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アルバ・ロルヴァケルが素晴らしい。 --- 映画「靴ひものロンド」レビュー

今日は休みだったのでプールで泳いだ後に、kino cinéma横浜みなとみらいへ。水曜日は水曜サービスデイなので入場料金が一律1200円なのです。
とりあえず前情報を何も仕入れず、時間が合った作品を見るというのが最近の私のkino cinémaとの付き合い方です。

で、本日は「靴ひものロンド」というイタリア映画を鑑賞することに。

公式サイトより、あらすじを引用します。

1980年初頭のナポリ。
ラジオ朗読のホストを務めるアルドと妻ヴァンダ、アンナとサンドロの二人の子供たちの平穏な暮らしは、夫の浮気で終わりを告げた。
家族の元を去り浮気相手と暮らすアルドは、定期的に子供たちに会いに来るがヴァンダはすべてが気にいらない。次第にヴァンダの精神状態は不安定になり、その行動もエスカレートしていく。
衝突ばかりの両親の狭間でアンナとサンドロは母に寄り添うのだった。
混沌とした数年を経て、家族は些細なきっかけでふたたび共に暮らし始めるが……。
月日は流れ、冷え切った関係のまま老齢を迎えた夫婦は夏のバカンスへ。
1週間後に自宅へ戻ると家はひどく荒らされ、飼い猫は失踪していた――。

映画『靴ひものロンド』公式サイトより

するしないはともかくとして、浮気心を抱いたことのない男性は、見てもあまり面白くないかもしれません。

また、女性であればまったく受け付けないという方がいてもおかしくない内容の作品だと思います。

とりあえずそれくらい旦那がクズ野郎です。

それでも私はとても面白く拝見しました。

スーパーヒーローが活躍するわけでもない、派手なアクションがあるわけでもない、登場人物に同情して泣くような話でもない、ただのアホで煮えきらない亭主が原因の夫婦喧嘩とその間で板挟みになる子供たちの話です。

しかし、サレ妻のヴァンダを演じるアルバ・ロルヴァケルという女優さんの演技が素晴らし過ぎました。

もう初っ端から夫の浮気に感づいていて、そこからは夫の裏切りにずーっと怒り続けてます。とはいっても夫への想いを断ち切ることもできなくて完全に情緒不安定になってる、その浮いたり沈んだりの激しい心情を映し出す彼女の表情の一つ一つが本当に魅力的なんです。

私はもともと筋書きがどんなでも役者が魅力的ならOKなんですが、この女優さんは物語以前に、存在自体に強烈に惹きつけるものがあります。素晴らしい絵を見て心動かされるような感じと言ったら良いでしょうか。

心惹かれる肖像画って、決して穏やかに微笑んでいる作品だけじゃないですよね。なんとなく物憂げであったり、悲しそうな顔をしていたり、どうしてそんな表情なのかはわかからないけど、なんか強烈に引き込まれてしまう…

アルバ・ロルヴァケルさんの演技はそんな感じです。容姿もまるでボッティチェリの絵画から抜け出してきたみたいだし、もう彼女を見ているだけでもう全然飽きない。この映画をこんな見方してるのは私くらいかもしれませんが…。

これなんかめっちゃ似てる。

この映画、物語の後半は意外な展開を見せて、ちょっと爽快感もあります。浮気心を少しでも抱いたことがある方はあいたたたとなる場面もありますが、そういう方のほうが楽しめる映画だと思います。私は楽しめました、むしろもう1回見たいくらい(笑)。

以下は余談ですが、映画の冒頭にジェンカを踊るシーンがあります。曲は "Letkis"。エンドロールでこの曲のタイトルを見て違和感を覚えたので調べてみたところ、これフィンランド語で「列になって踊ろう」という意味なんだそうです。

私はずっと "Let's Kiss" だと思ってました。いえ、坂本九さんが歌う日本語詞は「レッツ、キス、頬寄せて…」ですから "Let's Kiss" で間違いないはずなんですが…ということは、 "Letkis" に "Let's Kiss" の意味を与えたのは永六輔氏の創作なんでしょうか。全然知りませんでした。

ジェンカを踊る二人
よくよく考えたら、ジェンカ踊りながらキスはできません。

この作品、いずれ配信もされると思いますが、お茶の間でご覧になる際にはお子様を寝かしつけてからご覧になることをお勧めします。


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