男の夢には色がない。 --- 映画 「私をくいとめて」レビュー
2021年1月から下書きで止まっていた記事です。「さかなのこ」、「天間荘の三姉妹」という2作品のレビューを書く前にこれだけは書き上げておこうと思って、キーボードを叩いています。
私はもうずいぶん長いことのんさんのファンでして、twitterでもことあるごとにのんさんをブッシュしてきました。大九監督の作品も何作か拝見して女性の視点は面白いなあと感心したりもしていたし、橋本愛さんとの久しぶりの競演だしで面白くなかったはずはないと自分に言い聞かせてもみたのですが、やっぱり私には残念ながらあまり引っかからない映画だったと書かざるを得ません。
というわけで、例によって公式サイトのあらすじから。
いや、のんさんは良かったと思います。今のんさんはすごく良い時期で、とても魅力的なのですが、その魅力が主演という形で映像に残ったということにまずは感謝したいと思います。しかし私にとってこの作品はのんさんのくるくると変わる喜怒哀楽の表情を眺めている映画だったかなとも思います。
うーん…やっぱりこの作品は女性のための映画なのかなー。上手く書けませんが、アラサーのおひとり様はこんなことを考えているのかと、ちょっと距離を置いて見てしまいました。
特に僕がハマれなかった大きな理由はやっぱり多田君をはじめとする男性の描き方にあって、男の私から見て出てくる男性、誰一人共感できなくてダメでした。前野さんも絵的には面白かったけど、芝居で良かったのは岡野さんくらいなんじゃないかなあ。
それと、あまちゃんでのんさんのファンになった私ですから、橋本愛さんの共演にもときめくものがあったのですが、実際に見てみるとアキとユイであった過去がむしろ邪魔に感じてしまいました。みつ子と皐月でありながら、アキとユイであって、さらには能年玲奈と橋本愛だということが、映画の中でどうしても折り重なってしまうのですが、それがストーリーの厚みを増すことに貢献しているようには私には思えませんでした。
大九監督はあまちゃんにあまり深い思い入れが無いようなので、特にそこに力点を置いたキャスティングではなかったのでしょう。むしろあまちゃんに思いが深すぎるこちらの問題なので、同じようにあまちゃんを見ていない人のほうが違和感なく観ることができるのかもしれません。
それにしても女性と男性の違いなのか、男女関係なく単純に感受性の違いなのか、なんだかわからない。でもいくつか大きな賞も取っているし、ちゃんと評価されているところを見ると、私には受け取れなかった何かがこの作品にはあるんだと思います。それを汲み取ることができない自分に少々歯がゆい思いをしています。
大九監督は綿矢りささんの原作を読んで「カラフルだと思った」と仰ってました。私も原作は読みましたが、「カラフル」という感想はまったく無かったので面白いこと言うなーと思っていたんです。
そして、実際大九監督の映画はカラフルでした。特に飛行機の中、君は天然色が流れるシーンは良い意味でびっくりしました。色鮮やかな明るい画面にフルボリュームの君は天然色のイントロがかかった瞬間、頭の中の霧が一気に晴れるような爽快感がありました。
そしてあのシーンを見ながら、私は男の夢には色が無いっていうのは本当なのかもしれないな、と思いました。
それくらい男と女では物の感じ方が違うのであれば、私がこの作品にハマらなかったのも仕方がないのかもしれません。
そうだ、あのシーン。
車の中で多田君の様子が急に変わるところ。
女性はあれをどう思って観ているんでしょうか。男の私は綿密に立てたデートプランが崩れた男って確かにあんな感じだなあと思って笑ってしまいました。
そう考えると、私が1年半以上この記事を寝かせてしまった理由も、ついついネガティブな感想を書いてしまう理由もわかるような気がしてきました。長く待たされたのんさんの主演作を前に、私の中には勝手な「感動プラン」が出来上がってしまっていたのかもしれません。そのプランに上手くハマらなかった故に途方にくれている、今の私はあの「車の中の多田君」なのだと思います。
どうか、これからこの作品をご覧になる方は、私のネガティブな感想など気にせずにご覧いただきたいと思います。のんさんを眺めているだけでも楽しい作品ですし、ほかにも良いところがたくさんある映画です。
ということで、今日は2022年9月1日。
のんさん主演作ラッシュの第1弾「さかなのこ」の公開日です。個人的にはついに「のんさんを正しく使った映画」が来た!という想いです。今日は予定は合わないため鑑賞は明日になりますが、楽しみに待ちたいと思います。
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