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【マンガ紹介】ひきだしにテラリウム:非常にバランスの取れた短編集

「ダンジョン飯」がアニメ化するとのことなので、原作者である九井諒子さんの別作品を探したところ、「ひきだしにテラリウム」という漫画に出会いました。

本記事では、漫画「ひきだしにテラリウム」の簡単な説明と、個人的に魅力的だと思う点を挙げ、最後に好きなエピソードを3つ紹介したいと思います。



ひきだしにテラリウムとは

ひきだしにテラリウムは、九井諒子さんによる短編漫画集で、いわゆるショートショートと呼ばれる話が合計33編収められた作品です。

現代ショートショートの第一人者である作家・田丸雅智さんによると、ショートショートとは、「短くて不思議な物語」であり、もっと詳しく言うと「アイディアがあって、それを生かした印象的な結末がある物語」であるとされているそうです。(以下リンクから一部引用)

印象的な結末というと、ちょっとハードルが上がってしまいますが、くすっと笑ったり、最後の言葉の意味を少し考えるなど、少しだけ感情とか思考が動かされる感じだと、個人的には思っています。


ひきだしにテラリウムの魅力

この作品の魅力は、個人的に2つあると考えています。

非常にバランスの取れた短編集

この作品は全33編の短編で構成されていますが、それらのストーリー・設定・キャラクターが、全体として非常にバランスが取れているのが、本作品の魅力です。

ストーリーで言えば、ベタなものもあれば、シュールなものもある、オチでくすっと笑えるものもあれば、ちょっと感動するものもある。

設定で言えば、現実的なものもあれば、非現実的なものもある、未来的なものもあれば、昔話的なものもある。

キャラクターで言えば、モンスターもいれば宇宙人もいる、人間味のあるキャラもいれば、サイコパスなキャラもいる。

それらを全体としてみた時に、バランスよく様々な要素が配置されており、一冊としての完成度が高いなと感じました。

バランスが良いので、何かしら刺さるような短編は、どんな人でも1つくらいはあると思います。


ダンジョン飯の原型が感じられる

非常にバランスの取れた、と表現しましたが、無味乾燥というわけではなく、作者である九井諒子さん、もしくは漫画「ダンジョン飯」の味が出ている部分もあります。

例えば、龍を食する話が出てきたり、さらにその龍の生態や構造について、やたら詳しく記述してあったりと、空想の生物に対する愛が溢れ出ています

あと、言葉で説明しづらいですが、各話のオチの裏切り方が、漫画「ダンジョン飯」のセンスに似ている感じがします。


好きなエピソード3選

基本ネタバレなしで紹介しますが、おそらく元になったであろうアイディアと、大まかな話については触れていきます。

ノベルダイブ

この話はざっくり言うと、寝る前に小説を読む話です。

おそらく作者も、その経験をアイディアとして、物語を展開させたのだと思われます。

私も寝る前に小説を読んだことはありますが、たぶんこの話のようなことは経験したことあるだろうなあ、という共感の持てる話でした。

現実と非現実の境目が、あやふやになる感じが心地良いのと、くすっと笑えるストーリーが魅力です。


すごいお金持ち

この話はざっくり言うと、ある島にて奇妙な生活を送るお金持ちの話です。

観光客がホテルから見えるその島に興味を持ち、ホテルの従業員に説明してもらうのですが、ツッコミどころ満載の生活をしています。

私も読みながらツッコミを入れていたのですが、それこそが作者の狙いで、上手いこと思考誘導されて、最後のオチを見た時に、一本取られた気分になりました。


遠き理想郷

この話は、小学生に話すための紙芝居のストーリーを、中学生が考える話で、いじめ・迫害・差別とはなにかを伝えるのが課題となります。

おそらくアイディアの元となったのは、作者と編集者とのやり取りではないかと考えています。

というのも、ダンジョン飯を見てもわかるように、九井諒子さんは非常に綿密にストーリーや設定を考える人で、シンプルに伝えたい編集者と、よく口論になっていたのではないかな、と想像したからです。

この話は、そのような作者の状況が想像できるような短編でした。


まとめ

本記事では、漫画「ひきだしにテラリウム」の簡単な説明と、個人的に魅力的だと思う点を挙げ、最後に好きなエピソードを3つ紹介しました。


長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。



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