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第二の生⑥ 判決から8か月ほど経ち、被害者遺族に損害賠償請求をされた。被害者を殺害した不法行為に慰謝料を含み、七千三百六十万円の請求だった。

判決から8ヶ月ほど経ち、被害者遺族に損害賠償請求をされた。被害者を殺害した不法行為に慰謝料を含み、七千三百六十万円の請求だった。この民事訴訟の公判に出廷願いを出願したが、許可されなかった。訴訟は争点もなく、原告である被害者遺族の主張をすべて認めた判決となった。届いた判決文には、年間に法定利率の五パーセントが加算されるとある。出所時には一億円を超えることになる。
実家には被害者の母親から手紙が届いていた。母は、血圧が上がるということで二通目以降は未開封のまま、弁護士だけが目を通していた。弁護士から届いたその手紙の束には、私の家族に向けた不満が書かれていた。私のしたことは親の教育が悪いからだと母を非難し、私の情状証人をした姉には、駅までの帰り道で楽しそうに笑っていたことを怒っていた。こうなることを恐れていた。彼女が殺害されたこと自体、秘密にしておきたかった。悲しみに暮れる遺族と、その憎悪を受ける私の家族を見るのが辛かった。

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