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【鑑賞日記】翻訳できない わたしの言葉を観に行った

翻訳できない わたしの言葉@東京都現代美術館

言葉とは何か。

言語とは何か。

言語はコミュニケートや自己の表現の手段足り得るのか。

さまざまな、いわゆるマイノリティのインタラクティブなコミュニケーション事例をもって鑑賞者に考えるきっかけを提供するということが目的の企画展でした。

5人の作家による作品は、それぞれ抱える課題感や目的意識は異なりつつ、観る者たちに対して「あなたはどう考えますか?」という問いかけをしてきます。

その中で自分がより強く心を動かされたのはユニ・ホン・シャープの、言葉を伝えるためにネイティブな発音を練習する作品。言葉(つまり思っていること)を伝えることの重要性を主眼とした内容ですが、しかし、その正しさが”伝えること”にとって必須なのかという根本の問いも内包しています。

作家もその課題感を持ってはいるのですが、作品自体はそのことに対する是非については描いてはいません。あくまでも鑑賞者が考えることとしているのが、逆に心に響きました。

もうひとりは、新井英夫。さまざまな手段で感覚を研ぎ澄ましていく作品群は静かでありつつも刺激的。たとえば水の入った袋を体に乗せて、その感覚さやかな音を感じる作品。たとえば鈴の入った箱を持ち、体のささいな動きで鈴が小音を鳴らしてしまう感覚を体感する作品。

感覚を研ぎ澄ましていくこと自体を楽しむ作品でしたが、アートを感じ取るためのレッスンとなっているのだなあと思いました。
またその行為を楽しむという仕掛けそのものがアートでもあり、このような取り組みでアートを届けることの楽しさ面白さが(その根底にある壮絶な覚悟もふくめて)本当に凄いと感じました。

冒頭に書いたとおり、すべての作品は密やかに静かに思索することのきっかけを提示しています。あとは受け取った自分がどう考えるか。じっくりと考えていきたいと思います。

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