考えたり、思い出したりした内容について相手に話をさせることで、本人の納得度を高められるということです。
自分で考え(あるいは思い出し)、自分で話したことは、自分で否定することはできません。自分で口にしたことだからこそ、納得せざるを得ないものとなります。

子供の成長を促すケース

まず、ポジティブな内容の例から解説していきましょう。

例えば、子どもが縄跳びで初めて20回以上跳べたとします。「すごいね! 何回飛べた?」というのは事実を確認する問いです。

この段階では、自分も相手も知っている情報ですね。このとき、感情を共有したいなら「今、どんな気分?」という問いを挟むのもよいでしょう。

さらに「なんで、こんなに飛べたのかなぁ?」という問いは、また20回以上跳べるようにぜひ共有しておきたいところです。

「最後までがんばった」「慌てないでゆっくり回した」「縄をよく見て跳んだ」など、さまざまな答えが返ってくる可能性があります。それは側で見ていたあなたも知っていることでしょう。

ここでその答えに対して「そうだね。最後までがんばったね。次もがんばれるかな?」とさらに問いを続ければ「うん、次もがんばる」という答えが返ってきそうです。

このとき「すごいね! 25回も跳べたよ、がんばったね。次もがんばろう!」と単に伝えるだけという選択肢もありますね。このように聞かされるだけの場合と、自分で「25回だった!」「やったね!って感じ」「最後までがんばった」「うん、次もがんばる」と自分で口に出したのとでは、どちらが次につながりそうでしょうか?

部下に改善を促すケース

改善点がある場合も同様です。今度はビジネスのケースで考えてみましょう。

部下のひとりが、プレゼンテーションで失敗してしまいました。どうやら準備時間が足らなかったように見受けられます。

そこで「自分では、今日のプレゼンは何点くらいだったと思う?」と問われると、部下は「本当はこれくらいやりたかったのに、あれもこれもできなかったなぁ」ということを思い出しながら「65点ですかねぇ」などと答えるでしょう。ここで初めて認識が言語化されました。

「どのあたりが35点のマイナスかな?」と問われたら、もう少し細かい振り返りをしてくれそうです。
「パソコンばかり見ていて、全然前を見て話せませんでした」「資料も字ばかりで見にくかったと思います」「最後は時間切れで全部伝えられませんでした」など、さまざまな答えが返ってくる可能性があります。

さらに次につなげるために「なぜ、そうなってしまったと考える?」という原因を聞く問いを投げてみましょう。「準備時間が足りなかったと思います。見積もりが甘かったというか……」。

この後、「今回のプレゼンの長さは?」「20分です」「じゃあ、20分のプレゼンを準備するのに、どのくらいかけたらよかったと思う?」「2時間、くらいですかね」「つまり、20分の何倍かな?」「6倍です」と続けば、次のプレゼンでは、自分の答えた「プレゼンの6倍の時間を最低かけて準備する」という言動が期待できそうです。

このときも、単に「今回のプレゼンは65点。パソコンばかり見ていて、全然前を向いてない。準備時間が足りなかったからそうなったんだ。次回は最低プレゼンの6倍は時間をかけて準備するように、以上。」と指摘だけしたらどうなるでしょうか?

最悪の場合、単に「プレゼンに失敗した」という印象だけが残ってしまい、次はできるだけプレゼンを避けようとするかもしれません。

コーチングやカウンセリングで使える問い

まだ言語化や認識されていない、相手の情況を共有する問いというのはコーチングやカウンセリングのときに多く使われるものです。これは、上記のように日常生活やビジネスでも役に立つものなのです。

それでは、いくつか練習してみましょう。ここでは、まず、共有したい情況についてピックアップしてください。それに対して、事実を確認する問いを1つ、そして感情や認識に関しての問いを2つつくってみましょう。

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