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うおとひと(2024/1/21)

1.はじめに

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。2024/1/24にきんたい廃校水族館で開催されたイベントである「うおとひと」に行ってきました。日本淡水魚好きの人たちがブースを出し、作品を販売、展示されていました。今回は、このイベントで、興味を持ったもの、お会いでき、話をしたことなどを書いていきます。よろしくお願いします。

2.構成

 多くの方が、うおとひとのブースに出品されており、そのなかでも、「京都大学淡水生物研究会」、「のもの」、「マーシーの獲ったり狩ったり」、「うぱさん」、「川瀬成吾氏の公演」の5つを紹介していきます。よろしくお願いします。

3.京都大学淡水生物研究会

 こちらの団体は、京都と琵琶湖を中心にしつつ全国各地で、フィールド調査を行う団体です。フィールド調査を行う範囲は、非常に広く、北は北海道から南は九州まで調査を行っています。会全体で、ある特定のテーマを決めて調査を行うというものではなく、「個人間で集まり、やりたいことを行う」という非常に自由度の高いサークルです。この自由度の広さは、出品作品にも強く現れています。こちらは、後ほど、紹介させていただきます。

こちらが、購入させてもらった戦利品です。

 今回のブースでの出品での1番注目される展示は、「鴨川の魚図鑑」になります。鴨川に生息する全65種の淡水魚を記録し、解説をしているものになります。図鑑は、鴨川は、どのような川になっているのかが地図で説明されていおり、鴨川とはどのような川なのか、非常に分かりやすかったです。また魚の分類をさらに絞るための検索表がつけられ、大体の目星がつけやすい、条数での比較、似ている種との比較などが行われ、日本の淡水魚に詳しい人だけでなく、初学者がみても分かりやすく作られていると感じます。
 私が、何よりもこの図鑑ですごいなと思ったのが、「水系ごと」または「地域単位」での淡水魚の図鑑になっているということです。山渓ハンディが、日本の淡水魚の辞典で最も詳しいと思われますが、こちらは「全国単位」での話です。では、「水系」または「地域」を単位とした図鑑はあるでしょうか。答えは、「見つけるのが難しい」だと思います。日本の淡水魚の面白さ、魅力は何かを考えた時、「地域ごとでの多様性」だと思い、日本にはどのような淡水魚がいるのかを見るだけでない比較ができ、地域ごとでの生物のあり方、構成を見ることのできるいい図鑑だと思います。また、過去の鴨川に生息していたもの(Ex:ニッポンバラタナゴ)、外来種として定着したもの(Ex:ブラックバス)、長い時間を経て再発見されたもの(Ex:ツチフキ)も図鑑として載っています。つまり、鴨川の生物の歴史と現在を見ることができるということです。このような「時間で生き物を見ること」は、何が大切なのでしょうか?それは、「取り戻す時の自然の指標」となるからです。在来の生き物に対する脅威を取り除いたとしても、過去にいた生き物が、そのまま無条件に戻ってくるとは限りません。その時、過去の鴨川にどのような生き物がいて、どのような自然があったのかを知らなければ、取り戻すべき自然は分かりません。だからこそ、過去にどのような生き物がいたのかという記録は大事になりますし、後ほど紹介する川瀬吾成吾さんの公演でもこのような研究を行い、発表されていました。

鴨川では絶滅してしまったニッポンバラタナゴです。
過去に私が飼育していた個体の写真です。
オオクチバスです。
*大阪自然史フェスティバルにて撮影
ブルーギルです。
*大阪自然史フェスティバルにて撮影

*ご購入はこちらから。

 『疏水』という雑誌も購入させていただきました。シロヒレタビラが表紙を飾っているため、日淡がメインについて書かれているのかと思ったら、カワニナの系統だったり、シクリッドだったり…と「まさか!」と思われることが、多く書かれていました。後、ウナギのおいしい焼きかたとは?や魚のおしいし焼きかたについても書かれ、ガチガチの論文ではなく、気軽に読めるものが多かったです。
 鴨川でツチフキが、再発見された話も載っており、その発見者とお会いできた上、隣でそのチャンスを逃したんだ…という人からもその時のエピソードを聞きました。事実だけでもすごいことですが、何があったのという現地での実際の話は、さらに活気が溢れて聞いていて面白かったです。

 炬茶さんという方が、日淡を含めた魚のイラストを描いて投稿されており、今回、実際に描かれたイラストを持ってきてくれました。オイカワとドンコのイラストが、気に入ったため、撮影しました。Twitterとpixivのリンク先を載せますので、もし気に入ったら、フォローされてはいかがでしょうか。

ドンコです。
オイカワです。

4.のもの

 のものさんは、日淡を中心にニッポンバラタナゴや琵琶湖の生物を中心にしたグッズを販売していました。のものさんが、出されていたグッズの中で印象に残ったのが、琵琶湖の「カワニナ」になります。カワニナは、琵琶湖の生態系、自然の複雑さと多様性を示す生き物となります。

のものさんのブースです。

 まず、カワニナについての説明になります。カワニナというと見た目は、細長い巻き貝で綺麗な川に生息し、タニシの餌になるというのが一般的なイメージではないかと思います。そして、カワニナの1番のキーワードは、「多様性」です。綺麗な川を取り戻すために「ホタルやカワニナを放流する」という事業を行ったが、かえって大炎上してしまうというニュースを見聞きしたことがないでしょうか。この事業の問題点は、「ホタルやカワニナの多様性」を理解していないことになります。ホタルとカワニナは、同じ種であっても「地域ごとで違いがある」ということが分かっています。この違いを考慮しない放流は、ただ外来種をばら撒いただけでしかないため、世間から強い批判を受けてしまいます。
 話をカワニナに戻します。琵琶湖という一つの湖の中のカワニナに多様性があります。そして、琵琶湖のカワニナのキーワードは、「適応進化」です。琵琶湖そのものは、500万年前に誕生していますが、当然、姿・形を変えることなく今のままになっているわけではありません。現在、生息するカワニナの大きな転機になったのは、「40万年」に「現在の琵琶湖」が誕生したことにあります。それまでの琵琶湖は、小さいな湖だったりだだっ広い湿地のような姿をしていましたが、40万年前になって、琵琶湖は最大の広さを持ち、横だけでなく縦にも大きくなりました。つまり、40万年前に琵琶湖は「拡大した」ということであり、琵琶湖の拡大は、「環境を新たに創出する」ということも同時に意味します。拡大し、創出された環境(EX:深い所、砂場、泥場、岩場…)へとカワニナが進出し、それぞれの環境に姿・形を変え、適応し、進化したということです。琵琶湖に生息するカワニナは、大きく分けると「ハベカワニナ」と「タテビダカワニナ」の二つのクレードに分類されます。その2つのグループをもとに40万年前に琵琶湖のカワニナの種が派生していることが、mtDNAの分析から判明しています。琵琶湖のカワニナは、進化の舞台になっているということです。カワニナは、細かく種分化するということをブースの商品で表れているなと感じました。カワニナは、日本国内どこをとっても変異が非常に大きいのですが、琵琶湖という日本の中で比べれば、小さい世界で非常に大きな変異を持っているということが分かると思います。

『琵琶湖の生物はいつ、どこからきたのか?』92頁 図2-4ー1を引用
カワニナのグッズです。
種類が違うことで、カワニナの姿・形が違うことがわかります。

 ブースの展示は、ニッポンバラタナゴが中心でしたが、私が注目したものが別であり
ます。それが、ブースの中にあるメッセージのボードです。大きな文字で書かれているわけではないため、目立つものではありませんが、環境保全の問題において非常に重要なことが書かれているものが多かったです。メッセージボードの中で私が印象に残ったものが、「生き物を安易に移動させない」と「琵琶湖の内湖」、「琵琶湖のカワニナ」についてです。
 まず、「生き物を安易に移動させない」というのは、「外来種を安易に野外に離してはいけない」ということと同義です。しかし、このメッセージボードは、それだけでおわりません。特に注目してほしいのは「地域特有の特有の特徴を持っている」という点です。これは、カワニナの話にも非常に通じる所があります。日本という土地は、狭くても縦に長く、凸凹している土地柄です。そのような土地柄が、同じようで同じではない生き物を進化させ、地域ごとで違う生き物へと変わっていきました。日本という土地柄が、生物を多様なものへと進化させています。どこにでもいる生き物が同じように見えるけど、遺伝子や生態を見てみたら違いがあったり、別物だったということもよくある話です。先ほどの琵琶湖のカワニナで合わせて考えてみたら、当てはまるものもかなり多いのではないでしょうか。琵琶湖という一つの湖の中に、それぞれ違いがあるカワニナがいるということです。生き物がその地域にあわせて進化して獲得してきたものがあります。日本の生き物は、同じようで違うものがいて、その違いを守っていかなければならないということです。つまり、「生物が進化で獲得したものを守っていく」ということが大切です。よって、日本の生き物だから在来種とはなりませんし、本来いなかった所に離したら、外来種になります。だからこそ、日本国内の生き物は、野外に安易に離してはいけない、どこから来たものかわからないものこそ、野外へ離すのは慎重にならなければならないということが言えます。
 琵琶湖の内湖というのも、琵琶湖と琵琶湖を取り巻く環境の要素として非常に大切です。琵琶湖とそれを取り巻く環境が、川から水が流れ、その行きつく先が、琵琶湖という単調なものではありません。琵琶湖の周りには、「内湖」というものがあり、琵琶湖と川の中間に位置する所に多くありました。琵琶湖と完全に一体化したわけではないが、琵琶湖と繋がっている湖のようなものです。その「内湖」には、エコトーンがあり、ヨシ原、水草なども多種多様に生え、魚の生息地としても産卵場としても機能していました。しかし、その内湖は、近年の開発によってその多くが埋め立てられ、わずかに残すものや琵琶湖との繋がりがなくなったり、狭くなってしまったりするものがおおくなってしまっています。内湖を埋め立てて私たちの生活は成り立っていますが、それで失ってしまったものも多くあります。現在、生物多様性の保全も求められている時代でもあるため、「内湖」の役割を見直し、私たちの生活が、「自然からの搾取」ではなく、「私たちの生活と自然環境の保全」の両立が求められると思います。

ニッポンバラタナゴのマグネットです。
イラストが可愛らしいです。
青枠で囲っている部分が、読むべきメッセージです。
生物の安易な移動をしないことを訴えるメッセージです。
琵琶湖とその周辺環境のメッセージボードです。
こちらのメッセージボードでもカワニナについて記述がありました。

5.うぱさん

 私のTwitterを見ている人なら、お分かりの方だと思いますが、うぱさんもうおとひとに出展されていました。SNSやYouTubeを中心に日本の淡水魚や環境問題などについて発信している方になります。今回、お会いできたということで、配信活動や日本淡水魚についてお聞きしてみました。
(*うおとひとでお聞きしたインタビューの詳細は、下の「12畳の川の中の水族館 さがす」にてその詳細を書きました。うぱさんについて詳細を知りたい方は、こちらをご覧ください。)

こちらが、うぱさんの出展ブースです。
今回のイベントで購入したうぱさんの商品です。
目玉商品であるカードゲームです。
イキモニア2023で購入させてもらったニッポンバラタナゴのキーホルダーです。これが、うぱさんのグッズで何よりも欲しかったです。
オガタスジシマドジョウのキーホルダーです。

 うおとひとでは、日本の淡水魚のグッズ(ステッカー、アクリルキーホルダー、クリアファイル)を販売していました。うぱさんの出されている出品の中でも1番の目玉商品は、「琵琶湖の淡水魚カードゲーム SAVE OUR BIWAKO」です。このゲームは、琵琶湖の生態系ピラミッドを作るというものです。ただ、生物イラストをカードにして説明を加えただけではないというのが、ポイントです。まず、「生態系ピラミッドごとのランク」が作られていることです。当然、生態系ピラミッドを作るとなるとどの栄養段階にいるのかが分からないといけません。カードでは、3段階にしてありますが、どこに位置するた、生態系ピラミッドで繋がっているということを知ると、「その生き物を守るためには守るものが連鎖する」ということが分かるはずです。例えば、ビワコオオナマズの保護をするとなった場合、そのエサになる生物の保護が必要になります。タナゴを保護するとなった場合、二枚貝の保護が不可欠ですし、二枚貝の寄生先であるハゼなどの在来の淡水魚の保護が不可欠です。このように「生物の保護が連鎖する」ということが、カードゲームを遊ぶことで学べるのではないかと思われます。

 次に、カードに規則性があり、それに注目して説明文を読むと「生物の置かれている状態」が分かります。例えば、外来種の場合、国外のものは赤で、国内のものは紫で色分けされています。在来種の場合、絶滅危惧種は、青色で、絶滅危惧増大種は紫色、希少種は緑色などと色分けがされています。外来種の場合は、「どこからきたのか」が分かりますし、在来種の場合、「今の絶滅へのリスク」が分かります。説明文だけでなく、「色を使ってその生き物がどうなっているのか」を目で分かりやすくした点が、いい工夫だなと思います。
 ちなみに、私は、今回のイベントで、カードゲームと毎日のSNSで発信されている日本淡水魚の中でもタナゴをまとめたクリアファイルを購入しました。

うぱさんのカードです。
これらの色のカードの色はどう違うのでしょうか?
赤丸のピラミッドに注目です。
この定義はかなり難しかったと思います。

 このうおとひとにおいても繰り返しになってしまいますが、うぱさんに作成された動画の中で、特に「見てほしい動画は何か?」と聞いた時、「レイクトラウト」「ヨーロッパオオナマズ」の動画を特に見てほしいと答えてもらいました。この2つの動画に共通することは、「外来種であること」「外来種を逃がさないでほしい」ということです。うぱさんは、「外来種対策で一番身近にできる対策は、逃がさないこと」と言っていました。だからこそ、「自分たちのもとで管理をしてほしい」と答えてもらいました。この質問をした時は、以下のようなことを思いました。私自身が、熱帯魚やカブトムシ・クワガタを飼育し、趣味とし、外来種問題を起こす当事者になる可能性があるため、「逃がさない」対策を考えています。しかし、これから趣味にしようとしている人、何らかのきっかけで、生物と接する機会が生まれてしまった人には、「逃がさない」「何故、生物を野外に離してはいけないのか」という意味や対策の必要性を理解していないのではと思われます。

 私が、うぱさんがこれまで出された動画の中で、一番いいなと思ったのが、「イタセンパラ」についてです。このイタセンパラ以外の動画においても見てほしいなと思ったのが、「スイゲンゼニタナゴ」「オヤニラミ」についてです。この両者の動画を見て共通するのは、「日本の自然がめちゃくちゃになっている」ということです。開発や外来種の影響によって、日本の生き物が数を減らしているのは、多くの人が知っていることですが、「人が生き物を移動させることでこれまでの歴史で作られた自然が破壊されている」ということが、この2本の動画で分かります。ペットとして乱獲され、飼えなくなったものが、本来の生息地ではない所に逃がされるということが起こっています。その代表が「オヤニラミ」であり、スイゲンゼニタナゴの近縁種である「カゼトゲタナゴ」です。この両者は、自然分布域では、「絶滅危惧種」であるのに定着先では「侵略的外来生物」になってしまっているということが起こっています。自然破壊というのが、強い生物による侵略のイメージが強いと思います。しかし、強い生き物による侵略という面ではない、危機にある生き物による侵略と近縁種による遺伝子という内部からの破壊という自然破壊が起こっているのも事実です。

 うぱさんについて詳しく知りたい方が、いらっしゃったら、こちらの記事を読むことを強くお勧めします。また、うおとひとで出展されていた商品のリンク先も載せます。もし、興味を持たれた方がいらっしゃったら、そちらも購入されてはいかがでしょうか。

6.マーシーの獲ったり狩ったり

 ご存じの方も多いと思いますが、登録者が40万人の生き物系YouTuberで、ガサガサの動画を中心に挙げられています。ヌートリアを盛大に獲ったり、ニホンイシガメが生息しているのかを自然の状態の指標の一つとして動画を作成されている印象が強いと思います。
 うおとひとでも自身のグッズを販売しており、パーカー、Tシャツ、ステッカーが中心となっていました。私は、ステッカーの方を購入させていただきました。ここでは、グッズの売り上げの1割を淡水生態研究所へと寄付されています。他にもタナゴの保護の活動も行っています。

マーシーさんのグッズ(1)です。
マーシーさんのグッズ(2)です。
私の購入したステッカーです。
サインももらえました。光栄です。

 マーシーさんとどのような動画を作られているのか、どのような動画を見てほしいのか、非常に有意義な話ができました。私が、マーシーさんが投稿された動画で印象に残ったのが、「佐渡島でのガサガサ」と「ツチフキの再発見」です。
 佐渡島でのガサガサでは、サドガエルを捕まえ、その紹介をされていました。サドガエルはツチガエルに近い仲間ですが、佐渡島が本州から分離し、1600万年が経った結果、所々に違いが現れるようになりました。サドガエルから、生物多様性を守る意義、日本の自然の豊かさを感じてほしいと思います。「生物多様性を守る意義とは何か?」と問われたら、私なら、「人間にも受ける恩恵があるため、それを受け続けられるためにするものだ」と答えます。しかし、人のためだけに守られるものではないと考えています。「生物の進化の歴史を守るため」でもあると考えています。日本の場合、「地域単位」での自然というものが大切だと思います。日本どこでも同じ自然があるのではなく、「日本の自然は地域単位で違いがあり、その地域で独自に作りだしてきた自然というものを守っていかなければならない。」よって、その地域の自然の脅威となる外来種などを取り除かなければならないのではと思います。マーシーさんは、実際にこのような動画を出したく、見てほしいと答えてもらいました。ただ、あまり見られない動画だとも言われており、私もこういう動画こそ、日本の自然とは何か?を知って、考える上で大切な動画ではないかと思います。

 ツチフキの再発見では、こちらは、偶然の要素はあったものの外来種駆除などの保全の恩恵を受けている結果、回復した存在でもあります。再発見された個体の発見者がマーシーさんであるということも大切なのですが、この動画の後半こそ、大事な内容が多いです。琵琶湖博物館に「収蔵されている標本」や「自身がこれまで採取した外来種の標本」を紹介しています。マーシーさんの過去の動画を見れば、どのような外来種が採取されたのかという記録は確かにあります。しかし、実物の記録に勝るものはありません。映像で記録があるからだけでは不十分です。後年になって実際に残る標本を基に何らかの分析をするための資料になるからです。採られた外来種から「何を食べていたのか」「この生き物が日本やその地域から何故見つかたのか」「定着先でどのような行動をしていたのか」「今の自然と過去の自然はどのように違うのか」などと分かることは多いはずです。博物館というものが、どういう役割を担うのか、その一面を見ることができる動画になっています。マーシーさんも学術研究に非常に大きな貢献をされているYouTuberということです。

 また、マーシーさんからは、中池見湿地での採取の動画を見てほしいと紹介されました。ここは、ニホンイシガメの天国です。採取が禁止され、驚異的な外来種(EX:アライグマ)がいない、いてもクサガメくらい、ラムサール条約に登録されているなどと非常に好条件地です。この動画から分かることというのは、「生物は、環境さえ整えばしっかりいることができる」ということです。

7.川瀬成吾氏の講演

 うおとひとの最後は、琵琶湖博物館の学芸員で、魚類の研究をされている川瀬成吾氏による講演が行われました。主に石川千代松が収集した魚類標本から見る過去の琵琶湖の魚類相、つまり、過去の琵琶湖はどのような姿をしてどのような魚が中心棲息していたのかについての講演をされました。

Q:石川千代松とは?
 動物学者。江戸に生まれ、1882年(明治15)東京大学理学部動物学科を卒業。翌1883年同大学助教授。ドイツに3年間留学して、「生殖質説」で有名なワイスマンに師事。帰国後は帝国大学理科大学助教授を経て、1890~1924年、同農科大学教授。多くの水産動物の生殖・発生・細胞学、ホタルイカの発光など広範囲にわたる研究を行い、また、琵琶(びわ)湖産のコアユを多摩川に移殖して、普通のアユと同様に成長することを実証し、今日広く行われている同魚の移殖放流事業の基礎を固めた。とくに、若いころから進化論に興味をもち、大学での恩師モースの講義筆記を『動物進化論』として訳出(1883)し、その後『進化新論』(1891)、『人間の進化』、『アメーバから人間まで』などの著作を発表、進化論の普及に努め、あわせて多くの著述、講演により生物学的知識の解説・啓蒙(けいもう)に尽くした。

https://kotobank.jp/word/%E7%9F%B3%E5%B7%9D%E5%8D%83%E4%BB%A3%E6%9D%BE-30512  を引用

 講演で発表された内容は、「ロンドン自然史博物館」に保存されている江戸時代〜明治時代に取られた琵琶湖の魚類の標本を確認、整理し、当時の琵琶湖の自然相を再現しようという内容になります。パワーポイントで当時の調査の様子や実際に調査をした標本の写真を紹介されていました。中には、「ホロタイプ標本」(*ある種の基準となる標本。)なども紹介され、すごいものを見たと驚かされました。

Q:ホロタイプとは?
地衣類の新種を発表するには,専門の学術雑誌等への掲載が必要となります.つまり論文にまとめ,発表します.この時,新しい学名を作り,基準となるタイプ標本を指定し,特徴を示す(記載,図)ことなどが求められます.特にこの記載は,原記載と呼ばれます.タイプ標本は,個人の所有ではなく,恒久的な標本庫(博物館の場合には,収蔵庫がこれにあたる)に収蔵されることも要件となります.原則としてタイプ標本は1点のみで,ホロタイプ(holotype)と呼ばれます.

https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/chii_type/p-2.html  を引用

 この公園で非常に印象に残った内容というのは、「タナゴが非常に多かった」というもので、特にヤリタナゴが非常に多かったなと感じています。ハリヨの標本があり、採取された場所に琵琶湖との記述があったそうです。実際の生息地は当然、琵琶湖ではなく、琵琶湖につながっているであろう水系です。現在分かっていることから、過去の間違いがわかります。研究の進展を感じる講演だったと感じました。

こちらだったと思います。
ヤリタナゴの標本が中心です。
こちらは、ハリヨです。
モロコ類が中心の標本です。

 ここで、もしかしたらこのような疑問を持ったかたがいるかもしれません。「昔の生き物の標本を調べる意味とは何か?」ということではないでしょうか。この研究に関しては、明確な目的があり、それは、「復元すべき自然像を知る」ことが目的です。環境の保全というと「開発前の姿に戻す」であったり「外来種を駆除する」ということが、一般的な考えだと思います。しかし、外来種の駆除であった場合、それは在来種が戻ってくることと同義とは限りません。(*これを外来種を駆除するなと変に賢くなったと勘違いする人がいるのに気をつけましょう、過去のブログをご参照ください。)かつての自然を取り戻そうとなった時、取り戻すべき自然像というのを知らなかった場合、その取り組み、活動が正しいとは限りません。しかし、過去の自然像というのは、地域によって様々で一様ではありません。その時に過去の自然を知るのに必要となるのが、「過去の標本」です。過去の生き物の標本から、その生き物がどれだけ取れていたのか、何がいたのかが明らかになります。過去の標本というのは「過去の自然像を知る」ための重要な手掛かりで貴重な遺産です。

https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2022/20220720/index.html を基に筆者作成

 川瀬さんの講演を聞いた後、石川千代松氏が過去に集めた琵琶湖魚類についての論文を記述していたことを知ったため、その論文を読みました。今回の講演の内容とも非常に共通することの多いものでした。(*以下、「石川千代松が収集した魚類標本から見る明治中期の琵琶湖の魚類相」を中心とした内容)
 こちらの論文では、石川千代松が、1895年ごろに琵琶湖で採取し、国立科学博物館などの博物館に収蔵されている淡水魚について調べたものです。計1029点の標本から、アユ(1200点以上)、ワタカ(109点)、シロヒレタビラ(65点)の順で多く、ヤリタナゴも多く見つかりました。石川千代松氏が調べる前のヴェガ号という外国人の調査でも「ヤリタナゴとシロヒレタビラが多い」ということが指摘されていました。まだ分かっていないことも多いのですが、当時の琵琶湖は、ヤリタナゴとシロヒレタビラが中心となっており、この2種を主軸とした琵琶湖の復元というものが求められているということです。藤田朝彦氏を中心とした研究グループも内湖を中心とした過去の琵琶湖の魚類相について研究し、ヤリタナゴとシロヒレタビラが中心で、内湖の干拓が本格化する前まで、その傾向は変わらなかったであろうことを記述しています。環境保護や保全が求められている時代の中、脅威をただ取り除けば自然が回復するとは限りません。取り戻すべき自然とは何か?その具体的な姿を知るための非常に重要な研究であり、その最前線を見ることができた講演でした。

バッキバキに赤いヤリタナゴです。
シロヒレタビラです。

 講演では、イタセンパラの標本、ヨドゼゼラの「タイプ標本」などと普通に水族館や博物館に行っただけでは見ることが絶対にできないものを講演での写真で見ることができ、非常に有意義な時間でした。
 また、川瀬さんが書かれた論文では、採られた標本は、「瀬田川の本格的な改修前のもの」であり、淀川から遡上してきたであろうウナギ、現在では発見されてないカワヒガイ、瀬田川の改修前には、南湖では普通に見られたコウライニゴイがあったなどと今と昔で琵琶湖の環境がかなり変わったのだと分かる資料の存在を記述しています。ここでは書ききれないほどすごいことが多く書いてあるので、川瀬さんの論文も是非、ご覧ください。

8.まとめ

 以上が、うおとひとの内容になります。普段は、SNSなどの発信でしか接点がなかった方々に初めて会えた、このうおとひとで初めて知り合えた方がいたなどと非常に有意義な時間を過ごすことができました。地域単位の自然を見た場合の違い、自身の活動について紹介されており、日本の自然を守るための活動は、一様ではないということであり、やり方というのは、多いなと感じました。こんなに情熱的な方々によって情熱的に保全活動などが取り組まれているため、日本の淡水魚の未来や希望というのは、明るいものではないかと感じました。
 今回、出展された方々は、関西圏、特に大阪、京都、滋賀が中心でしたが都道府県単位で見た場合、こんなにも自然が違うのかと出展を見て驚かされました。どのような展示をしていたのかを知れば、その地域での自然の特徴や違いを知ることができるはずです。このように違いがあるというのが、日本の自然の豊かさを象徴するものではないかと思います。
 また、開催された場所が、きんたい廃校水族館です。この水族館の展示も少しだけ見たのですが、かなりいいものが展示されており、ある生き物をテーマとしていました。軽くだけしか見れていないのですが、どのような活動を行い、何を発信しようとしているのか、こちらもブログで取り上げ紹介してきたいと思っています。
以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

9.出展者リンク先




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