遠征先に帰りたい

ひっさしぶりに身体が鉛のように重たい。
まずい。
わたしのプチ鬱スイッチが入ってしまったのかもしれない。


土曜日の日中が意図せずぽっかりと空いてしまい、
わたしは正直めちゃくちゃ焦っている。


田舎だから、タイミーでも直前ではろくな求人が無いのだ。
今までは水曜日か木曜日までには予定をきちんと入れていたので、こんなことは初めてだ。
今月はちょっと余裕があるから、
ギリギリまで出ない好きな人がいる工場の募集を待ってみたら、
昨日仕事中に埋まってしまったのでこのザマだ。
もう木曜日の夜は他の仕事を入れるのを止めようかと思う自分と、
もう好きな人のことは考えずにできる仕事でどんどん埋めていかないと夏の遠征費が出ないぞと焦る自分がいる。
暇なのに稼げないなんて勿体なさ過ぎて悔しい。
いつからわたしはこんな貧乏症が悪化していたのだろう。


先週の今頃は遠征先のホテルを出た頃だろうか。
遠征先が恋しい。
わたしの好きなバンドマンが今も暮らしていて、
コンサートの日には好きなバンドの曲をずっと流してくれるレトロな喫茶店があって、
他のメンバーの実家のお店がファンの聖地になっているから、
コンサート当日は狭いお店でたくさんの女性が買い物をしてデパ地下みたいに混んでいて、
他のファン達と明らかに世代の違うわたしがひとりで現場にいたら、
いろんな人が声をかけてくれた優しい街。
そこからバスや電車に2時間近く揺られれば、
わたしの趣味の分野の博物館や遺構が残っていて、
ペーパードライバーのわたしにはとても回りきれないほど行きたいところがたくさんあるのだ。
博物館を見る時間を2時間近く取っても、
ガイドのおじいちゃんに「もっと時間があったらねぇ〜」と言われてしまうほどだ。

こんな暇を持て余すのがあの街だったらどんなにいいだろう。

わたしの地元には、
あのバンドの曲を流してくれるような洒落た喫茶店なんてない。
あの街からは遥かに離れた土地だから、メンバーゆかりの地も聖地も何も無い。
わたしの地元からも趣味の分野の博物館には行けるけれど、
もう行き尽くしてしまったし、
日曜日にまち歩きのイベントに行く予定だから土曜日は行かない。
田舎だから交通費も馬鹿にならないのだ。


昨晩も悲しくて悲しくて、
先週観に行ったバンドの昔の雑誌を見てから寝た。
先週は幸せだったなと思うと、
ちょっと涙が出てくるような気がした。
そのせいか夢にも出てきた。
わたしの地元でもう1度コンサートをする夢だった。
(好きなバンドはラストツアーをしていて、わたしの地元の公演は去年終わっている)

ホールの座席を確認して座る夢を見て、
先週のことを思い出す。
ホールの雰囲気はもちろん、
休憩中に女性お手洗いが混むから、
隣の建物のお手洗いまで行く細い階段も、
並んでいる間周りにいた気合の入った女性達も、
まだ鮮明に覚えているけれど、
あれからもう1週間が経つのだ。
みんな帰っても幸せなのかな。

お手洗いで並んでいる間に周りを見たら、
2daysだったからか隣の建物のお手洗いまで来ているのはほぼ同じメンツだったのが面白かった。
みんなワンピースやスカートを穿いて普段よりおめかしして来たのが手に取るようにわかるし、
おそらくコンサートに合わせて美容室にも行ってきたんだろうなとわかる。わたしもそうだから。

わたしもワンピースを着て行ったけれど、
地元では着る機会がほとんどない。
いつも汚れてもいい黒いズボンを穿いて働いている。
ワンピースで行ける職場なんて本業(デスクワーク)くらいだろうか。

とってもやる気がしないけれど、
今日も本業はある。
本業をしつつ、明日の仕事も探していかないといけない。
本当は好きな人の職場のキャンセルが出て潜り込めたら最高だけど、
いつもキャンセルも瞬殺で埋まるので厳しいだろう。
だからもう他の職場でもいいから埋めたいけれど、
きっと他の職場を申し込んだら、
その後に好きな人の職場のキャンセルが出て、
それがなかなか埋まらなくてずっとモヤモヤイライラする自分が目に見えるようなのだ。

こんな馬鹿みたいなつまらない状況から1日も早く逃れられるようにわたしは願っている。