青年が気づき始めた”普通”の裏側【イワシとわたし 物語vol.5】
拍子抜けしてしまいそうなこの現実に彼は一種の焦燥感を覚える。
大人への憧れを感じていたあの頃から、気づいたら憧れたその年齢に彼は追いつこうとしていた。
大人というのは、もっと自分という存在が浮き立っているものかと思っていた。
しかし、今の自分はと言うと、彼には“普通”という言葉しか思い浮かばなかった。
普通。
普通という違和感。
想像していた大人像と今の自分の姿に距離を感じてならない。
夏の風物詩を目の前にしても、彼の頭の隅からその違和感が消えることはない。
涼しさ