マガジンのカバー画像

イワシとわたしの物語

17
下園薩男商店が運営するイワシビルの商品。 そんな商品たちとこんなことあったかもしれないお話を集めたオリジナル短編小説です。
運営しているクリエイター

#超短編小説

虜になって食べて知って【イワシとわたしの物語 vol.16】

買ってやったぞと言わんばかりに口の端を吊り上げる。 袋の中を覗き込むとお目当ての〈はらぺ…

108

私のための朝を過ごす【イワシとわたし 物語vol.15】

閑静な街の中、外では働き者が既に道路を走っている。 彼女は何に起こされたわけでもなく、ゆ…

あの子を想う平日昼間のひとり時間【イワシとわたし 物語vol.14】

この日は天気がいい日だった。 加えて日差しがやわらかいから、散歩に出掛けることにした。 最…

落ち着かない気持ちを抱えて海に行く【イワシとわたし 物語vol.13】

3月というのはどうも気持ちが落ち着かない。 漠然とした焦燥感と不安が頭を撫でるように纏わ…

彼女が始める小さくて大きな旅【イワシとわたし 物語vol.9】

地元に戻った彼女は、今日も阿久根の街を歩く。 阿久根駅を出れば港が見える。 その間をいか…

彼女が伝えたかった5文字【イワシとわたし 物語vol.6】

暑い夏であることに変わりはない。 けれど、この日だけは何やらいろいろと考えてしまう。 あ…

青年が気づき始めた”普通”の裏側【イワシとわたし 物語vol.5】

拍子抜けしてしまいそうなこの現実に彼は一種の焦燥感を覚える。 大人への憧れを感じていたあの頃から、気づいたら憧れたその年齢に彼は追いつこうとしていた。 大人というのは、もっと自分という存在が浮き立っているものかと思っていた。 しかし、今の自分はと言うと、彼には“普通”という言葉しか思い浮かばなかった。 普通。 普通という違和感。 想像していた大人像と今の自分の姿に距離を感じてならない。 夏の風物詩を目の前にしても、彼の頭の隅からその違和感が消えることはない。 涼しさ