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JFL第5節 ラインメール青森戦【いわきFC監督・田村雄三ここだけの話~BEHIND THE SCENES④】

田村雄三監督が自ら試合を振り返る連載コラム。今回は、4月11日にJヴィレッジスタジアムで行われたJFL第5節の裏側を語ります。

▼プロフィール
たむら・ゆうぞう

1982年生まれ。帝京高→中央大→湘南ベルマーレ
2010年に引退。湘南ベルマーレ強化部スタッフを経て2015年、いわきFC強化部へ。2017年よりいわきFC監督

トレーニングでやってきたことに、トライしてほしかった。

第4回目のnoteです。JFL第5節・ラインメール青森戦の振り返りを書かせていただきます。

今季リーグ戦初のJヴィレッジスタジアムでの試合でした。我々にとって特別なスタジアムです。

今節もコロナ禍で声を出せない中、太鼓、手拍子などで選手を後押しして下さり、ありがとうございました。おかげ様で終了間際に同点に追いつき、何とか引き分けることができました。この勝ち点1を大切にしたいと思います。

開始早々に失点したことは課題ですが、個人のミスというより、全体としてやること、状況に応じた対応をもっと刷り込ませる必要があると感じています。

前半の反省は、ビルドアップをするのか背後のポイントにボールを置くのか、チームとして意思統一ができていなかったこと。強いて言うなら、CBはもっとビルドアップをしてほしかった。

CBがボールをGKに下げる。でもその時、前線は背後に動き出していたり、中盤も次のサポートを考えている。その結果DF-MF-FW間のスペースが広がり、次のセカンドボールを奪うことも難しくなる。そんな悪循環でした。これに対しては飲水タイム前、ボランチをDFラインに下げることで修正しました。

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(このnote、選手も読んでいるようなので、弁解するわけではありませんが…)このように書くと、CBが悪いように思えます。でも、そうではありません。

「ミスを恐れるな」と言われても、最終ラインの選手にとってのセオリーは安全にプレーすること、安全にビルドアップすること。でも、運ぶ、敵を剥がす、持ち出すなど、トレーニングでやってきたことにトライしてほしかった。それだけです。相手の状況によって判断してプレーするのは難しい、ということです。

今節のCB 2人も、まだまだ成長中。試合ごとにたくましくなってきています。課題をCBの選手間で共有し、次につなげたいと思います。


サッカーではいろいろなことが起こる。

試合を難しくした理由として、ラインメールさんのゲームプランもありました。

ラインメールさんは1試合平均500~600本のパスをつなぎます。後方から丁寧にビルドアップし、ポゼッションするチームで、過去3戦いずれもボール支配率は相手を上回っています。しかし「コートを3分割にした場合の、最後のアタッキングサードへの侵入回数は少ない」というデータがありました。

そのため、第5節のゲームプランは

①敵陣で奪うことをより意識する。
②奪ったボールを前方に。ショートカウンターを狙う。

というものでした。

しかし試合が始まると、準備とは違うことが起きました。ラインメールさんは、我々の背後をシンプルに狙ってきました。

決して、それがいい、悪いという話ではありません。サッカーではいろいろなことが起こる、ということです。

ちなみに我々の場合、パスの数は1試合200本ぐらいです。グランド状況、天候などさまざまな状況に応じてきた結果ですが、少ない方だと思います。ただし、アタッキングサードへの侵入回数は多い。

現代サッカーは言語化、方法論、戦術論など、皆さんさまざまなことを語ります。それは、見ている人がそれぞれ感じてくれたらいい。ざっくり言うと、サッカーの本質を押さえ、ポゼッションもカウンターもできなければいけない。それが現代サッカーです。

我々はパスの数より、パス成功率、ペナルティー侵入回数、クロス時のペナルティー内にいる枚数、敵陣で奪う回数などに、もっとこだわっていきたいと思っています。

ミーティングは今でも緊張する。

試合前のミーティングでは、上記のゲームプランに加えて今年のスローガンを伝えました。

HUMBLE &HUNGRY -成長を、挑戦を貫く- 謙虚に、貪欲に。

「また同じ言葉か、同じ話か」と思った選手がいたら危険。チャレンジャーであることを忘れてはいけない。謙虚に貪欲に。決戦のつもりで戦おう、と話しました。

実は今年のスローガンを決める時、社長の大倉と「毎回、試合の時に語れる言葉がいいよね」と話していました。チームの状況に合う言葉、刷り込ませるように語れる言葉、選手に響く言葉、そして立ち帰れる場所(言葉)。そんな考えで決めた今年のスローガンです。さすが社長。いい言葉だと思います。

ミーティングでは、時間、場所、模造紙の貼り方や位置…など、細かいことにこだわります。なぜなら、選手に集中してほしい。それだけです。

(※YouTubeでは、試合のロッカールームやチームの裏側に密着した映像「BEHIND THE SCENES」を公開中)

話す時、実は今でも緊張します。社長が聞いている、百戦錬磨の古川GKコーチが聞いている、齋田ドクターまで聞いている。そして、YouTubeで試合後に流される…(試合後にYouTubeで流されるのは嫌というか、恥ずかしいですね。私も人間なので)。

そんな状況ですから、とにかく、いろいろ考えて話しているつもりです。基本的にメモ用紙は使わず、すべて頭に入れて挑んでいます。

また、トレーニング時に「試合の振り返り映像ミーティング」を行うのですが、村上アナリストと毎回映像をかき集め、編集し、伝わるように加工して映像を作ります。

ミーティングの後、村上アナリストはかなり厳しいです。すべての映像を頭に入れてから話すのですが、言葉足らずだと「今日は80点ですね」などと言われてしまいます。年下なのに…。

そんなこともあり、ミーティングでは「緊張感」を大切にしています。

そして「緊張感」といえば、もう一つ。今週の田村は性格が悪かったです。ある日の夜に

(渡邉)匠さん、明日のトレーニング指揮して。対青森に必要な要素を入れて。よろしく。

そう言って帰りました。

匠さんはテンパったようです。青森の試合を見返し、夜中までコーチ陣と話し、悩んだそうです。

これは、匠コーチいじめではありません。少々手荒いですが、緊張感を出すためです。コーチも指導しないと面白くありませんからね(ちなみに匠コーチは、今年A級ライセンスの取得を目指しています)。

同じことを考えている、思っていることが大切なので、またタイミングを見て、やろうと思います。これでコーチもアラートです笑。


第5節のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)は?

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