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【感想】あなたが世界を楽しんでいる、そのあいだは - 藤子・F・不二雄ミュージアム

 シソジュースを作った。
 夏本番のような暑さを体感したとき、祖母がつくってくれた味を思い出したのだ。

 レシピを聞いて、ふとした夜につくってみた。なにより赤しその茎を取り除くのが大変で、二度とやるかと思った。煮出しはじめるとしその香りが部屋中に広がる。でもこんな色だっけ、と思っていた。

 最後にお酢を加えたとき、目をみはる。しずんだ紫色のような茶色のような色が、一気に鮮やかな赤紫に変わった。声が出た。

 私の知っているあの色が、こんなふうにつくられていることを知らなかったのだ。

   ・ ・ ・

 そんなシソジュースに感動する前、藤子・F・不二雄ミュージアムに初めて訪れた。正直、私は詳しくない。友だちに誘われるがまま行った場所は、子どもにかえって楽しめるような施設だった。

 上から順に回って、入ったばっかりで展示室を見なかったからかとっても見やすかった。ミュージアムのグルメも、はらっぱでの写真も、展示も思う存分楽しんだ。

 特に「好きだなぁ」と思ったのは、Fシアターだった。最初の動画は、藤子・F・不二雄の生誕90周年を記念してつくられたものらしいが、「あぁ、そうなんだな」と知らない私でも納得できた。

 僕は全てのことにおいて、「好き」を優先させてきました。

 白紙の上に描かれた個性豊かなキャラクターたちが、今もまるで生きてるかのように私たちの中に強く存在している。カラオケで「夢を叶えてドラえもん」(私の世代はこの曲だ)を入れるとみんなで歌える。ドラえもんのモノマネだって定番だろう。

 タケコプターがあったら、タイムマシンがあったら、どこでもドアがあったら。新しいひみつ道具を作っていいとしたら?…そんな尽きない空想のことが、確かに誰かの頭に広がっていたと思うと、描く力の強さを思い起こさせる。

 君が世界を楽しんでいる限り、世界はもっとワクワクさせてくれる。君の空想が、誰かの夢と希望を拾い上げる。ーーそう強く思わせてくれた。

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 シソジュースの色が変わったとき、藤子・F・不二雄ミュージアムを訪れた記憶がつながった。世の中のふしぎって面白いし、愛おしいって感じたからかもしれない。

 シソジュースの色が変わったのって、理科で習った酸性とかアルカリ性とかのあれだよな。私の知らないことで世界は満ちていて、これからもその断片を知っていける。世界のふしぎはまるでドラえもんが出すひみつ道具みたいだ。でも確かにそこに原理がある面白さ。

 しそにはシソニンというアントシアニン色素(pHによって色が変化する)があり、酸性である酢に反応して色を変えたようである。
 生活、うまくいかないなーと思ったところで訪れたその楽しさがありがたかった。私はまだ、この世界を楽しんでいける。そしてその道中は、あのFシアターで知った言葉のように、「好き」を愛していきたいな。

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