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モルヒネよりキマる電子ドラッグの話|今日の「ヤバい!VR」#11

こんばんは。
ARの会社を設立した大学院生(@iwhododo)です。
VRは注目の高い領域だけに、日々大量のニュースを目にします。
そこで毎日1つだけVRに関連したトピックを取り上げてお届けしています。
※ちなみに選定基準は100%の独断と偏見に基づきます。

今日のトピックは「VRを活用した患者の苦痛軽減」です。

この記事のまとめ

VRでオピオイド鎮痛薬の減量が可能との研究結果
米カリフォルニア州のハーグ病院はVRを実際の治療に活用

VRで急性および慢性の痛みを治療するためのガイドラインを策定中

米ホーグ病院の先進的な事例

米カリフォルニア州にあるホーグ病院。
神経外科医のRobert Louis氏はこのホーグ病院であるプログラムの責任者を務めています。彼は以前から脳手術の計画や予行練習にVRを利用していましたが、他の形で医療現場にVR技術を採り入れることにも熱心でした。
今回紹介された事例では過去6週間で200人ほどの患者を治療。新型コロナウイルス(COVID-19)に感染していない入院患者が対象者です。

お見舞いのない環境下でのVR体験は非常に有効で、患者によっては「モルヒネよりも痛みが和らぐ」と言った人もいる様子。

VRを活用した治療のひとつに、オピオイド鎮痛薬の減量があります。
オピオイド鎮痛薬は、いわゆる「医療用麻薬」を含む強い鎮痛作用の薬です。患者のケアには必要不可欠なオピオイド鎮痛薬ですが、その離脱症状や過剰摂取は長年問題となってきました。
記事では2017年にシダーズ・サイナイ医療センター(Cedars-Sinai Medical Center)でおこなわれた無作為化試験が例に挙げられています。
※参照:一般社団法人日本ペインクリニック学会「オピオイド」

Louis氏は米食品医薬品局(FDA)の共同委員会に参加し、VRで急性および慢性の痛みを治療するためのガイドラインを策定中。10月にVRと医療に関するカンファレンスが予定されているようなので、続報があればお伝えします。

「無いはずの腕が痛む」幻肢痛

VR技術は他にも幻肢痛のリハビリで活用されています。

「幻肢痛(英:Phantom Pain)」は、怪我や病気によって四肢を切断した患者の50~80%が体験するといわれている疼痛で、失ったはずの腕や足が痛む現象です。

ステルスゲームの金字塔「メタルギアシリーズ」でも、小島秀夫監督が最後に携わった『METAL GEAR SOLID V(メタルギアソリッドV)』では主人公・スネークを始めとして四肢を失ったキャラクターが登場し、副題に「THE PHANTOM PAIN(ファントムペイン)」とつけられています。

フランスの哲学者・Maurice Merleau-Ponty氏はその代表的な著書『知覚の現象学(原題:Phénoménologie de la perception)』の中で、現象学の立場から幻肢について言及しています。曰く、失われた身体は誰かのものでもない匿名の身体で、自己の身体に「匿名性」があることが幻肢痛の原因と読み解いています。

さらに神経科医Peter Brugger氏は、自分そっくりの姿を見る幻覚・ドッペルゲンガー(英:doppelganger)なども含蓄した説明を展開(下記リンク参照)。

仮想世界と臨床現場の融合−VR/AR/MRの活用,効果と課題−
住谷 瑞穂, 大住 倫弘, 住谷 昌彦

Body ownership: When feeling and knowing diverge
Daniele Romano, Anna Sedda, Peter Brugger & Gabriella Bottini
Consciousness and Cognition 34:140-148 (2015)

VR時代の幻肢痛と依存症

今回参照した記事には「非侵襲的でリスクのない方法によって痛みを軽減できれば、オピオイド依存症になる可能性を回避するのに役立つはずだ。」と記述されていますが、VRでの治療がそれに当たるかはまだ分かりません。

VRにも想定していない障害や哲学的な問いも新たに生まれてくるでしょう。
麻薬以上に深刻な依存症があるかもしれません。
サイバーパンク作品には現実に対する示唆が盛り込まれていますが、その中には実際に視覚的な作用の大きい電子ドラッグが横行している作品も少なくありません。いい意味でも悪い意味でも視覚的な変化は人間の心理に大きく作用します。

例えば動物を模したアバターに扮したときの耳やしっぽの感覚、同じアバターに対するドッペルゲンガー的な幻覚、現実空間の身体との乖離など、枚挙に暇がありません。

誤解がないように申し上げれば、これは決してVRを避けてほしい向きの言葉ではありません。
むしろ安全で適切な使い道を模索するために、今よりもっと積極的に活用する場面を広げ、検証していくことが必要だと考えています。

例えば「認知症VR」のように、VRは疑似体験を通して当事者の気持ちに寄り添う一助となりえます。これからもこの動きは拡大していくことでしょう。

弊社も来たるVR時代に向けて全身全霊をかけて取り組む所存です。

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