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緑豊かならいい、わけがない。

和歌山県日高郡美浜町三尾に滞在していた1年間、度々取材中にお会いしていた新聞社の記者さんとお話しする機会も多々ありました。そんな中、地方紙にコラムを寄稿する機会がありました。自分の自己紹介や、イベントの案内、自分が感じた美浜町について書きました。今日はそのうちの一つ、浜辺の道を原付で駆け抜けている時に目についたものについての寄稿です。


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三尾に住んでいると御坊に出るには必ず通らなくてはいけない県道24号線、三尾の東端の逢母磯から潮吹岩を通り煙樹ヶ浜の西端、元の脇までの道は磯沿いを通る道です。

単車のハンドルを握りながらふと海の方をみると煙樹ヶ浜、日高富士で名高い真妻山が広がる景色。興奮せざるを得ない景色です。しかしながら、そんな景色は途切れ途切れにしか見えません。道と磯の間に生える暖竹(あせ)がその視界を塞いでいます。

竹林のような整然とした美しい姿ならまだしも、所狭しと生え散らかっている暖竹の姿で美浜町随一の美景が覆い隠されているのが腹立たしくておちおち夜も眠れません。暖竹は食するにも悪く、動物の餌にもならず、周りの植物を淘汰し繁殖する恐ろしい植物です。暖竹は5mほどまで成長するので風除けになるとも言われます。

しかし、全体を覆うように生えているのならともかくとして、絶妙に部分部分で生えている現状ではその効果もないでしょう。

逆に5mほどまで成長した立派な暖竹が万が一折れて道路にはみ出た場合、かなり危険です。私の考えとしては、道路を通る車からの視界が確保されるレベルで茎を一時的にでも伐採するべきだと考えています。

今はところどころ綺麗な風景がある程度の風評の県道24号線が海辺の道を代表する道となることでしょう。しかし、伐採する大義がないことには進みそうにありません。そこで日高新報を購読されている皆様にご提案です。暖竹はなれ鮨を包むのに伝統的に使われています。というか、それぐらいしか暖竹の活用はありません。そこでなれ鮨の消費が上がれば暖竹の需要も上がり、暖竹が伐採されていくのではないでしょうか。ということで、みなさんなれ鮨を食べて美しい景観を取り戻しましょう!

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美浜町三尾は横に長い美浜町の西半分、半島から突き出た岬の麓にありました。開かれた浜辺を通り、山がちな岬部に入ると海岸線を縫うようなクネクネ道を通らなくてはいけません。近隣に住まう人が直線距離では近いけど、三尾に行きたがらない理由ではあるのですが、僕はこの道が大好きでした。このみちは海、煙樹ヶ浜、松林、山、雲、空が一望できる、クネクネした道で風を感じて、日陰に日差しの強さを見る。この道を通るたびに「エモさ」を感じていました。

しかし、この道の綺麗な景色を遮るのが、道沿いにどっさり生える「アセ(暖竹)」でした。

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イネ科の多年草であるこのアセ、和歌山の休耕田(耕されなくなった田んぼや畑)や海岸線に所狭しと生えまくっている「雑草 of 雑草」です。

発祥は中国とされており、日本では古来から見られるらしいですが、アメリカ大陸では「侵略植物」とされています。

というのもこの暖竹、えげつなく繁殖力が高い。実際にゲストハウスの裏庭を耕す時に一番苦戦したのがこのアセでした。

根っこで繁殖するので、ちょっとでも根っこが地中に埋まっていると2週間ぐらいでにょきにょき伸びて他の植物を駆逐します。



このアセという植物は僕にとても大きな印象をもたらしました。
「緑が多いことだけを良しとしてはいけない」ということを強烈な形で教えてくれたからです。

人が手入れをしなくなった畑や田んぼにアセや、笹、竹が生えている風景はかなり見かけました。そのほとんどが無造作に生え散らかっており、その地をまた耕作できるようにするには雑草を伐採し、根っこを掘り起こさなくてはいけません。それだけでわざわざ開拓するコストに合わない。

さらに生え散らかった雑草の中にイノシシやシカ、アナグマが隠れます。そこを隠れ蓑にして、人が見ていない隙に田んぼの稲を食べあらし、みかんや梅の木に唾液がつき、木が使い物にならなくなります。

農業における獣害は非常に深刻な問題です。157.7億円の被害が起きている被害の一因がこの耕作放棄地が「変化しない」ことなのです。

村を走ると、いたるところに所狭しと生えるダンチクや雑草が生えまくっています。

ダンチク2

ダンチク3

そして、実際にダンチクが生えていた場所を無理やり切り開くと、日本の豊かな自然とは程遠い、アメリカの荒野のような景色が広がっていました。

ダンチク4

緑豊かならそれでいい。

そんな簡単な話ではなく、しかもそんな「緑」がかなりとんでも無いことになっていることを痛感しました。

緑豊か、自然豊かとはなんなのか。考えさせられます。

もし琴線に触れることがあれば。最低金額以上は入れないでください。多くの人に読んでもらえれば嬉しいです