右投手がNPBで通用するハードルが高いのはなぜか?

大学野球選手の四球率(BB%)・三振率(K%)を用いてNPB候補を評価する・成績を予測する 

NPBで活躍する投手は大学時代どんな成績を残していたか。 -@Baseball_Namiki さんより

右投手と左投手では傾向が違い、左投手はややBB%(四球率)が高くても成功できるという傾向が見出されました。

※誰も書いてなかったみたいなので書いておくと、大学とNPBでBB%には明らかな正の相関があります。K%はよく分からない。

六大学_NPB_右投手_BB%_相関

六大学_NPB_右投手_K%_相関


2010年以降に東都と東京六大学から直接ドラフト指名された投手の、NPB2年目までの成績を右投手と左投手で分割し、違いを見ていこうと思います。
まず、20イニング以上投げた投手のDER(投手から見たBABIP。DER=(1-BABIP))の分布を見ます。

投手のBABIPは実力だけでなく、運にも大きく左右されるというのはよく知られていますが、それは連続したシーズンで長いイニングを投げられる優秀な投手の話です。投球の質がリーグのレベルに届いていなければ、ハードヒットされてBABIPは高くなる(DERが低くなる)と考えられます。

※参考 2021パ 右投手DER:0.716,  左投手DER:0.709

※参考 2021セ 右投手DER:0.702,  左投手DER:0.709

リーグ平均では、右投手と左投手のDERに大きな差は見られません。左右を問わずDER:0.7程度がリーグ水準と考えられます。

DER:六大学_右投手_1年目

DER:六大学_左投手_1年目

DER:六大学_右投手_2年目

DER:六大学_左投手_2年目

DER:東都_右投手_1年目

DER:東都_左投手_1年目

DER:東都_右投手_2年目

DER:東都_左投手_2年目

目安として、DERが0.68を切ったあたりからピッチングが厳しくなっていくと考えて下さい。

左投手のサンプルが少ないこともあり、なんとも言えない感じですが、東都の2年目あたりは右投手より左投手の方がDERが高い…感じがしませんか?

次に、1年目と2年目のそれぞれで投球回が20イニングに届かなかった投手を見ていこうと思います。育成指名された選手も入ってますがご容赦下さい。

六大学1年目

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六大学2年目

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東都1年目

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東都2年目

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当然ですが左右を問わず、1,2年目にあまり一軍で投げないピッチャーはいます。

しかし、ここに名前が挙がっている六大学の横山貴明、齊藤大将、宮台康平、東都の乾真大が定着できずに早くに戦力外通告を受けているのに気付かされます。対象的に右投手では、六大学の福谷浩司、三嶋一輝、東都の九里亜蓮など出場機会を掴み、定着している選手が見られます。

一軍であまり投げなかった理由を見ていくと、左投手ではBB%、BABIP、HR%の少なくともどれは高く、通用しなかったという印象を受けます。同時に、大学時代のBB%も低いとは言い難い選手が多いです。

右投手では、一軍であまり投げなかった理由がより多様です。

1. 故障を抱えている投手(大石達也や加賀美希昇など)

2. 通用しなかった投手(内間拓馬や平内龍太のようにハードヒットされた投手、矢崎拓也のように四球が多かった投手)

3. ファームで待機していた投手(福谷浩司、澤田圭佑、椎野新、高田孝一など)

4. 前年度に多く投げ、成績を落とした投手(三嶋一輝)

そして大学時代のBB%が高かった右投手は、2に固まっているような印象を受けます。

まとめ

まとめというか今の自分の見立てです。(結論を出すにはデータ不足すぎる)

1. プロではストライクゾーンが狭まる。大学投手のコントロールがプロで大きく改善することは考えづらいことも踏まえ、BB%に現れるコントロールの評価はスカウティングする上で極めて重要。これは左右を問わない。

2a. 左投手の方が数が少なく、プロレベルの打者は慣れている右投手の投球が少しでも甘ければ打ち崩してしまう。対して、コントロールがまとまっている左投手をめった打ちにはしにくい。このため、左投手のほうが1, 2年目は通用しやすく、大学時代のBB%が低ければ安定した貢献が期待できる。逆に言えば、左投手の成長の余地は小さく、1, 2年目に通用しなかった左投手はその後も厳しい。

2b. どのようなアマチュア右投手がプロで打たれやすいのかは未解明だが、大学時代のBB%が悪いと、プロでのBB%だけでなくBABIPやHR%にも悪影響がある印象を受ける。カウントを悪くして痛打される、などのメカニズムがあるのかもしれない。

 3. 2aに対応するため、右投手はすぐには一軍で起用されず、投球の質を1~2年かけて改善してから起用されることがある。1, 2年目に投げなかったり、通用しなかったからといって、右投手について悲観する必要はない。

※DERはDELTAから。三振率などはボックススコアから近似値で出してるのでいい加減な値です

11/28追記:続編はこちら

https://note.com/iwashi_cake/n/n66cfff1939c0


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