おバカな君にいてほしい --- 映画「マイ・ドッグ・ステューピッド」ショートレビュー
久々に目をつぶってキノシネマ。今日タイミングがこの作品。軽めのヒューマンコメディですが、とても良かったです。
主人公のアンリは中年と言うより初老に片足っこんだくらいの小説家。デビュー作で大当たりして以来泣かず飛ばすではあるものの、綺麗な奥さんと息子3人娘1人。金銭的にも何不自由無い暮らしをしています。もう子供たちも十分に大きくなってはいるものの、豊かな暮らしの中で甘やかされて来たのか口ばっかり達者になって親のすねかじりから抜け出せない。なんだかんだで家庭内の雑事や心配事に追われて本来の仕事に集中できない。こんな環境で良い作品など書けるわけがない!と、本人は思ってます。
そんなアンリの家にダルンダルンのぶっさいくな犬が迷い込んで来ます。この犬がなかなかふてぶてしいやつで、アンリの家に堂々と上がり込んでそのまま居座るだけじゃなく、男を見ると発情するという特殊な性癖まで持っているため「ステューピッド」つまり「バカ」という名前が付けられます。
このステューピッドがいいんですよ。もうがきデカの栃の嵐を彷彿とさせるものすごい存在感。この犬が寿司を握ったり後々資産家になったとしてもまったく驚きません。
ですが、この映画はいわゆる動物物、ペットものではありません。あくまでアンリとその家族を描くドラマです。
出来が悪くいくつになっても半人前だと思っている子供たちも半人前なりに生き方を見つけてアンリのもとから去っていきます。さらには手のかかる子供がいなくなったせいか奥さんまでが新しい夢を求めてアンリから離れていきます。そしていつの間にか家にはアンリと犬一匹。求めていた孤独を手に入れ作家のスイッチが入ったアンリが書くものは何なのか…。
アンリの才能が再び回りだしてからの疾走感はなかなかのもので、特に音楽の使い方が素晴らしく、とても爽快な気分になります。大作ではありませんし大傑作と呼べるような作品でもないのかもしれませんが、休日の午後にふらりと映画館を訪れてこんな作品に出会えると嬉しくなってしまいますね。
あと、シャルロット・ゲンズブール、すごい素敵な女性になりましたね。この映画の彼女、今までで一番好きかも。
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