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デザインアプローチまとめ 2019

「XXデザイン」というデザイン論が増えてきたので、各アプローチの違いを自分なりに整理してみました。随時更新していきたいと思います。(最終更新日:2019/7)
各アプローチのモデル図は、典型的なプロセスを描いており、それが唯一のモデルと限定しているわけではありません。様々なアプローチやリサーチメソッドの融合や進化も日々行われており、各アプローチが変化・進化していくことを期待しています。

1. フォアキャスティング系

過去〜現在を起点に未来を考えるアプローチ。

1.1. デザイン思考 / Design Thinking

特徴
ユーザー中心・ボトムアップ視点のアプローチ。特定のユーザーからニーズやペインを読み取り、それに対して多くのアイデアを出してスマートに解決するソリューションを考える。

現状
イノベーションを創出するためのメソッドとして多くの企業で試行・導入され、ブームになりつつある。一方でメソッドを使うことが目的化してしまっていたり、ユーザーニーズを叶えるだけではイノベーションを起こすのは難しいといった批判もある。方法論の本質を理解し、卓越して使いこなせるメンバーがいないとデザイン思考の価値を100%引き出すことは難しい

ポイント
①最初から最後までユーザーの顔を見続けること、②可視化・形にすること、③ユーザーから学習し柔軟に対応すること、の3点がデザイン思考のポイントであると共に、強い部分なので、究極に具体化・ユーザーに入り込み、常にユーザーが主語で考えることが鍵になる。UXデザイン界隈を中心に実践例も出始めているので、ナレッジも溜まっていくと考えられる。

1.2. システム思考 / Systems Thinking

特徴
システム中心・マクロ視点のアプローチ。特定ユーザーというよりは少子高齢化・売上不振等の大きな問題から始まる場合が多く、過去の推移や構成要素、依存関係を分解・パターン化しながら分析的に根本原因を捉え、それを解決する新しいシステムを創出する。

現状・ポイント
トップダウンで問題を捉えるため、社会イノベーションやコミュニティデザイン、社内プロセス改善などの分野と特に相性が良いと感じる。ループ図などの問題分析のツールだけでは、個のエンドユーザーに十分アクセスすることは難しい局面もあるため、具体的な体験・タッチポイントデザインにはデザイン思考など他のアプローチの良いところも取り込んでいくのがよいとSDMの書籍では書かれている。

1.3. デザインドリブンイノベーション / Design-Driven Innovation

特徴
インサイドアウト型のアプローチ。我々が暮らす世界の中でのモノの意味に注目し、新しい意味を創出することがイノベーションに通じると説く。そのためユーザーの声を聞くのではなく、自分の内なる声に耳を傾け、こうしたい、世界をこんな風に変えたいという思いや愛からプロダクトを作り、建設的な批判(Critisism)を受けながら成長させていく。

現状・ポイント
ユーザーに聞いても欲しい物は分からないというデザイン思考の制約・限界を元に、意味のあるものをデザイナーが内なる声に基づいて作るべきだというある意味デザインの原点回帰を唱えるアプローチ。よりインスピレーションやセンスが重要になってくるが、モノや現象を表面的に捉えるのではなく、どんな意味があるんだろう、なぜこれが求められているんだろう・・とWHYの部分に常に立ち返ることで、新しい意味を創出する感覚は養われてくるのではないかと考えられる。創出する意味の突飛さ具合が、フォアキャスティングかバックキャスティングかを分ける境目になってくるような気がしており、次以降のバックキャスティング系のアプローチとも共通点があるような気がしているが、常に物事の存在意義やWHYを問いかける姿勢は共通して重要なデザイン態度と言えるだろう。

2. バックキャスティング系

未来を起点に現在どうするべきかを考えるアプローチ。

2.1. スペキュラティブデザイン / Speculative Design

特徴
未来のシグナルや先端技術など、世の中を変える可能性があるドライビングフォースを捉え、それがどのような世界を形作るのか、非連続の未来を想像し、触れるプロダクトを介して表現する。問題解決のデザインではなく、問題提起のデザインと紹介されることが多く、じゃあ今どうしたら良いのか?という議論を巻き起こすことが目的であり、スペキュラティブデザインの成果物自体が具体的な直近のアクションを指し示すところまでは対象としていない。その部分は鑑賞者・体験者に委ねられているという点で、厳密には未来起点ではあるが、現在へのキャスティングはしていない。

現状・ポイント
RCAのDunne & Rabyが提唱し、直接指導を受けたスプツニ子!氏、牛込陽介氏、長谷川愛氏など日本人リーディングプレイヤーもいるため、言葉自体はデザイナー界隈ではよく知られているところである。アメリカでもParsonsのE.MontgomeryやNYU ITPのC.Woebken(2人はExtrapolation Factoryというユニットでも活動している)など、Dunne & Rabyの教え子たちが教鞭を取っており、スペキュラティブデザインのDNAが残り続けている。

一方で可能性のある未来として提示すると、ではどうやって行くのか答えも提示してほしいという批判を受けることがあり、現在のソリューションとの接続をどうしたらよいのかに関しての議論が以前から上っていた。そのような状況下で、Dunne & Rabyは現在は技術者・科学者というよりも人類学者・哲学者と協業し、技術が導く可能性のある未来ではなく、技術の背景にあり、現在を代替する可能性がある哲学を可視化するDesigned Realityという概念を模索している。

2.2. トランジションデザイン / Transition Design

特徴
システム中心・マクロ視点のバックキャスティングアプローチ。地球規模の「意地悪な問題」を解決対象とし、問題が全て解決され、長期に渡り同じ生活を繰り返すことができる持続的な未来のライフスタイルを思い描き、発想を現在とは非連続の未来へ飛ばす。そこから遡り、その未来へ行くにはどのようにすればよいのか、現実的なプロジェクト案を創出する。

現状・ポイント
2015年にカーネギーメロン大学が提唱した全部入りのデザイン。デザイン思考の生活者視点で発想する視点、システム思考のホラーキー(全体子)の視点、スペキュラティブデザインのラディカルな発想、そしてバックキャスティングで現在へ帰ってこようとする姿勢など、これまでのデザイン理論や学問が超包括的に組み込まれている。

一方でまだ理想論(これを作った人たちも学者でありデザイナーではない)にすぎず、実践例がアメリカでもほとんど無いのと、実践するためのツールキットはまだまだ不十分である。しかしますます長期的なビジョンや将来の夢を思い描くのが難しくなっている昨今、キラキラした理想を追い求めるデザインは非常に挑戦的であり、今後デザイナーに求められてくる部分だと感じる。また、未来の「ライフスタイル」を思い描くのであり、未来の「技術」ではない点が特徴で、より人々の価値観や信念はどうあるべきかにフォーカスしている。この点はDunne & RabyのDesigned Realityにも共通する思想だと感じている。

vs. シナリオプランニング
一点補足しておくと、バックキャスティングといえばシナリオプランニングが以前から語られてきたが、シナリオプランニングは企業が戦略策定の文脈の中で不確実な未来のシナリオを思い描き、意思決定をするためのツールとして用いられている。そのため、トランジションデザインが人々の持続的なライフスタイルを思い描こうとしている点、そのためのマイルストーンを引こうとしている点で異なる。

3. 参加型デザイン系

3.1. 参加型デザイン (Participatory Design)
3.2. インクルーシブデザイン (Inclusive Design)
3.3. 万人のデザイン (Co-Design)

これらについては、今回上の図で定めた軸で言うと、問題発見・解決のアプローチというよりもデザイン組織・プロジェクトの体制として重要と考え、プロジェクトのインフラになるものとして上記の図に配置した。個別の説明はまた後日追加します。

所感1: 万事万能なアプローチは無い?

アプローチを決め、何かスタンスを取るということは何かを捨てるということでもあるので、それ単体で万事万能なアプローチは無いと言える。そのため、色々なアプローチを引き出しとして持っておき、状況やフェーズに応じて、デザインアプローチ自体を融合・越境し、適切なアプローチを使い分ける力も今後重要になってくると考えられる。現在から考える(フォアキャスティング)か未来から考える(バックキャスティング)か、ミクロから見るかマクロから見るか、その2軸を操れるだけでも柔軟にデザインプロセスを設計できると感じる。理論と実践の回遊力+参加型デザインのファシリテーション力。この辺りが揃っているデザイナーはアメリカでもほとんどいないと思う。

所感2: バックキャスティング時代は来るのか?

非連続な未来、ラディカルな未来を思い描く手法として、これまでスペキュラティブデザインなどはどちらかと言うとアウトローな扱いをされてきたが、こうした強烈なイマジネーション、笑われるほど全く違うパラダイムを思い描く力が必要になる時代がいつか来ると信じている。そのために今留学して投資していると言っても過言ではない。

これは上のDunne & Rabyのインタビューでも21世紀のデザイナーの資質として言われているし、スプツニ子!氏の「はみだす力」、各務太郎氏が書籍内で言っている「自己中心デザイン」等の言葉もそうした意味を含んでいると認識している。また、東大が今年5月に芸術に関連した組織を立ち上げたり、落合陽一氏をはじめアートの重要性を語る論客も多い。バックキャスティング系のメソッドは、まさにその発想の部分のツールはほぼ無く、通常のアイディエーションを超えた、個人の強烈な感覚が必要だと感じる。来るべきバックキャストデザイナー時代に備え、デザインアプローチの体系化に関われたら幸いである。


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NY在住のデザインリサーチャー、教育者。東大→IBM Design→パーソンズ美術大学を2020年5月修了。ダン&レイビーに師事し、現在はトランジションデザイン等の最新デザイン論を用いた教育を日米で展開。日本から出て行くデザイナーのキャリアモデルを作りたい。学術と藝術のあいだで。

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