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UD(ユニバーサルデザイン)フォント のはなし②

みなさま、こんにちは。

新入社員(営業)の畑中です。
 
いよいよ年末ですね。
ぐっと寒くなって参りました!

さて、今回は「UDフォント」すなわち、ユニバーサルデザインフォント第2弾です。

以前ご紹介した「イワタUDフォント」は、これまでの投稿の中で最も反響があり、UDフォントへのみなさんの関心度が高いことを感じました。


今回ご紹介するのは、UDフォントの中でも、「見やすい」ということが科学的に証明第三者認証機関に認証されたみんなの文字というフォントです。


これまで、さまざまなUDフォントが各フォントメーカーより出ていますが、「みんなの文字」はこれまでのUDフォントと何が違うのか。

詳しくご紹介していきたいと思います。



1.開発の経緯


「みんなの文字」は、もともと伝票や帳票などに印字される小さな文字を見やすく改善することを目的に作られた書体です。
開発は、3社合同でプロジェクトを立ち上げて行いました。

帳票を印刷するときには、印刷会社にて高速可変印刷と呼ばれるものすごいスピードで印刷する技術を使います。
このとき、文字がかすれたりにじんだりすることで、見えにくい状態になることが問題視されていたことから、小さくても読みやすく劣化に強い文字の研究が始まりました。

保険商品や住宅ローンの契約書類の約款やっかんや、地方自治体などからの通知物などには、非常に細かい文字が並んでいて、読むことが億劫おっくうになることがありますよね。

「みんなの文字」は生命や財産にかかわる重要な契約書や通知物に使う、特に小さな文字(6~10pt)を用いた文章でも、つぶれにくく読みやすい文字となっています。



2.みんなの文字の特長


①    人間中心設計(ISO13407)

ISO~って表示、みなさんどこかで見たことありませんか?
「国際標準化機構」International Organization for Standardization の頭文字をとって ISOと表示します。

その名の通り、国際的に基準を決めることで、世界中で同じ品質/レベルのものを提供できるようにすることを目的としています。

ISOが制定した規格をISO規格といい、ISO13407は「人間中心設計」Human Centered Designを定めた国際基準です。

ISO13407は、何かを作るときには人間中心、すなわちユーザーの視点に立って設計・構築するというプロセスです。

「みんなの文字」の場合は、文字の読み手の立場から一番読みやすく誤認しにくい文字は何かということを主として開発されたUDフォントなのです。

実際の開発過程としては、ISO13407に基づき「プロトタイプ(試作品)」を作り、白内障や老眼などの多様な視覚ユーザーへ見えかたのテストを実施、その結果をもとに改善するというサイクルを繰り返しました。

ちなみに、JIS(日本産業規格)もよく目にしますが、こちらは日本国内のみの標準規格です。


②    IPOテストによる科学的検証


これまでのフォントは、デザイナーが「こうした方が見やすいだろう」とか「見た目として美しい」など、デザイナーの経験と感覚で作られていました。

みんなの文字は、これまでとは根本的に異なるフォントの作り方をしています。

それが「科学的な検証」です。

東京電機大学の矢口教授が考案した「IPOテスト」と呼ばれる文字の読みやすさの評価法(特許取得)を行い、かすれ や つぶれ に強い文字を検証したのです。

具体的には、環境(周囲の明るさ)や印刷の状態(文字が小さい、かすれ、つぶれ)などを再現するために文字画像を加工し、実際に起こりうる文字が「劣化した状況」を作り出します。
そして、加工した文字がどの程度原型を保つことができるか(文字として認識できるか)を数値で評価することにより、「だれにでも見やすい字」はどのような字なのかを検証するのです。

試作品を作る
  ↓
IPOテストを行い数値を確認(数値NG=文字として認識できる範囲が狭い)
  ↓
試作品を作る
  ↓
IPOテストを行い数値を確認(数値OK=文字として認識できる範囲が広い)

このように数値が改善するまで、繰り返しテストを行いました。
この試みは、みんなの文字の書体デザイナーである 竹下直幸たけしたなおゆき氏 も初めての経験であり、最も苦労した点であると振り返っています。

「安定領域」が広くなるまで、何度も試作を繰り返します


③    第三者認証


「みんなの文字」の一番の特長が「第三者認証」を取得している点です。

企画開発者のうちの1社である、ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会Universal Communication Design Associate(UCDA)は、第三者の立場で見やすさと伝わりやすさを評価して認証している機関です。

毎年、企業(団体)や行政が発信するさまざまな情報媒体を、客観的に評価し、優れた媒体を表彰するUCDAアワードを開催し、保険会社や金融機関など、人々の生命や財産にかかわる情報をわかりやすく発信したいと考える多数の企業が参加しています。

先ほども記しましたが、「みんなの文字」は、UCDAからわかりやすい文字として唯一認証を取得しているUDフォントです。

なにかを判断するときに、専門的知識を持つ第三者が認めているという事実は、とても大きな後押しになりますよね。

UDフォントでも同様、見やすさ/伝わりやすさを日々研究している専門機関、UCDAの認証を得ているということが、他のUDフォントにはない、最大のポイントなのです。

では、いよいよそんな「みんなの文字」の詳しいデザインを見ていきたいと思います。



3.みんなの文字の書体デザイン


①イワタUDフォントとみんなの文字


「イワタUDフォント」も「みんなの文字」も同じUDフォントですが、全く同じではありません。

何が違うか、それは開発コンセプトです。
それぞれの開発目的は何だったか、改めて整理してみます。

■イワタUDフォント
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【開発のきっかけ】
 ・テレビリモコンの数字が見えにくい

【開発コンセプト】
 ・ぱっと見たときに見やすい
   → 一文字一文字が大きくデザインされている

【使用想定】
 ・家電製品に表示される文字(文字を見やすく強調したい場面)
  1~10文字程度    

■みんなの文字
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【開発のきっかけ】
 ・帳票に印刷される小さな文字が見えにくい

【開発コンセプト】
 ・文字が小さく長文で密集していても読みやすい
   → 大きくデザインしすぎない

【使用想定】
 ・契約書、帳票など(長文で文字が密集する場面)

同じUDフォントといっても、開発コンセプトが異なるので、推奨用途も異なるのですね。
よく、UDフォントを使っていれば誰にでも見やすいと誤解されている方がいらっしゃるのですが、基本的にUDフォントは1文字1文字が判別しやすいよう大きくデザインされているので、小さくても問題なく読むことが出来る若年層だと逆に読みにくいこともあります。

UDフォントも推奨用途を守って使うことで、一番効果を発揮するのです。

デザインに関してもう一つ。
実は、みんなの文字の開発にあたり、もととなった書体が「イワタUDゴシック」なんです。

拡大してみると字面の大きさも、ゲタの有無も異なることがわかります


小さい文字で並べてみると「みんなの文字」は全体的にスッキリとして見えます

みんなの文字は「イワタUDゴシック」を基にして、字面率を小さく/ゲタを付けることで、長文でも読みやすいようにしました。
(長文向けのUDフォントとしてデザイン)


②ファミリーと英数字のデザイン


みんなの文字の太さ(ファミリー)は、ゴシック体の場合「 L 」「 R 」「 R2 」「 M 」の4ウェイト用意しています。
(明朝体の場合は「 R 」「 R2 」の2ウェイトとなります)

L(ライト) 、 R(レギュラー) 、 M(ミディアム)などは、フォントの太さを表すもので、広く使われています。

みんなの文字の太さは、細~中までという比較的細めのファミリーとなってり、本文(文章などの細かい文字)向けのセットとなっています。

ここで、みんなの文字特有の「 R2 」というウェイトが出てきました。
フォント好きの方でも見慣れない表現だと思います。

「 R 」と「 R2 」何が違うかというと・・・

英数字の太さが違うのです。

「 R 」のほうが「 R2 」よりも若干太いんです

全てのウェイトを並べて見ると・・・・

R 」は英数字が 和文に比べ強く、くっきり見えるので、小さな文字の中でも英数字を強く表示することができます。

逆に、「 R2 」は、「 R 」に比べてスッキリとしていて、和文になじんで見せることができるため、幅広く本文用として使用可能です。

使い分けとしては、8pt以下のようなとても小さい文字の時には、「 R 」のほうが英数字がはっきりと見えると考えていただければいいです。


③他の書体との比較


ここまで、みんなの文字のデザインについてご紹介してきました。

ここで、3書体で比較してみましょう。

比較する書体名はこちらです。

■ イワタゴシックオールド
■ イワタUDゴシック
■ みんなの文字ゴシック

全体的な文字の特徴としては、イワタゴシックオールドは文字の始筆や終筆などのエレメントが、活字風の書体です。
イワタUDゴシックは字面率が大きく、ゲタもありません。

みんなの文字は、先ほどご紹介したように字面率はイワタUDゴシックに比べ少し小さく、ゲタもついています。

さらに、みんなの文字を代表する特徴として、アルファベットのアイ(大文字)と、lエル(小文字)、数字の4が挙げられます。

見間違いの多い「アイ」、「エル」の判別がつくようにアクセントがつけられています。
これだと、この2つが並んでいても間違えることがなさそうですね。

また、数字の4については1画目と2画目をあえて離すことで、小さくてもにじみにくく、つぶれないデザインになっています。



4.みんなの文字グローバル


みんなの文字グローバルは、みんなの文字と同様のプロセスにて開発された外国語ゴシック書体です。

在日、訪日外国人の方達にも読みやすく劣化に強い文字で情報提供することを目的としたUDフォントとなっており、各言語のネイティブユーザー100名以上によるテストも実施し開発しました。

ラインナップは、中国語(繁体/簡体)、ハングル、欧文となり、新たにタイ語も追加される予定となっています。

訪日外国人は中国、韓国を筆頭とする東南アジアおよび欧米の方が90%以上を占めるため、みんなの文字グローバルでカバーすることができます!




5.採用事例


最後に、みんなの文字の最新採用事例をご紹介します!

成田国際空港 第1ターミナル、第2ターミナルのフロアガイドです。

こちらは、空港内に冊子として印刷され置いているものですので、もし成田空港へお出かけの際には一度手に取ってご覧ください。

そのほかにも、地方公共団体や銀行、保険会社などからの通知物や公共施設や百貨店の案内板にも使われていますので、みなさんも気づかないうちに目にしている可能性もありますね!

そのほかの採用事例は以下よりご確認ください(UCDAホームページ内)。



さて、今回はボリュームたっぷりでお届けしました。

近年、増えてきているUDフォントのなかでも、これまでにない、科学的に証明、第三者認証機関に認証された「みんなの文字」。
ご覧いただきありがとうございました!

みんなの文字、イワタUDフォントそれぞれの用途に応じて、是非お試しください。

年内では最後の配信となります。

みなさんよいお年をお迎えください!

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