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【WITHコロナ時代の新観光スタイル実験】『お酒と器をDIY 窯蔵留学 IN 唐津』の感想と課題

こんにちは。
日本酒は飲めないから日本酒しか飲めないに変わったまっすーです。

先日、2023年1月28日-29日に唐津観光協会さん、そして唐津の日本酒酒蔵「鳴滝酒造」さん、唐津焼の窯元「中野陶痴窯」さんと最大6名限定のコラボイベントを行いました!
超豪華な内容だったので、是非とも記録として残しておきたいと思い、書き記します。

WITHコロナ、AFTERコロナの新しい観光スタイルの一つとして、日本酒関係の方や陶芸関係、観光業系の方々の参考になれば幸いです♪

WITH/AFTERコロナに求められる新しい観光スタイルについて

コロナによって、たくさんの観光系事業者の方々が傷を負いました。
そして、人々のライフスタイル、マインドにも大きな変化が訪れています。

JTBF「国内旅行市場におけるオピニオンリーダー層の意向調査」によると、今後の国内旅行では「近場への旅行を増やしたい」、「観光客が密集しない観光地に行きたい」、「自家用車による旅行を増やしたい」と回答している人が多数見受けられます。

「少人数、近場、三密回避」そして「非日常体験とプレミアム体験」

そのため、新しい観光としては、「少人数、近場、三密回避」が求められます。
コロナとの戦いも日進月歩であり、今後どうなるのかは誰にもわかりませんが、多少なりとも感染に気を遣った観光はしばらく気を遣うのではないかと思います。

そして、テレワークなどが増えたことにより、合理的な働き方になったと同時に日常疲れも増し、非日常感を求める人たちは増えています。

そんな需要を取り込むためにも、いつもとは全く異なる世界観で訴える少人数のプレミアムな観光体験は一つの新しい観光スタイルだと考えます。

今回、フランス商工会議所で知り合った唐津観光協会の会長兼唐津焼のギャラリー「一番館」の坂本社長と話し合いを重ね、今回の体験の実施をしました。

お酒と器をDIY 窯蔵留学について

今回の目的は「新しい観光スタイルを模索しながら、唐津焼と唐津の日本酒の魅力を伝える」ことです。

上述したようにwithコロナ、afterコロナの観光に備えて、『少人数・近場・プレミアム』を軸とした企画を行いました。

題して、「お酒と器をDIY 窯蔵留学 IN 唐津」!

■体験内容の詳細ページ
https://studyabroad-sake.com/products/kamakuraryugaku2023

ネーミングの理由は、まず唐津観光協会さんが毎年行っている「窯元ツーリズム」と弊社が行っている「酒蔵留学」をとって、「窯蔵留学」としました。

それから、今回は自らお酒と唐津焼の器をづくりを行い、つくり手の目線に立って学ぶことが狙いでもあったので、それを表すキャッチコピーが何かないかなーと考えたところ、「お酒と器をDIY」はキャッチーだなと思って、そう名付けました。

大まかなコンテンツ内容

体験の大まかなコンテンツは下記です。

  • 1日目:2軒の唐津焼の窯元巡り、蔵元さんと日本酒会

  • 2日目:早朝から酒蔵に行ってお酒造り体験、唐津焼の窯元で酒器とつまみ皿作成体験

料金は宿泊代込みで39,600円(税込)

ざっくりとは上記の内容ですが、1泊2日にわたる非常に濃ゆい内容だったので、その内容を後述します。

そもそも唐津焼とは

その前にまず唐津焼についてご存知ない方もいらっしゃると思いますので、唐津焼について簡単にご紹介します。

唐津焼の歴史

桃山時代から遡り、古い歴史を誇る伝統工芸「唐津焼」。諸説ありますが、近年の研究によると、1580年代頃、岸岳城城主波多氏の領地で焼かれたのが始まりとされています。その後、豊臣秀吉による朝鮮出兵の際、朝鮮陶工を連れて帰り、その技術を取り入れたことで唐津焼は生産量を増していきます。
唐津港から積み出される唐津焼は京都・大阪をはじめとする西日本に広がり、焼き物のことを総称して「からつもの」と呼ぶほどに。また、茶道の世界では古くから「一井戸二楽三唐津」と言われるように、茶人たちから愛される茶陶としてその地位を確立していました。

唐津観光協会 旅KARATSU https://www.karatsu-kankou.jp/guide/karatsu/

九州の陶芸の発展はそのほとんどが秀吉の朝鮮出兵の時に連れてこられた陶工の方達から発展してますが、唐津焼もその一つですね。

一時、衰退していた時期もあったそうですが、現在はかなり復興していて、今でも市内に約70の窯元さんが存在してらっしゃいます。

基本的に唐津焼は”土もの”の陶器です。

旅中に聞いた印象的なお話としては、唐津焼では「作り手8分、使い手2分」と言われ、料理を盛る、茶を入れる、お酒を入れるなど使い手が使い込んで、初めて唐津焼が完成するという「つくり手と使い手の一体型の焼物」であるというコンセプトが面白いと思いました。

唐津焼関係の共同主催者について


唐津焼ギャラリー 一番館

今回の共同主催の唐津観光協会の会長「坂本社長」は「美術陶磁器の店 一番舘」という唐津焼のギャラリーとちょこバルという日本酒バーを運営しておられ、茶道も遠州流の準師範であり、唐津焼にも茶道にも造詣が深い方です。

中野陶痴窯

陶芸体験を行ってくださった中野陶痴窯の中野政之さんは、唐津焼の次世代を担われる若手陶芸家の方で、陶芸体験などもよく行われているそうです。

窯元には、販売所と制作場、そして今は使われてない大きな窯も存在しており、今なお唐津焼の歴史を紡いでおられます。

唐津の日本酒「鳴滝酒造」さんについて


唐津市内には2蔵の酒蔵さんが存在してらっしゃいますが、そのうちの代表格の一つが鳴滝酒造さんです。

銘柄は「太閤」と「瀧」。
代表取締役の古舘正典社長は元中学校の社会科の先生という異色の経歴をお持ちで、非常に説明がお上手でした!

1705年に創業して、300年以上の歴史をお持ちの酒蔵さんですが、先代の社長の時に、より良いお水を求めて蔵を移設。

移設した場所は、「神田のお茶のお水」というかつて太閤秀吉が杉の根元から湧き出る水で千利休に茶を点てさせたという伝説が残り、唐津の歴代藩主が茶会の水として湧き水を用いた土地を選ばれたとのこと。

お水に徹底的にこだわるために、移設前には十数カ所に及ぶ試掘をし、お水を分析したのだとか。(凄すぎる・・相当お金かかってます。)


さて、本題の今回の内容とその様子を書きます。

Day1:一番館で唐津焼の説明、そして窯元巡り

まずは一番館に集合して、唐津焼の概要について坂本社長から説明をしてもらいました。

そして、太郎右衛門窯さん、隆太窯さんを訪問。

中里太郎右衛門

現在は14代目の方がやってらっしゃるとのことですが、12代目の中里太郎右衛門さんは人間国宝にも認定されていて、古唐津の再現や叩き技法という新しい技を開発した唐津焼の中興の祖的存在だそうです。

とても立派な場所でした。

隆太窯

隆太窯さんもとても集中できる小鳥の鳴き声がハッキリと聞こえる静かな場所で作陶をされていましたが、僕たちと話しながらも、全くもってブレずに作品を作ることができるところに職人の技を垣間見ました。


下記に中里太郎右衛門さんが経営されている御茶盌窯記念館で撮影した写真を貼っておきます。

桃山から江戸時代に作られていた「古唐津」

技術の高さを示すためにあえてシンメトリーにこだわった「献上唐津」

http://www.senyudo.com/item/300_kenjou.html

↑上記は写真撮影忘れてたので、他のサイトのものを引用してます。

古田織部の影響を受けた「織部唐津茶碗」

精巧な置物としての唐津焼「鉄釉母子猿置物」

世界の潮流やトレンドなどを取り入れた美しいブルーの釉薬の唐津焼

同じ唐津焼とはいえ、時代、作者ごとに作風もコンセプトも異なるということを、複数の窯元をめぐることで理解することができました。

とても貴重な体験です。

Day1 Night:鳴滝酒造 古舘社長をお招きして日本酒会

一旦、ホテルについて18時から鳴滝酒造の古舘社長をお招きしての日本酒会。

今回の日本酒会は「酒器で変わる日本酒の味わい」がサブテーマ。

アーモンドミルク入りの甘酒

まずはこちらで疲れた体に栄養をと言わんばかりに甘酒とアーモンドミルクが入った飲み物。ミルキーで飲みやすくとても美味しい!!

古舘社長お手製の紙芝居式日本酒解説

それから鳴滝酒造さんのご紹介に始まり、日本酒がどのようにできるのかを古舘社長お手製の紙芝居?でご説明いただきました!
お酒造りのお忙しいときに、こんなにご丁寧に準備いただいたことにとても感動しました。

やはり元中学校の先生だけあって、とてもわかりやすく噛み砕いて説明をしてくださいましたね。

日本酒はどうやってできている?

ちなみに皆さんはお酒がどのようにできるのかご存知でしょうか?

簡単に説明すると、日本酒はお米と水と米麹、そして酵母菌の発酵作用によってできます。

まずお米に含まれるデンプンを麹菌が食べて分解することで「糖」ができます。
その糖分を酵母菌が食べていく過程でアルコールと炭酸ガスが生成されていきます。
この専門用語で「並行複発酵」と呼ばれる糖化発酵とアルコール発酵を同時に行う複雑でデリケートな発酵製法は世界で日本酒しかありません。

そして、最後は発酵した醪(もろみ)を搾ることで日本酒が出来上がります。

お米の種類や麹菌、酵母菌の種類、そしてお米の削り具合や吸水率、搾り方、その後の熱処理(火入れ)作業、熟成具合など様々な工程が日本酒の味わい、香りに影響を与えるため、日本酒造りはまさに職人技であり、つくり手さんのデザイン性、嗜好性が非常に出る飲み物だと考えています。

ただ文章で説明してもよくわからないですよね。
現場で見ると、ただ文章で読むだけの10倍理解できるようになりますので、是非僕らの酒蔵留学をご体験くださいw

酒器で変わる日本酒を飲み比べながら体感

様々な日本酒を飲み比べさせていただき、大満足。
そして、酒器で変わる日本酒の味わいと香り方を堪能することもこの回のテーマであったため、ちょこバルで取り扱いがある唐津焼を色々と試させていただきました。(贅沢)

陶器なのか磁器なのかあるいはグラスなのか、そして器の開き方などによって味わいと香りが異なるなんて、とても魅力的だと感じます!

古舘社長の奥様が作ってくださった粕汁!

そして、締めはなんと古舘社長奥様の手作り粕汁!!
これが、濃厚でめっちゃくちゃ美味しいんです。。

これから粕汁飲みます!!

最高の締めを召し上がった後、次の日は朝早くから酒蔵留学(お酒造り体験)のため、21時には終了。
皆さん、ご満悦の様子でホテルに帰宅されました。

Day2:酒蔵留学(お酒造り体験)

さあ、そして翌朝には待ちに待った酒蔵留学。
こちらはいつも弊社が「リアル酒蔵留学」というサービス名で提供している本気のお酒造りを1人の蔵人として体験するものです。

今まで鳴滝酒造さんでは、お酒造り期間中に外部の方を入れられたことはなかったそうですが、今回は特別に許可をいただきました。(有難いです)

古舘社長からお酒造りの工程について説明を受ける

朝8:30に集合して、お酒ができるまでと今回の工程について、古舘社長から再びご説明していただいた後に、早速作業開始。

徹底した消毒の後に入蔵

説明を受けた後に、消毒などを徹底して行い、いざ入蔵。
機械の説明や注意事項について説明いただきます。

蒸米の放冷

そして、まず最初に蒸米の放冷作業から開始。
あっつあつのお米を外気に触れさせて冷まします。

超貴重な麹造り体験まで!

なんと、貴重な麹造り体験までさせてもらいました。
麹室は神聖な場所とされているため、本当になかなか入れないんですよ汗

蔵の中は基本的に寒いのですが、この麹室だけはとても暖かい!というか暑いんです!
35度以上の室内でみんなで麹米を広げたり、麹の種ふりを体験させてもらえたりと、普通では体験できない工程をさせていただきました。

発酵中のタンク!発酵の聲が!

そして、現在絶賛発酵中のお酒のタンクも覗かせてもらいました。
発酵中のお酒って聲がするんです。
「ざわざわざわ、わさわさわさ」みたいな感じで、音がするので、それを聞くと「わー、生きてるんだ」と実感できます。

みんなで蔵掃除

最後はみんなで蔵掃除。
お酒造りは8割掃除と言われるほど、清掃の時間も長いです。

一般のお客様なのですが、掃除の大切さを伝えるためにも最後のお掃除までしっかりと行っていただきました。

蔵の中で新酒などを試飲体験♪

そして、最後は試飲体験。
蔵に行かないとなかなか飲めないお酒達ばかり!

最初の搾りの部分のみを詰めたお酒や、蔵開きの時しか出していない搾りたての新酒、濁り酒から粕取り焼酎まで!
バラエティ豊かすぎて最高です♪


参加者の皆さんも予想以上に濃ゆい体験をさせてもらったので、とても満足のご様子。
そして、改めて日本酒をつくっている蔵人さん達に感謝。

皆さん口にされるのが、こんなに複雑な工程で大変な作業をしているのに、「日本酒って安すぎない?」ということ。

そう、安すぎるんです。
それを皆さんに体感してもらうためにやっているようなものなので、気づいていただけて嬉しいです。


Day2:唐津焼陶芸体験

ランチの後に、最後は唐津焼の陶芸体験。
今回は酒器とつまみ皿をつくっていただきました。

中野政典さんによる唐津焼の酒器の作り方の解説

中野陶痴窯の中野さんに解説をしていただきながら、皆さん思い思いの作品を作ります。

自ら酒器とつまみ皿を作る

皆さん、昨晩にどんな酒器で飲むのが美味しいのかを理解されているため、サクサクと自分が望む酒器を作られていました。

自らつくった器とお酒は後日自宅へ

最終的に出来上がった酒器とつまみ皿、そしてお酒造りに携わったお酒は後日皆様のお宅に届けられます。

自らつくったお酒と器が届くなんて、嗜好の極みですよね♪

最後はお抹茶で一服

疲れた後のお抹茶は最高に美味しい!!

みなさま、二日間に渡って本当にお疲れ様でした!

感想 | よかった点

体験全体の感想として、まずめちゃくちゃ内容盛りだくさんでガイド役の僕もとても楽しむことができましたw

下記に気づいたことを記します。

プロセスエコノミー的価値

出来上がったお酒をただ飲んでもらう、器を使ってもらうのではなく、製造プロセスから体験してもらうことで、その魅力を十二分に感じてもらえたのではないかと思います。
いわゆる「プロセスエコノミー」というやつですね。

モノが溢れるこの世の中において、単なる便益の提供だけでは差別化は難しいです。

ものづくりのストーリーの一部に加担してもらうことで、そのモノに関して自分事化して捉えてもらう。
それによって他のモノとの差別化を図ることができます。

職人の人柄も売り物になる

そして、何より体験の過程で職人さん達に触れることができるので、その人の人柄に惚れる体験ができます。

おそらく今回体験してくれた方は、次に唐津焼を見た時、鳴滝酒造さんのお酒を見た時に、今回の体験を思い出し、リピーター、そしてより良い口コミをしてくれるのではないかと思います。

広く浅くよりも狭く深く。熱烈なファンを一人でも

WITH/AFTERコロナ時代の観光として、少人数にせざるを得ない側面はあるかと思いますが、広く浅くよりも、狭く深く体験を作ることによって、熱烈なファンを作ることはできるかと思います。

そういった熱烈なファンがSNSなどで積極的に発信してくれる人になると思いますし、そうなれば少人数の体験でも二次的な経済効果は高くなると思います。


感想 | 課題点

課題としては、

  1. やはり少人数制であるため、一回あたりの売上には上限があること。

  2. コンテンツが充実しているだけに手間と人的工数がかかること。

  3. 蔵元さんや窯元さんが毎回説明しなければいけないのであれば、頻度を上げることができないこと。

が挙げられるかと思います。

また個人的には唐津焼の魅力をより伝えるために、別の焼物と比較する体験も入れた方が良かったのではないかと感じました。

ゴール設定として、「焼物のバイヤーになる」といった形にして、普段焼き物を見るときにどのポイントを見るべきなのか、値付けの仕方などを教わることができると、また焼き物を見るときの視点が変わってくるのではないかと思います。

そして、今回は酒と器に焦点を当てたので、食にはあまりこだわってこなかったのですが、地元の食を掛け合わせればより満足度は高かったのではないかと感じます。

ですので、次は、「食と器と酒」ですね。

各地域にその三点セットがあるので、意外と横展開もしやすいのではないかとも思います。

いやー、それにしても楽しい体験でした。

学びがある観光をこれからも企画していきたいと思います。

関わってくださった皆様に心から感謝です。





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