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【作品紹介】小川洋子「ブラフマンの埋葬」(葬送のフリーレンとの共通点も)

今日は久々に小川洋子さんの小説「ブラフマンの埋葬」を読んだので、その作品紹介を投稿します。

ブラフマンの埋葬は、私の好きな小説ベスト5に入る作品なので、どこかで作品紹介を書きたいなーと思っていました。

私は普段は主に、葬送のフリーレンについての記事を書いているので、ブラフマンの埋葬と葬送のフリーレンとの共通点も、本記事の最後に付け足したいと思います。



ブラフマンの埋葬とは

「ブラフマンの埋葬」は、2004年に刊行された小川洋子さんの小説です。

小川洋子さんの小説としては、「博士の愛した数式」が有名かもしれませんが、本作品はその翌年に発表された小説で、同年に第32回泉鏡花文学賞を受賞しています。

あらすじとしては、様々な芸術家の集まる〈創作者の家〉の管理人である「僕」が、怪我をした奇妙な動物「ブラフマン」を保護したことをきっかけに始まる、ひと夏の体験を描いた物語、といった感じでしょうか。

好きな小説である理由

私がブラフマンの埋葬を好きな理由は、描写は丁寧で具体的だが、全体としては不可思議で曖昧だからです。

小説に登場する「ブラフマン」は、暗闇が怖かったり、尻尾の長さが胴の1.2倍くらいあったりと、容姿や特徴について丁寧に描かれています。

しかし小説を最後まで読んでも、「ブラフマン」とはいったい何の動物なのかは曖昧のままです。

丁寧に描くことで、読者は「ブラフマン」に対して愛着が湧いてくるのですが、全体として曖昧にしておくことで、読者の体験と重ねる余地を残しているのが特徴です。

実際に私が昔読んだ当時は、ちょうど飼っている犬が老齢で足を悪くした時期であり、その犬との思い出を重ねたことが影響したのか、読後に涙が溢れたことを憶えています。

こんなに小説に没入したのも、この小説が初めてで、小説を読むことの面白さを発見した大切な作品と言えます。

この小説の描き方については、以下リンクの記事にわかりやすく書かれています。

「ストーリーより描写」「ストーリーは人間の欲望」「描写は神の認識への道」という言葉が示す通り、小川洋子さんの小説は登場人物の内面には踏み込まず、とにかく丁寧に謙虚に、人物や状況を俯瞰的に描写し、読者それぞれのストーリーが創造されることを促しています。

中でも「ブラフマンの埋葬」は、その思想が色濃く反映されていると思っており、しかも短めの小説なので、世界観に没入したまま最後まで読み終えることがし易い作品なのかなと考えています。

他にも魅力はありますが、長くなりそうなのと、これ以上は野暮になりそうなので、ぜひこの小説を読んでみることをオススメします。

葬送のフリーレンとの共通点

最後に少しだけ、漫画「葬送のフリーレン」との共通点を2つ紹介します。

1つ目は、死について静かに描かれていることです。

タイトルにあるように、両作品とも死についての描写があります。

ブラフマンの埋葬では、上述したように、作品の方針として死を俯瞰的に描いており、また葬送のフリーレンでは、エルフのフリーレンの視点から死を俯瞰的に描いているため、両作品とも死をドラマティックなものとしていません。

現実に起こる死も、大体は静かなものであり、個人的には両作品とも共感性の高いものだなと感じています。

2つ目は、未知のものへの理解がテーマであることです。

ブラフマンの埋葬では、ブラフマンの存在が未知であり、読者はそれをなんとか理解しようとします。

葬送のフリーレンでも、フリーレンの内面は人間にとって未知であり、これも読者はなんとか理解しようとします。

その理解しようとするプロセスが、なんか尊いなあと感じています。


まとめ

本記事では、小説「ブラフマンの埋葬」の作品紹介と、私がその作品を好きな理由、そして漫画「葬送のフリーレン」との共通点を紹介しました。



長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。



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