見出し画像

ミャンマー、寄付、スパイダーマン

 ミャンマー、バングラデシュ国境間のロヒンギャへの弾圧、難民問題が起こってしばらくして、福岡駅近くの路上で国連UNHCR協会の寄付を募っている人からパンフレットを手渡されて以来、毎月ずっと寄付を継続している。
義務感や使命感というわけではなく、クーデター前のミャンマーを訪れた時に国の経済が人々の寄付でまわっていることにとても感動して、私もそうしたいと思ったからだ。
寄付は見返りを期待するものでなく、人から施しを受けた際にはお返しをせず、また別の人に施しをすることで経済が循環するんだと、ミャンマー人アーティストのミン・ティエン・ソンに教わって、なんて合理的で温かく進歩的な社会だろうと思った。
そして、とても明るくて温かく私を迎えてくれたミャンマー社会でロヒンギャのような悲惨な問題があることが信じられない気持ちだった。 

 博多駅を歩いていたら、国連UNHCR協会の寄付を募る若者が街行く人に声をかけていた。
私は「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」を見たくて多少急ぎ足でその前を通りすぎようとしたら、彼からUNHCRをご存知ですかと声をかけられた。
すでにこの時点で私はちょっと嬉しかったはずで、毎月寄付をしていますよと答えた。
すると彼は驚いた様子で、いつから寄付を続けているのかと聞いてくれたので、ミャンマー人の友人の話をして、ロヒンギャ問題にとても心を痛めているというような話をした。
多くの日本人が、寄付を始めても一年間ほどでやめてしまうらしく、何年も続けている私は珍しいらしい。

 その後、私は彼に今どうしてこの仕事をしているのかと聞いた。
彼はかつて自衛隊にいて、海外に派遣されたことはないが災害派遣で現地に行っても、行動が制限されており消防やレスキューほど活動できることがなく、また海外の話を同僚から聞くにつけ、ここにいても何かに貢献できている気がしないように感じて、やがて職を辞して今この仕事をしているというようなことを話してくれた。
20代前半で、この先この仕事を続けるのかどうなるかは分からないが、今やれることはやりたい気持ちでいると言い、そんな話を初対面の私にしてくれたことに感動して、今日話を聞けて良かったですと感想を述べ、握手をして別れた。

 日本に暮らしていて、つまらないと思うことのひとつに商売以外で他人と言葉を交わすことが少ないと思っているけれど、それはたぶん私の心の持ちようであって、本当はスパイダーマンを見終わった後に、その感動を見も知らない隣の人と共有しあってもいいはずだ。
残念ながら、その回では私の周囲に誰も座っていなかったので、震える感動を胸に大人しく帰宅したが、そう言えば今日は色んな人と無理なく話をできて楽しい日だったなと思った。

 ここ数日、Instagramのアカウントに制限がかかっていて、いいねやコメントが出来ない状況で、ブックバーひつじがのご店主が順調にMCU作品を消化している様子を見ていて、スパイダーマン観賞の前に彼と話したくてバーに行きその事情を話すと、それは店としてはお客さんが直接足を運んでくれる最高の状況なのでお客さん全員Instagramの制限かかってほしいと言われ、確かにそれはそうだ最高だと思った。
この調子で、無理しないで楽しく生きていこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?