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甘い静かな時間 9

電話の向こうで話す彼の声が心地いい。
「電話、ありがとうございます
すごく嬉しい」
そんな言葉に、声にならない。
まるで初めてできた彼氏と電話しているみたいだ。

何やってんだか・・私

と思いながら、何を話したらいいか分からないでいると

「あやさん、今から時間ありますか?」
と言われ、びっくりした。
「え!今から?」
「はい、今からです」

わたしは戸惑いながらも
「えーっと、夕方ぐらいまでなら大丈夫です」
「よかった、少し会えませんか?」
「えーー会う!会うって会うこと?」
いや、私何言ってるんだか、動揺しすぎて言葉が変だ。

そんな動揺している私に
「あやさんってほんとかわいいですよね」
と、彼が笑いながら言った。

「可愛いって・・」
可愛いといわれて情けないと思った。
「そんな可愛いっていう年でもないし、大人げないよね」
というと
「僕はそんなあやさんが好きですよ」

どうしてこんなにストレートに言ってくるんだ。
慌てた私は顔が赤くなった。

「ねえ、今顔赤いでしょ」
と、彼が言ってきた。
「え?いや、そんなこと」
と動揺していると
「早くその顔が見たい」
と、さっきまで笑っていたのに、まじめな声で言った。

直接耳元でささやかれているようで、体が熱くなる。
電話はだめだ
彼のあの声が直接耳に響いて、緊張が抑えられない。

そんなことを考えていると
「あやさん、こうしている間も時間がもったいないです」
「よく行くcafeがあるんですけど、来てもらえますか」
「はい、行きます」
と、私も会いたいと思う気持ちが即答させた。

「ほんとに!じゃあ、WHITE SWEETっていうcafeがあるんで、そこで待ち合わせってことで」
そういって、彼はお店の場所を丁寧に教えてくれた。

私はすぐに出かける用意をした。
何を着て行こうか
気合い入れすぎると、何頑張ってんのってなるし
少し軽めにしておこう

私は出かけない日も化粧はしているが、これは化粧直ししないとって顔だ。
でも化粧って適当の方が綺麗に仕上がるのよね
頑張りすぎると厚化粧のおばちゃんになっちゃう

まるで女子高生が初デートに行くみたいだ。

とにかく落ち着け!
と自分に言い聞かせて、お店に向かった。

ほんとに名前の通り真っ白だ

彼が待ち合わせ場所にしたcafeは真っ白で、ガラス張りだ。
店内のテーブルや椅子も白で統一されている。

吹き抜けになっていて螺旋階段が上まで伸びている。
その螺旋階段の途中にも席が設けられていて、贅沢で優雅な空間だ。

私は彼がいないか探しながら結局上まであがってしまった。
彼はまだ来ていなかった。

ちょうど窓際の席が空いていたから、そこに座った。
「いらっしゃいませ」
可愛い若いスタッフの女の子が、お水とメニューを持ってきた。
「後からもう一人きますので」
と告げた。
「ご注文はそれからにしますか」
と言われたけれど、もしもやっぱり来れないとか言われたらとか、すごく遅れてきたりとか、と思い、
「いえ、先に注文します」
と言ってお店のおすすめというホットコーヒーを注文した。

来ないかもとか考えてしまう
私って結構ネガティブかも

と自分で自分が嫌になると思った。

そんなことを考えていたらすぐにコーヒーが来た。
結構早いな
と、一人でツッコミを入れながらコーヒーを飲んでいると、ちょっと笑いが出た。

「何考えていたんですか」
とほほ笑む彼がそばに立っていた。

え!いつの間に!
とびっくりしてかたまってしまった。
と同時に、よかった来てくれたんだというほっとした気持ちが顔に出て、思わず気が緩んだのを、彼は見逃さなかった。

「僕と会えてそんなに嬉しいんですか」
と言われ、
「いや、別にそんなんじゃ・・」
下をむいていると
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
とさっきの女の子が来た。
「ホットコーヒーで」
と、彼も同じものを注文した。

相変わらず私は彼のペースにのせられてる

「ここのコーヒー美味しいんですよ」
「私もメニューを見て知ったわ
特別に焙煎しているのね」
「そうなんです
オーナーが直に海外まで行ってコーヒー豆を選別してきてるんですよ」
「すごいこだわりなのね」
と、話す彼の顔はとっても真剣で素敵だ。

「あやさんがコーヒー飲むの珍しいですよね」
「そう?いつも紅茶ばかり飲んでいるものね」
「そうですよ
紅茶しか飲まないと思っていました」
「確かに紅茶の方が好きだけど、このお店のようにこだわりある美味しいコーヒーなら飲むわよ」
というと、
「それならcalmeのコーヒーも専門的なこだわりあるコーヒーなのに」
と、ちょっとすねたように言ってきた。

こんな顔するんだ
私は彼の違う一面を見た気がして、ドキッとした。

「じゃあ次行ったときはコーヒーにするわね」
と言ったとたん、さっきまでの子どもみたいな顔が急に大人びて
「ダメです」
「え?どうして」
ダメと言った真剣な顔に、ちょっと緊張してしまった。

「だってあやさんがコーヒーにしたら、僕が入れたブレンドのフレーバーティー飲んで貰えなくなるじゃないですか」
「あやさんが僕の紅茶飲んでくれる顔みてるのが嬉しいのに」
と、私の顔を真剣に見ながら話してくる。

そんな彼に私は愛おしくて、出来る事なら今すぐ抱きしめたくなった。
そして思わず
「きらくん・・・」
というと
「初めて名前呼んでくれましたね
嬉しいです」
と、テーブルの上に置いていた私の手をそっと握った。

びっくりして一瞬ぴくっと反応してしまった。
でも彼の優しい手のぬくもりが心地よくて、
「ありがとう そんな風に思っていてくれてたのね」
と言って握り返した。

でも顔はまともに見れなかったが・・・

「あやさん・・・
顔赤いですよ」
と、ささやかれ
「もう、ダメだったら」
と、少し笑いながら言うと
彼も静かに笑った。

to be continued・・・



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