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ご近所ビジネスモデルの崩壊

もう、太古の時代。
サザエさんがモデルケースになる時代の話。
「ご近所」には価値があった。
防災、祭り、回覧板。
それらの繋がりには、そこから恩恵を受けるビジネスが並走している。
三河屋のサブちゃん。御用聞きに回ってくる敏腕営業マン。
それだけではなく、不動産屋さんも、八百屋も、魚屋も、肉屋も。商店街に歩いて買いに行くその距離に、顧客となる主婦がいるのである。
つまりは、地元の商圏を生業とする事業主が顧客である地域住民と密になって、地域のボランティア活動も支えている、ビジネスモデルなのである。

こうしたビジネスモデルの中に、「神社仏閣も含まれる」と、拡大解釈すると、神社へ参拝する住民(顧客相当)や、寺を利用する檀家(お盆に毎年利用するサブスク顧客。墓所を契約している複数年契約顧客)を抱えていると定義してみる。

そうすると、地域住民を繋ぎ届めておくことが神社・寺においても、その存在意義を継続できる。あるいは、修繕において理解や協力を得やすいのだ。
地域の結束を密にすることは、近隣の商店主についても、恩恵を受けられることは、イメージしやすいだろう。
また、水源を同じくする農業では、水路の清掃活動は、共同のメリットとなる。地域で実施する日を決め、皆で取り組むのは、当然の行いだろう。

このように、地域の祭り、ボランティア活動の中核には、ビジネスモデルが介在している。
そして、そのビジネスモデルを堅持することこそ、生き抜く術として、妥当なのである。

では、なぜ、現代において、近隣・町内会・祭りなどが衰退していったのか。
これは、中核をなすビジネスモデル(事業者)の不在である。
住宅団地として建設された地域には、もともと存在する神社仏閣(墓所)などもない、住宅団地内に日用品の販売者も不在にもかかわらず、「地域の結束」という旗印の元、祭りが開催されていたりする。
この場合、祭りを行うことによってメリットを享受する事業者は不在なまま、労役を提供し合うことだけが、その核を担うことになる。
いわゆる、全員手弁当。である。

ボランティアは美しいが、永遠に継続できるのか?という問いには、あまりにも不安定すぎる活動である。
宗教上の教えから、自らの愛を体現するために行う「修行」的な考えが定着していない日本において、時間をかけて瓦解していくのは当然と言える。
手弁当を用意できる「余裕」が失われた時、地域のボランティア活動も終焉する。
当時、その活動を担っていた「主婦」が不在となり、ほとんどの女性が労働者となった今、ある種の「余裕」は、地域には残らず、労働の場へと吸い取られていく構図だ。

では、地域の結束によって利潤を得る者はどこにいるのか?
それらは時代と共に、スーパーマーケットになり、郊外型大型店舗になり今に至る。
車での移動を促すことによって、地域へのボランティアという枷を外したうえで、事業による利潤を得るのである。
さらに、令和になった今、スーパーマーケットも郊外型大型店舗も苦戦を強いられ、インターネット上の販売者へと、舞台の主役は移っている。

インターネット上の販売者には、もはや、「地域」など見えていない。物流だけが顧客を繋ぎ、その物流は、送付者が顧客である以上、受け取る者は直接の顧客ではないとも定義できる。

では、地域の問題はどのように解決するのか?
これはある意味で、起業と同じである。
地域に必要なモノ・サービスを、その地域が製造し販売するのだ。
明治初期に、地域の住人によって、発電所が設置された事例がわずかだがある。
現代では考えられない資本力だが、今の日本には、こうした、地域のための起業、そして、子どもたちの労働場所を地域内につくるといy考えが必要なのである。

理想は、ピラミッド型の人口構成。若い者が多く、高齢者が少ない状態だ。
人間は後期高齢者として産まれることはない。同様に、医療が充実しても一定数命は失われてしまう。
だからこそ、自然減を想定しても、合計特殊出生率2.00以上を、地域の中達成していく必要がある。
さらに、教育。
保育から大学まで、さらに、大学卒業後の就職先も地域内に想定できる状態が好ましい。
つまりは、子どもたちの夢が、現実を伴って生業となるものが、地域の中に存在する状態を意図的に作り出すことが必要なのだ。

特に、外部に資金を流すことなく地域の中で完結し、内側で経済が回る状態が、好ましい。
現時点での多くの村や地域が、外需獲得よりも、消費による資金の外部流出のほうが多い状態である。

地域で生まれた産業による商材で、外貨を得てくることが、地域の存続にとって、とても重要だと考えることができるだろう。
これまでサラリーマンによる外貨獲得のみを頼りにしてきたビジネスモデルを、地域ごとつくりかえる必要がある。

例えば、地域のために水力発電所を設置し、地域全体の電気をまかなったあと、余剰分を隣町に販売するようなイメージだ。
設置した投資分の減価償却費を地域住民の消費から受け取り、さらに、近隣の外部から消費による使用料を獲得するのだ。

その地域は、どのような商材やサービスを開発できるか。
何人の住民を地域に結びつけ、
何人の移住者を増やし、
何人の子どもたちを誕生させ、
何世代にもわたって地域に居住し続ける家計を維持できるのか。

そして、インターネットを活用し、外部からの需要と外貨を獲得することで、地域内の設備刷新と新規設備投資を実行できるか。

地域おこしは、そこまで検討して可能性を見出すべきだと考える。
そして、このご近所ビジネスモデルの再構築こそ、地域のボランティア活動も含めた活気ある地域再興のメソッドなのだと、筆者は考えているのである。

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