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攻撃の新たなオプションとして、ピッチに立ち続ける。MF松本健太郎【Voice】

今年、J2のファジアーノ岡山FCから移籍して来たMF松本健太郎選手の登場です。左右のMFをこなすユーティリティの相性は「マツケン」。数少ない佐賀大学出身のプロサッカー選手に、お話をうかがいます。

▼プロフィール
まつもと・けんたろう
1996年生まれ。佐賀北高→佐賀大→ファジアーノ岡山FC
2020年いわきFC入団

■左右同じクオリティでプレーできる。

松本選手は今年、J2のファジアーノ岡山FCから移籍。JFL第17節ヴェルスパ大分戦の終盤にリーグ初出場。翌18節のFCマルヤス岡崎戦にも後半途中から出場しています。攻撃の新たなスイッチを入れる存在として期待される松本選手に、チームの印象から語っていただきました。

「とにかく若くてエネルギッシュ。ファジアーノはベテラン選手もいて僕は若手でしたが、いわきFCに来たらいきなり年齢的に上の選手になってしまった。若さがまったく違う。勢いがあり、怖いものなしという印象を受けました。

そしてよく走るチームで、運動量が求められる。もともと走力には自信がありましたが、もっと上げなくてはいけないと感じています。

走力や球際の強さといったクラブのコンセプトをきちんとこなした上で、自分のストロングな部分をどうチームに還元できるか。そこに自分の価値が生まれてくると思い、プレーしています」

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両サイドのMFをこなす松本選手。このポジションには昨年からのスタートメンバーとして左に日高大選手、右に金大生選手がおり、今年からFWの平岡将豪選手もプレーしています。その中で松本選手は、どんな特徴をアピールしていこうと考えているのでしょう。

「自分の武器はアグレッシブさとゴールへ向かう前への推進力。そして、左右どちらもほぼ同じクオリティでプレーできることも強みだと思っています。

例えば左サイドから利き足を生かしてカットインしてシュートしたり、カットインと見せて縦に持ち込んだり。また右サイドでは縦に持ち込むと見せて、あえて左足で持ってカットインしたり。利き足は右ですが、左でも苦にせず蹴れます。

今年、JFLの試合数は例年の半分の15試合になってしまいましたが、必要とされるタイミングはある。J3昇格という目標に向け、自分の存在を示す1年にしたいです」

■本物なら、どこの大学に行ってもプロになれる。

松本選手は佐賀県出身。地元の佐賀北高時代はトップ下やボランチでプレーしていました。

「高校まではガリガリ。入学した時が身長158センチ体重は43キロしかなく、チームで一番細かったです。高校では全国大会には出られずに終わりました。でも当時から、自分は絶対プロになれるという、根拠のない自信だけは持ち続けていました。

Jリーガーになるために、卒業後は関東や関西の私大に進み、サッカーを続けようと考えました。でもお金がかかりますから、親は自宅から通える国立の佐賀大に入ってほしい、と。

自分は『プロになるには、サッカー強豪校ではない佐賀大ではダメだ』と言いました。でも『お前が本物ならどこの大学に行ってもプロになれるはずだ』と言われ、ここで結果を出すしかないと思いました」

推薦で佐賀大教育学部に進学。しかし、サッカー部はなかなかの厳しい環境にありました。

「ボコボコのグラウンドであまり管理ができておらず、ゴール裏では夏休みになると小学生が虫を取っていたり、留学生がサッカーをしていたり。雨が降ったら大きな水たまりができて1週間ぐらい乾かず、サイドには膝ぐらいの高さの草が伸びていました。(↓佐賀大のグラウンド)

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教職や一般の就職を目指している部員がほとんどで、バイトで練習に来ないことも普通。サッカーをしっかりやりたいと思っていても、流されていく選手も多い。最初はショッキングでした。でも、決して気持ちがブレることはなかったです」

自分にはサッカーしかない、という思いのもと、プロになる夢をかなえるため、自分を貫いた松本選手。名門大学と比べて劣る環境の中、折れない精神力を磨いていきました。

「佐賀大から二人のプロサッカー選手が出ていることが、励みになっていました。ロアッソ熊本の黒木晃平さんと、松本山雅でプレーした鐡戸裕史さんのお二人です。

特に鐡戸裕史さんは、社会人チームからサガン鳥栖の練習生を経てプロになった方。サガン鳥栖から地域リーグ時代の松本山雅FCに入り、J1まで上り詰めました。そんなすごい先輩がいらっしゃるのだから、諦めちゃいけないと思っていました」

また結果として、佐賀大に進学したのは悪いことばかりではありませんでした。

「実家から通っていたため、食生活で協力してもらいました。それと大学の近くに祖母の家があり、お昼ご飯を食べさせてもらっていました。栄養の勉強をして、必要な栄養を摂ることを心がけました。大学での生活はフリーな時間も多いので、たくさんトレーニングをして、いい食事を摂れたのは大きかったです」

■九州選抜入りをきっかけに、チャンスをつかむ。

大学1年でサイドに転向。地道にトレーニングを続けた松本選手は徐々にパワーアップし、持ち前のスピードに磨きをかけていきました。大きなターニングポイントは、2年生での九州選抜入り。これをきっかけに、プロ選手という夢に向かって大きく前進します。

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「選抜に入るのは福岡大とか鹿屋体育大とか、強い大学の選手ばかり。降格争いをしている佐賀大の選手がピックアップされることは稀です。

それでも九州選抜の選考会に呼んでいただいたので強気でプレーしていたら、コーチの目に留まり、選ばれた。このことがきっかけとなり、道が開けていきました。

そもそも、佐賀大の試合を見るためにJリーグのスカウトが来ることはほとんどない。でも強豪大学の試合には来るわけですね。ある時、福岡大学との試合ですごく調子がよかったことがありました。それで、当時の福岡大のコーチが九州選抜のコーチでもあり、自分のことを知っていたんです。その方がファジアーノのスカウトに『佐賀大のサイドの松本はいい選手だ』と推してくれたらしいです。

それがきっかけで、大学4年の夏に約3週間、ファジアーノに練習参加しました。このチャンスを逃すわけにはいかない。必死でアピールしました」

その結果、松本選手は大学卒業後、J2のファジアーノ岡山FCに入団します。子供のころから夢見ていたJリーガーという夢を見事かなえたのでした。

■いわきFCだから入団した。

しかし、夢見ていた日々は厳しいものでした。大学時代の膝のケガの影響を引きずり、負傷と復帰を繰り返します。

「プロで戦うことを見すえて、大学時代に膝を手術。そして入団1年目の途中までプレーできていたのですが、10月に手術した箇所を再び痛めてしまいました。そのリハビリが上手くいかず、復帰できそうだけどできない、という状態が続き、フルに動けるまで半年以上かかってしまった。

結局、復帰できたのは入団2年目の夏過ぎ。プレーできるようにはなりましたが、すでにシーズン後半。試合に出るチャンスはなく、ファジアーノとの契約は終了。持っているものを出し切れなかった2年間でした。でも、それは言い訳。例えケガをしていても、使われる選手は使われる。単に自分の実力がなかっただけ。

試合には出られませんでしたが、毎日の練習を悔いのないよう積み重ねていたので自信がありました。だから岡山との契約が切れて無所属になっても、自分のプレーを多くのチームの人に見てもらえるいいチャンスだと思い直すことができました」

フリーの立場でいくつかのチームに練習参加し、移籍のチャンスをうかがっていたところ、いわきFCからコンタクトがありました。

「代理人を通じて大倉さんから連絡があり、大倉さんは『いわきFCにはJリーグのチームに負けない環境とバックアップがあるから、必ず成長させる』と言ってくださった。うれしかったですね。すぐにOKの返事をさせていただきました。

プレーするカテゴリーをJ2からJFLへと落とすことには少し抵抗がありました。それでも入団を決めたのは、いわきFCのビジョンにひかれたからです。

自分はエリート街道を歩んできたわけではありません。ここから這い上がっていこうと決心し、年々カテゴリーを上げてきているいわきFCと共に大きくなっていきたいと思いました」

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■10年やれなかったら、アルバイトと一緒。

今、最も大切だと考えているのは、プレーし続けること。この2年間、シーズンを通してプレーできていないという現実。だから、まずはピッチに立ち続けられる強い身体を作る。そのためにも大学時代から引き続き、食事にはこだわっています。

「いわきFCの環境は本当にありがたいです。食事はおいしいし、練習の後すぐにでき立てを食べられる。夕食はほぼ自炊ですが、いろいろと工夫しています。こっちに来てから、外食することはほとんどなくなりました。

最近は食材を吟味していて、自然食品を買ったり、なるべく植物性の食品から栄養を摂ったりしています。このチームに来てストレングストレーニングが増えたので、ハードなトレーニングに加えて、本や参考書で勉強した身体に合う食品を摂ることでコンディションを整え、今まで以上のパフォーマンスを発揮できるように努力しています」

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そんな松本選手の今後の目標は「プロ選手として10年プレーすること」だそうです。

「ファジアーノに入った時の監督だった長澤徹さんが『プロで10年やれなかったら、アルバイトしていたのと一緒』とおっしゃっていたんです。それがとても印象的で、自分も本当のプロ選手になりたいと思っています。

いわきFCでたくさん経験を積み、上のカテゴリーで戦いたい。それは、今ここで結果を出し続けることで初めて見えてくる。目の前の目標を一つずつクリアしていきたいと思います。自分もそろそろ25歳。サッカー選手としては決して若くない。今はとにかく、結果がほしいです」

▼松本選手をもっとよく知る4つのQ&A
Q1:夕食はどんなものを自炊していますか?
A1:まずご飯は白米を玄米に換え、そこに雑穀を入れています。あとはソイミートでハンバーグを作ったりとか、たんぱく質をなるべく植物性のものから摂るようにしています。間食にはフルーツやミックスナッツを食べています。実はナチュラルフードコーディネーターの資格を取ろうと思っていて、時間のある時に勉強しているんですよ。

Q2:他には、家で何をして過ごしますか?
A2:本を読んだりコーヒーを飲んだりですね。以前からコーヒーが好きで、いろいろ豆を買って飲んでいます。今はだいたい決まってきていますね。王道ですが、スターバックスの「TOKYO東京ロースト」が好きです。

Q3:練習の疲れはどうやってケアしていますか?
A3:まずはよく寝ること。21時半には寝て、朝は6時半ぐらいには起きています。それと、自宅で必ず浴槽につかりますね。温泉もよく行きます。いわき健康センターの炭酸泉が気に入っています。炭酸泉は身体がよくほぐれて好きで、炭酸泉と水風呂で交代浴をしています。

Q4:春の自粛期間は、練習以外どのように過ごしていましたか?
A4:オンライン英会話を始めました。実は大学4年の時に少しだけやっていたんです。いつか海外でプレーすることも考えていますし、チームの外国人選手とのコミュニケーションも、英語ならだいたい通じるので。

▼松本選手のプロフィールはこちら

次回はFWとMFの二刀流プレーヤーとして、開幕から先発出場を続ける山口大輝選手の登場です。お楽しみに!


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