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黒澤明「生きる」

偶然NHKで見たのですが、良かった。1952年黒澤明「生きる」。役所の市民課課長で事なかれ主義の主人公が限られた時間を受け入れるまでの苦悩は多く描かれていた。主人公は饒舌なタイプではなく、聞き取れたのは、「自分の金で酒を飲んだことがない」という台詞、息子にも病気のことは言わずじまい。一方、限られた時間でも自らにはできることがあると確信してからの主人公は庁内の難しい調整や困難な出来事(助役はその部屋で他の幹部と「芸者がアルバイトだった」ということを話したり、主人公の功績を自らの手柄に話を持って行くようなダメっぷり)があるにもかかわらず5か月で市民らから要望のあった(市民はこれまであちこちたらい回しにされてきた)公園をつくり、ブランコで楽しげにゴンドラの唄を歌う。そしてこの主人公の凄まじい活躍は彼の通夜で、そこに来た出席者たちによって回想シーンとして明らかになった。葬儀に出席した市役所の同僚たちは葬儀のその場では主人公課長を本当に讃えるものの、日常の仕事に戻ると以前と同じく市民をたらい回しにする。主人公が作った公園ではたくさんの子どもたちが遊ぶ。ー主人公がおしゃべりや感情を表現するタイプでないところが歯がゆかったり、宗教的に見えたりした。終戦後7年の市民意識と役所の人々の在り方が描かれていたのは興味深かった。

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