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日欧地域間イノベーション協力: 第4回EU地域と日本の府県との交流会開催報告

2023年10月30日、駐日欧州連合(EU)代表部において、今期における活動の総括となる「日欧地域間イノベーション協力- 第4回 欧州地域と日本の府県との交流会議」が開催されました。この交流会議は、翌10月31日に開催された欧州委員会地域・都市政策総局(DG-REGIO)と日本の国土交通省によるハイレベル政策対話とのバックトゥバックで開催されました。
日欧地域間交流会議は、日本からの参加者は会場から出席し、EUからの参加者はオンラインで参加するというハイブリッド形式で行われました。IURCアジア・オーストラレーシア・プログラムに参加し、イノベーションに関連するテーマで協力しているEUと日本の都市も招待され、同じようなテーマに取り組んでいる地域・府県・都市がお互いを知り、地域間・都市間の協力の相乗効果を探ることができました。

会議は2つのセッションで構成されました。セッション1では、日本の府県と都市が参加し、EUのパートナーとの協力について意見交換を行いました。日本の府県と都市が相互に情報交換を行う機会は、実はあまり多くなく、今回のセッションは、お互いの活動への理解を深める絶好の機会となりました。セッション2には、DG-REGIOのノルムンズ・ポペンス実施担当副総局長、国土交通省都市局の武藤祥郎都市政策課長、EUの6地域、日本の5府県、IURCアジア・オーストラレーシアプログラムに参加している日本とEUの3都市の代表者が参加しました。

開会挨拶でポペンス氏は、EUの結束政策が、デジタル移行とグリーンでカーボンニュートラルなイノベーションを優先課題として取り上げており、EUが日本とともにデジタル・グリーン経済への移行をリードできることを喜ばしく思っていると述べました。EUの試算によると、グリーン・トランジションだけで200万人の新規雇用が創出され、EUのスマート特化戦略は今後7年間で350億ユーロ以上支援されることになります。また、ポペンス氏は、EUは戦略的であると同時に実験的である必要がある、即ち日本や他の地域の経験から学ぶべきであると続けました。地域はさまざまな戦略の実験場となるべきであり、共通の課題に対処するためにEU地域に拡大された国際協力にECは感謝していると強調しました。

続いて武藤氏は、日本はこれまで、香川県高松市で開催されたG7都市大臣会合など、国際的な場で都市イノベーション政策の調整を図ってきており、草の根交流はこの動きを推進する最も重要な原動力であると述べました。また、気候変動や都市における自然災害、デジタル化への移行といった私たちの共通の課題に取り組む上で、EUと日本は都市間、地域間の対話から恩恵を受けているとの考えを示しました。武藤氏はさらに、国土交通省が都市分野におけるデジタルと環境の移行を推進していることに言及し、その例として、クオリティーの高い都市緑地への民間投資を誘致する方法に関する研究や、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化により日本全国の都市デジタルツインの実現をめざすプロジェクトである「PLATEAU」などを挙げました。

両氏の開会挨拶の後は、プロジェクトの概要を紹介したビデオと、参加地域・府県の専門家へのインタビューを収録したビデオが上映されました。続いて、地域、府県、都市の参加者が、スタディビジット、ウェビナー、地域・都市間コミュニケーションや交流を終えての、日欧地域間協力および日欧都市間協力への評価発表を行いました。発表者は、EUと日本のパートナーがどのように共通の課題を共有し、共通の関心テーマを特定し、互いの優れた事例を学び、そして解決に向けて協力しようとしているかを発表しました。また、「水素」、「スタートアップ」、「オープンイノベーション」、「フードテック」、「アドバンスト・エア・モビリティ」、「持続可能な観光」、「防災」、「ビッグデータ」、「バイオサイエンス」といった共通のイノベーション課題に関して、日欧の分散型協力がどのように進んでいるかについても報告されました。

参加者全員の意見として、スタディビジットは相互交流のための足掛かりを得るという点において非常に有益であったが、バイラテラル(特定の2地域・府県間)でのコミュニケーションと理解を促進し、より多くの専門家やステークホルダーの参加を促すためには、旅程をより効果的なものにできるのではないかという見解がありました。大学の役割や、学術界、行政部門、企業、市民社会を巻き込んだ四重螺旋的アプローチの重要性を強調する意見もありました。また、例えばオープン・イノベーション等をテーマにした、より詳細なウェビナーを、より多くのステークホルダーを参加させて開催してほしいという声もありました。他方で、人的交流の良い機会となる国際的なイベントの情報や、日本やEUへ視察団を派遣する予定がある自治体からの情報も共有されました。EUの一部の地域は、EXPO 2025 大阪・関西万博に参加して、自国の技術やイノベーション・プロジェクトを紹介することに関心を示しました。

閉会にあたり、DG-REGIOのラモン・ロペス=サンチェス氏は、日欧地域間イノベーション協力事業において、特定の2地域間に固定せずに協力を開始するオープン・ペアリング・アプローチがうまく機能したのは良いことだとコメントしました。都市のプログラムと地域のプログラムの間には補完性があるべきであり、また、国、地域、都市レベルの垂直的なパートナーシップを加えたすべての異なる統治レベルによる協力が行われることを望むとコメントしました。サンチェス氏は、IURCの次のフェーズは、もっとしぼられたテーマにフォーカスし、より有意義で、より生産的なものになるだろうと述べ、そこから生まれたプロジェクトをフォローアップする資金調達メカニズム、例えばホライズン基金、結束基金などを特定すべきだと述べました。また、IURCでの学びからパイロットプロジェクトが生まれることへの希望も付け加えました。

最後に、駐日欧州代表部のセザール・モレノ氏は、参加者からの好意的な感想に謝意を示すとともに、ベストプラクティスを共有することで、EUと日本が共通の課題に共に取り組むことができるよう願っていると述べました。また、同氏は、協力のテーマが特定されたこと、フォローアップのための訪問が予定されていること、MOUの取り交わしについて議論されていること、大学や企業も活動に参加するようになったことは印象深かったと述べ、これは非常に良いモデルであり、他の地域や県にも同じ機会を提供する必要があると付け加えました。

こちらの記事は2023年11月20日にIURCのウェブサイトに掲載されたNewsの和訳です。原文はこちらからご参照ください。