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10.なぜNZ企業が香港に子会社置いてるの? NZが親中だから、何かあるのでは?

するどい質問です。


香港に現地法人を置く企業は珍しくない

かつてはイギリス植民地で、1997年に返還され中国の一部となった香港。

一国二制度と呼ばれ特別行政区として独自の統治・経済運営を保証されていたはずの香港行政に2019年の民主化運動弾圧、2020年の香港国家安全維持法施行を経て、中共・北京政府がガッツリ干渉していることから、いわゆる西側陣営・民主主義国の法人であっても「香港籍」というだけで何かしらの不安を感じる人の気持ちは、非常によくわかります。

しかし、だからといって、香港と名のつくものすべてが中国共産党政府の意のままになって動く、などと考えるのは論理の飛躍が過ぎます。
「香港に現地法人を設立する外国企業、その目的は日本の土地を買い占めて中国様に召し上げるため」などと本気で言う人がもしいたら、その真偽はともかく、世界のビジネスシーンでは相手にされないと私は思います。

香港でビジネスする理由1 会社設立が簡単

例えば、香港に法人登記をする場合、株主と役員は1人以上からで、香港非移住者でも株主や役員になれます。資本金は1HKドルからでOK。事前に決定すべき事業内容も、日本のように詳細な事業目的を列挙する必要はなく、おもな事業内容を決めれば充分とされており、会社設立後に異なる事業を起こしても問題はありません。

香港進出のメリット・デメリット|日本企業の進出動向 より引用

香港でビジネスする理由2 税金が安い

また、オフショア所得非課税と呼ばれる、香港内源泉所得のみが課税対象となる制度も存在します。これは香港と香港外(オフショア)の両方から二重課税される可能性を防ぐための規制で、法人が香港外(オフショア)で得た所得は原則的にすべて非課税扱いとなります。

法人税の税率は一律で16.5%。前述のように、香港を源泉とする所得のみ課税対象となっています。

個人所得に関しても低い税率となっており、最高17%の累進税率と一律15%の選択適用が可能です。高所得者の税率も15%課税されるのみとなっています。

香港進出のメリット・デメリット|日本企業の進出動向 より引用

香港でビジネスする理由2 中国本土への窓口として有利

中国本土からは、包括的な経済連携協定であるFTA(自由貿易協定)と同じとされる、CEPA(経済貿易緊密化協定)などにより、香港企業はもちろん、現地進出の外資系企業にも、中国ビジネスにおける優位性が付与されています。

中国ビジネスを重要視する企業にとっては、上記のような中国のゲートウェイとしての役割をになっており、かつ中国本土よりもビジネス環境が整った香港に進出することは、計り知れないほどのメリットがあることは言うまでもありません。

香港進出のメリット・デメリット|日本企業の進出動向 より引用

外国企業が香港に現地法人を設立するメリットは、大きくわけてこの3つになります。
デメリットもありますので、引用元を参照ください。
こうしたメリットを考えれば、別段中国共産党様にしっぽを振るポチでなくても「香港に現地法人作って商売するかな」という気になると思います。

もっとわかりやすく、香港現地法人が多いことがわかるデータがあります。

農業経営者 2020年11月「特集  外国資本による土地買収」より引用

これは農地ではなく日本の森林を買収した外国人・企業のデータですが、香港がダントツで、また小国であるはずの英領ヴァージン諸島、シンガポールなどが上位にある点が目に付きます。
人口世界一であるはずの中国が、香港の1/20以下でしかないなんて、変だと思いませんか。

これらはいずれも、税率が低いタックスヘイブンと呼ばれる国・地域のため、多くの外国企業がここに現地法人を設け、それを通して日本の土地を買っているわけです。必ずしも現地の香港人や英領ヴァージン諸島の国民が日本の土地を買っているわけではないのです。
中国(香港)という文字だけを見て、その背景を探ろうとしないと、誤った認識を持ってしまいます。

ニュージーランドは「親中」と呼ばれているが…

Google検索等で「ニュージーランド 親中」と検索すれば、日本人にだいたいどんなふうに見られているかわかりますね。

しかし、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵略開始の前と後で、ニュージーランドの中国に対する態度もかなり変わったような気がします。

まず、国連総会緊急特別会合の2022年3月2日「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」では、中国は棄権し、ニュージーランドは賛成。明確に立場を示しています。
その後も2022年10月12日「ロシアによるウクライナ4州併合を非難する決議」でも同様に、中国は棄権し、ニュージーランドは賛成

そして2022年6月には、NATOは日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドに対し、ロシアだけではなく「中国」も念頭に置いて、両国の戦略的協力を警戒するNATOとの共闘を求めてきており、各国も同調しています。

ニュージーランドも、ロシアと連携したときの中国を「国際秩序に対する脅威」とする立場に、旗印を掲げたわけです。
もちろん、中国外交部はNATOのこの動きに対し猛烈に非難しています。

現在のNZ首相ヒプキンス氏は、「中国は貿易上重要なパートナー」と述べていますが、それは日本の岸田首相も同じことを言うでしょう。
今現在、世界中の、もちろん先進国である西側諸国の大半も、悲しいかな事実として中国との貿易無しには成り立たない経済状態にあるのですから。

まとめ

つまり、何が言いたいかというと

民間の「商売は商売」

政府の「外交は外交」

それはそれ、これはこれ。

この切り分けができずに物事を考えるから、香港に現地法人を置いただけで、その企業を「中国共産党の手先」扱いしてしまうのです。

なお香港に進出している日本の企業数は1,404拠点(2017年10月1日時点)だそうです。
E社がニュージーランド企業の子会社であることがわかった後も、攻撃を続ける方がもしいたら、なんで日本国内にある中国共産党の手先の1,404社の親会社(日本企業)にも同じように攻撃しないのか、お尋ねしたいところです。