2023年イワタ新書体「福まるごファミリー」PART.2
みなさま、こんにちは。
2023年2月に発表した新書体「福まるごファミリー」
前半のnoteでは、5書体のうち2書体「ウネル」「カタル」をご紹介しました。
▼記事の内容はこちら
後半の今回は、3書体「アソブ」「タタズム」「キザム」をご紹介します!
この3書体は、たった1人のデザイナーによって制作された書体なんです!
竹下さんは、多摩美術大学や東京藝術大学で講師を務めた文字デザインのプロフェッショナルです。
前回の記事で、既存フォントに仮名ファミリーを追加するということは、もともとのフォントと並べても違和感なく、でも特徴をださなければいけないという、相当な試行錯誤の上に出来上がるということを学びました。
その作業を3書体も、しかも1人で行うのは恐れ入ります……。
ではさっそく、こだわりの3書体をご紹介していきます。
1.新書体③ 福まるご「アソブ」
イワタ福まるご「アソブ」は奔放な書きぶりのレタリングを範とし、カジュアルさの中に軽快なリズムを持たせた書体で、親しみやすい遊び心に、ノスタルジックな面持ちも備えています。
テーマカラーは、原っぱで子どもたちが楽しそうに遊ぶ風景を想起させるような草色を採用しています。
「アソブ」のポイントをデザイナーの竹下さんに聞いてみましょう。
■こだわりポイント
竹下:自宅から少し離れた場所に錆びついた標識があって、福まるごオリジナルの制作に取りかかった頃から、この仮名のデザインがずっと気になっていました。
標識はいつ撤去されてもおかしくないけれど、このスタイルは福まるごの仮名として残せるのではないかと思いました。
■苦労した点
竹下:標識には丸ゴシックとしての仮名は4文字しかなくて…、これを書いた人だったら他の仮名をどう書くだろうかと、想像をふくらませました。
観察すると、大きなカーブの構成で書かれていて、文字1つひとつが揺れ動くようにリズミカルなんです。そのリズムを仮名全体へ、さらに英数字へと広げました。
■組見本
福まるごファミリーの5書体は、L~Eまでの5ウェイトを展開しています。
実際に組んでみると、「アソブ」の親しみやすく人懐こい性格が伝わってきますね。
2.新書体④ 福まるご「タタズム」
イワタ福まるご「タタズム」は金属活字の古いゴシック体の骨格と幅広な欧文を合わせた書体です。
味のあるアンバランスさや、「っ」「ゃ」などの拗促音が小さめ、といった活字時代に培われたテイストを色濃く取り入れています。
テーマカラーは、伝統や格式を感じさせる臙脂です。
時代を超えても色あせない重厚な佇まいは、夕日に染まった富士山を彷彿とさせます。
■こだわりポイント
竹下:イワタの古い見本帳に載っている「9Pt.ゴチツク」を参照しています。
一見アンバランスだと思える字も、並ぶと不思議と落ち着くのです。英数字には幅広のサンセリフ活字をモチーフとしました。
■苦労した点
竹下:もともと、福まるごの漢字は金属活字の丸ゴシックから着想を得ているので、仮名も古い雰囲気のものが似合うと思っていました。
デジタル化されている「イワタゴシック」や「ゴシック体オールド」の仮名を丸くして合わせることも候補として検討しましたが、最終的にこのスタイルに落ち着きました。
スキャンしてトレースなどせず、画像もしくは実物を横に置いて見ながら、画面上で直接アウトラインを作っています。
■組見本
活字由来の安定感ある仮名は、漢字にもとてもマッチして、味わい深さを感じますね。
3.新書体⑤ 福まるご「キザム」
いよいよ、これで福まるごファミリー最後の書体となりました。
イワタ福まるご「キザム」は、水平垂直に構成された長体仮名を、横方向のラインに沿って揃えた機械彫刻のスタイルを感じさせる書体です。
テーマカラーは、使い込むほどに味わいを増す真鍮のような黄金色。
タイプライターで規則正しく打たれたような律儀さに柔らかい曲線が合わさり、整然としていながら堅苦しくない印象を刻みます。
丸っこい福まるごですが、「キザム」の仮名は縦長に設計されているため長文もスッキリと収めることができます。
■こだわりポイント
竹下:「タタズム」同様、こちらのベースも岩田母型時代の見本帳に登場するのですが、機械的な構成、整然としながらもちょっと間の抜けた温かみが持ち味です。
仮名、英数字とも縦長のデザインなので、横組みでの使用を推奨しています。
■苦労した点
竹下:元のスタイルはカタカナの横線位置が固定されて文字の高低差が目立つので、なるべく均等な大きさに見えるように調整しました。
ひらがなと英数字はカタカナのスタイルに沿って新たにデザインを起こしました。
また、私が担当した3書体は、極力違うテイストでまとめようと、拗促音の大きさや、句読点のデザインなどを積極的に変化させています。
作っている人が同じだと、最終的な落とし所が似てきてしまうので、それを回避するためでもあります。
■組見本
規則正しく整列した長体仮名に対し、漢字は正体(正方形)なので、詰めすぎていない絶妙なバランスを保つことが可能です。
新たにイワタに加わった福まるごファミリー。
もともと使いやすい福まるごですが、さらに用途の幅が広がりそうですね。
個人的には、考えをまとめたいときのメモや、提案資料などにも使っています。(そのときの気分によって、今日はカタル、今日はアソブ…のように使い分けたりもしています。)
太いウェイトだとぽってりとしたポップさが増し、細いウェイトではスッキリと品を感じることのできる、とっても器用な「福まるご」。
個性豊かなファミリー、ぜひ使ってみてくださいね!
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました!
▼ 福まるごWebサイト ▼
▼ 製品購入ページ ▼
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?