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甘い静かな時間 8

calmeに着いた。
「いらっしゃいませ
あ、ご無沙汰してます」

とよく知る女性スタッフがいた。

席に案内されて、さりげなく周りを見たが、彼の姿が見えなかった。

「ねえ、彼居ないの?」
「うん、居ないみたい、休みなのかな…」

お店に着くまでは、いっそうのこといなければいいのにって思っていたけど、いざ居なかったら寂しいと思った。

「あやちゃん、寂しいって顔に出てる」
とさとみさんは少し笑って小さな声で言った。

「え?顔に出てる?
どうしよう、やだな〜」
と少し笑うと

「そういうところなのかもねー
彼があやちゃんを好きなのは」

「もう、茶化さないでよ」
と話していたら、彼が側まで来ていたことに、全く気づかなかった。

「いらっしゃいませ、楽しそうですね」
と、にっこり笑って立っていた。

え!いつの間に?
あっ、どうもとたどたどしくいうと

「さっき女性スタッフが、来てるって言ってたんで」
と、注文した料理をテーブルに置きながら彼が話した。

どういうこと?
私のこと何か話してるの?
と、すごく動揺してると

「よく来てくれるお客さまが久しぶりにきてますねって、話してただけですよ」
と、笑って
「ごゆっくり」
と、去っていった。

「完全に手の上で転がされてるって感じね
どっちが年上か分からないわね」
と、また笑いをこらえながらさとみさんが言った。

「もう、あーいうところなのよ
あの屈託のない笑顔で私を困らせること言ってくるの
罪だと思わない?」
そういいながら彼のいたずらっ子そうな顔を思い出しながら話していると、顔がほころんだ。

そんな姿を見てさとみさんは
「あやちゃん、ほんとに彼が好きなのね
そらそっか、いきなりキスされたしね」

と囁きながら、化粧室に言ってくると席を立った。

「もう、さとみさん……」
と、私も笑いながら、紅茶を飲んだ。

さとみさんがいてくれて良かった
この胸の鼓動はひとりじゃ耐えれないわ
と思ってると

「来てくれてありがとうございます」
と、彼が水を入れに来た。

ほんとにいつも不意打ちだ。
いつの間に?と突然やってくる。

でもこの間のキス、そして彼が言ってくれた好きだという言葉。
思い出すと顔が見れない。
胸が熱くなってドキドキする。

でも傘のこと言わなきゃと思い
「あの……傘、ありがとうございました、助かりました」

「役に立ててよかった
後で貰いますね」
と、彼がにっこり笑った。

この笑顔がたまらない
やはり八重歯が可愛いと思うとキュンとなる
心臓の鼓動がほんとにやばい

と思ってると、彼が耳元で囁いた。
「僕の気持ちは嘘じゃありませんから」と。

そう言って、立ち去っていった。

さとみさんが、彼と入れ違うように戻ってきた。

「なになに?
何話してたの?
戻れなかったわと、軽く笑った」

「うん、この間私に言ってくれた気持ちは嘘じゃないからって」

「あー好きって告白した事ね
彼、なかなかやるわね
いいんじゃない?
あやちゃんも気持ちに応えても」
と、にっこり笑うさとみさんがマリア様に見えた。

一時calmeで過ごして、帰る時キャッシャーに彼がいるのを見て、
今日はあやちゃんよろしくと、私に伝票を渡して来た。

calmeは同一会計だからいつもどちらかがまとめて払っている。

えーでも、彼が、
という私の言葉も聞かずに、行ってしまった。

緊張しながら、彼に伝票を渡した。

「ありがとうございます」
と、いつも通り仕事をこなしてる

この姿がやっぱり好きだな
キリッとした仕草で、レジを打ち込む動作もスマートだ
それにいつ見てもきれいな顔してる

とガン見してると
「〇〇になります」
という彼の言葉にハッとして慌てて、
「あっ、カードで」
と、彼にカードを渡すと、淡々と会計をこなしていた。

そしてレシートを渡された時、1枚のメモを一緒に渡された。

なに?何かある
と思って見ると、彼の携帯番号が書いてあった。
えー!
と動揺していると
「あの、傘返して貰えますか?」
と言われ
そうだった
でもこのメモも、どうしよう

と思いながら、彼に傘を渡すと
「ありがとうございます」
と言ったあと、小さな声で
「そんなに僕のこと好きですか?
さっきガン見してたでしょ」
「いや、別に……」
といいながらも、図星なところに顔が見れなくて下を向いてると
「ここではキスできないんで……
連絡…待ってます」
と言って微笑んだ。

私はかなり顔が赤くなるのがわかった。
ほんとにだめだって
体が暑くなるのがわかる。
返す言葉も出てこなくて、動揺したまま店を出た。

店の外で待ってたさとみさんが
「何話してたの?
顔赤いわよ」
とニヤニヤしてる。

駅に歩きながら
「メモを貰ったの
電話番号書いてるメモ」

「へー
彼ほんとに積極的なのね
若いなー」
と感心している。

「感心している場合じゃないわよー
どうしよう」

「答えはひとつよ
かけるしかないでしょ」

「えーでも……」

そうしている間に駅に着いた。

「じゃあね!
電話、ちゃんとかけなさいよー」

と大きく手を振ってさとみさんは、違う電車の駅に向かった。

電話をかけると言ってもタイミングが分からない
彼がいつ仕事か分からないし
私も夫がいる時はムリだし……

と、中々電話を出来ずにいた。

でもある朝、
今日こそかけよう
と自分に言い聞かせ、かけてみた。

コールがなる。
心臓がとび出そうになる。

このまま出ないで、いや出て

そんな言葉が頭の中で交差する。

「はい、もしもし」
と、彼の声

静かで囁くような声、その声に胸が熱くなる、緊張のあまり声が出ない。
黙ってる私に

「あやさん?」
と言ってきた
私はハイと言うのが精一杯だった。

「やっぱりあやさんだ
おはようございます」

と、優しく穏やかで、心地いい声で彼が言った。
受話器から聞こえる声が、直接耳に囁く。

鼓動が激しくなって胸が熱くなる

「おはようございます」
と私も返した。

to be continued・・・


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